「何、読んでいるんですか?」
 ぱらぱらとページをめくる横顔が好きで、ついちょっかいをかけてしまう。俺も本は好きだけど、かなり熱心な読書家である彼とは比較するほどではない。
 当然だが、彼は読書を邪魔されるのが嫌いだ。だから、あくまで話しかけるのはタイトルが書かれた境目のところでのみ。それでも、むすっとした表情は変わらないが、普段からそういう顔が多いから、気にしないことにした。かわいいとは、思うけれど。
「鷹見、お前は閉じ込められし小動物は生きていると思うか?」
 「……シュレーディンガーの猫、ですか。つまり、貴方が今読んでいるのは量子力学がらみの本ーーなんて、単純な話ではなさそうですね」
 俺の問いに彼は頷く。フィクションでもよく使われる例え話だ。そのなかには、間違って使われるものも多々あるだろう。
「俺とお前の関係も、スターレスの者達に観測されない以上、存在しないとも言える」
「なんか、それは嫌ですね。バレバレなのも困りものですが」
「喩え話だ」
 俺が嫌がる素振りを見せると、にやりと口元を緩める。あ、からかわれたのか。悔しい。
「でも、貴方と二人きり箱に閉じ込められるのも悪くないですね。二人きりで存在を確認しあって」
 ちょっと窮屈そうですけれど、と付け足すと、彼の顔が赤く染まる。よし、仕返しに成功した、気がする。
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向き
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腐ラスタ sntkらくがき配信
初公開日: 2020年04月24日
最終更新日: 2020年04月24日
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