灰猫のマイ耳のお話は「花なんか別に好きじゃなかった」で始まり、「あんまり綺麗で、目頭が熱くなった」で終わります。
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花なんか別に好きじゃなかった。短い間人の目を楽しませてはくれるけれど、その命はいつだって儚くて……あっという間に散ってしまうところなんて、いたたまれなくなってちょっとだけ嫌な気分になる。
この子らだって別に、好きで摘まれた訳じゃなくって。人の勝手で育てられて、人の勝手で枯らされてしまう。あんまりじゃないかと思う事があったから。
だからさ、苦手なの。告白に花束とか、プレゼントに生花とか。なんかそういうのむず痒いし、似合わないし……とにかく無理なんだってば!
ウチはそんなモノよりももっと、例えばガラス細工みたいに長く使える物がいいなんて。勝手に動いていた口が、そんな生意気な形に固まってしまっていた。
「じゃあさ、こんなのはどう?」
笑いながら、彼は言った。
ウチの片想いの相手で、恩師で……この間35歳になったとか言っていたその人の手に握られているのは、色とりどりの花の集合体。その中からたった一本を選んでウチに手渡すその人は、様になりすぎるウインクをひとつだけ飛ばしてもう一度だけ笑うんだ。
「この花が枯れてしまうまでの短い間だけでいいなら、付き合ってもいいゼ……って言ったら、どうする?」
みずみずしい花弁が揺れる。切り花の寿命ってどのくらいなんだろうとか、しょうも無い事を考え始めてしまったウチの答えは、決まり切っているんだから笑えない。
「……ホン、トに?」
「ホントに」
「なんで、そんな、」
「ここで会ったのも、なんかの縁だから……とか?」
ヘラリとまた微笑んだその人の気持ちなんて、分かりっこない。
だってきっとウチの幼稚な片想いなんて、5年も前から知ってる筈で。のらりくらりかわし続けておいてこんな仕打ちをするなんて、いくらなんでも酷くない? って思う。
でも。でも……さ。
万が一その間にウチを好きになってくれたなら……とか、思ってしまったりしちゃうじゃん。
必死になって、料理を作った。忙しくて家に居ないことが多いその人の合鍵を貸して貰って、一生懸命掃除をしてみた。こまめに連絡を取ってみて、食事だけのデートでもいいからって何度も顔を合わせたりした。
彼はその間、たった一度だけキスを贈ってくれただけ。大人の言う『付き合う』ってこんなあっさりしたモノなの? ってくらい、当たり障りのないものばかり。
焦れたウチはその日勝負下着をつけて、その人を誘ってやった。その気が起こるようなお香まで焚いて、こなくそって気持ちで胸の中に飛び込んだのに。
「……タイムリミット、な?」
しおしおになった、先生の部屋の花。一生懸命手をかけたって、1週間ちょっとしか持たなかった哀れな茶色が落ちていく。
まるであれが……ウチのちっぽけな恋心のようだと言われているみたいで、辛くって、悲しくって。ワンワン泣きながら、先生の顔を見上げていた。
「泣くなよ」
「無理、に、きま……って、」
「『この花が枯れるまで』って確かに言ったけど……何もそれが『耳郎に手渡した一本だけ』なんて言って無いけどな、俺は」
……意味、分かんない。
ポカンと見上げたその人の腕に、抱え込まれたボックスギフトを眺める。
「なに、これ」
「開けてみ?」
黒い蓋を、ゆっくりと開いた。見覚えのある花びらが、宝石みたいにキラキラと輝いている。
「永遠……は流石に無理なんだけど、結構長持ちするらしいよ。ソレ」
ブリザーブドフラワー、だったっけ? と笑って。
これ、注文してから7日少しで届くって聞いたからさ。なんて頬を掻いて。
俺が貰った花で心底申し訳ないけど……でもコレを見てたらお前の顔が浮かんじまったから、いい加減腹くくった。とか偉そうな事言いながら。
「花言葉、知ってるか?」
「……そんなの、分かるわけない、でしょ」
「だよな?」
抱きしめられた腕の温もりが、痛いほど胸に響いた。
なんて事無い顔してる癖に、心音はいつもよりビックリする程大きくって。
「貴女を、愛してます」
「……ッ、」
「ごめんな、耳郎……すっかり待たせちまって、悪かった」
もう一度だけ、って言い訳をしながら。美しいまま時間を止められた花々の意味を考える。
彼が指差したその花以外の『彼ら』にもきっと、ウチの知らぬ意味があるハズだと思う……いや、多分。分かんないんだけど。
「……他、のは?」
堪らず聞いてしまったその言葉に、意地悪なその人は白い歯を見せて口角を上げるだけで。
その仕草が、表情が、日本人離れした緑の瞳が、金色の髪が……あんまり綺麗で、目頭が熱くなった。
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→推敲無しのぶっつけ本番なので、なんか多分内容的にはごちゃついてます。
→見返してごぉああああすると思いますが、このまま残そうと思ってます。
→♡が二つ飛んだのを見ました。システムがあまり分かってませんが、私じゃないのは確かです。ありがとうございます。
→またなにか機会があれば、もう少し早い時間にやってみます。
→おやすみなさい。