文或坪内逍遥軍パロ夢
今日中に上げたい(既に数ヶ月は抱えてるネタ)(そろそろ脳内キャパが死ぬ)
割と途中だけど、この辺からあれば大丈夫だろうか(俺が)
ばっさりすっきり!動きが軽いね!!
「上官は、本当に大丈夫なんですか?」
「もちろん。林太郎先生も言っていた通り、ピンピンしているよ」
先程まで躊躇いなく人を殺していた人が、目の前で美味しそうに牛鍋を食べるのをぼんやりと見つめる。食欲がない、というのは本当でも嘘でもない。ただ、今は、これを食べる気にはならなかった。そうこうしているところへ、卵のおじやが運ばれてくる。
「これなら食べられるか?胡麻と薬味は、紫華の好みだ」
「ありがとうございます、成行おじさん」
無理するなよ、と彼は大きな掌でこちらの頭をくしゃくしゃと撫でてから、厨房に戻っていった。鞭を使うのだったか、いつも厨房にいたり、掃除をしていたりする彼だが、相当の腕利きだと聞いている。小さい頃からおやつをもらったり、お腹が空いた時にはご飯をご馳走になったりしている、食堂でも顔なじみの人である。紫華の弁当に色々と助言をくれるのも彼であり、正直紫華にとっては料理の師匠のような人だった。
「彼も来ていたとは驚いたね」
「知らなかったんですか?」
船は上官が呼びつけたものだとばかり思っていたから、ある程度の人員も把握していると思っていたのだが、そうではなかったのだろうか。
「呼んだ時点で、彼が来るとは聞いていなかったよ。今、あの場所を開けるわけにもいかないだろうから、あまり人を割けないだろうと思っていたからね。それでもまぁ、二人もいれば十分かな」
林太郎先生——もとい森医官、それから幸成おじさん。確か幸田上官、と呼ばれているのを聞いたことがある。手練れとして名を馳せる二人がいれば、坪内上官の補佐も完璧に行えるだろう。
「紫華ちゃんの護衛は私一人で十分だし、船のことは彼らにかかりきりになる。まぁ、あの二人なら上手くやるだろう」
「…?どういうことですか?」
紫華の護衛を坪内上官が、船の管轄を森医官と幸田上官——上官で良いのだろうか——彼ら二人が行う、というのは何とも奇妙な話である。本来なら艦長やら何やらの役職がついた人がいて、彼らによって統率されるはずだ。
「本来ならば、きちんとした肩書と役職が必要なのだけれど、今回はちょっと特殊だからね」
「私のことと、関係がありますか?」
「…そうだね。きちんと話しておく必要がある」
いつの間にか、牛鍋は平らげられてしまっている。紫華がおじやを食べ終わるのを見計らってか、成行おじさんがおやつに紅葉饅頭を二つ、渡してくれる。重たい土鍋を二つ、軽々と持ち上げた彼の腕を羨ましげに診る紫華を、坪内上官が突いた。
「それじゃあ、行こうか」
連れて行かれた先は、小さな二人部屋だった。褥が二組、奥に畳んで置いてある。四畳半の部屋に窓はなく、小さな文机には申し訳程度に一輪挿しが据えられ、紙の束と書き物ができる硯一式が置かれていた。
「事前に調べてもらったから、恐らく安全だから安心して良いからね。あぁでも、少しだけ待ってくれるかな」
言うなり彼は、畳の縁に刀を突き刺す。ガキン、と何かが割れる音がした。溜息を吐く彼の手元をそっと覗き込む。畳を全部跳ね上げて、その裏まで調べ尽くしてから、上官は紫華を手招いた。
「端的に言えば、紫華ちゃんは命を狙われている。理由は分からないけれど、彼らの目的は、君を殺すこと」
懐から矢立を取り出して、彼は懐紙に何やらさらさらと書きつける。それを読んで、頷いた。
「そういう訳だから、今日から暫く、私が護衛に付くことになったんだ。お父上も了承なさっているし、残念ながら、拒否権はない」
「…分かりました。宜しくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくね」
いつまで面倒を見てもらうことになるのだろうか。そんなことをぼんやりと思う紫華に、彼は羊を描いた紙をくれた。お守りだ、と言うので、ありがたく頂戴することにした。
船の中では、常に彼と行動を共にした。着替えはもちろん、入浴さえ一緒である。小さい頃から共に過ごしていたし、父親が忙しい頃で、母親が伏せっていたときはいつも、彼に面倒を見てもらっていた。風邪をひいたり、父親が出張に出たり、何かあればいつも彼は春野家に足を運び、泊まり込んで面倒を見てくれていた。祖母と父の間の年齢のこの人は、まるで親戚のお兄さんのような感覚がある。恥ずかしがっている場合ではないが、どうしてか、傍にいると忙しなく感じてしまった。
嫌な訳ではない。むしろ嬉しいというか、安心する。それなのに、何だかもどかしいような気がする。それでいて、少し哀しくて、淋しかった。
改頁
それから暫くの間、彼は本当に、紫華に四六時中付き添っていた。付き添うと言うよりも、付き従うと言うべきかもしれない——恐らくそれが正しいのだろうけれど、従う、というのがどうも紫華は苦手なのだ。朝起きれば、彼が隣の褥から声をかけてくる。着替える間は背を向けてくれているものの、同じ部屋にずっといる。朝食を取りに食堂に向かうと、成行おじさんが奥から手料理を出してくれる。本来なら届けてくれる手筈らしいのだが、忙しい彼にそんな手間はかけられない。もちろんそれは半分こじ付けのようなもので、寝惚けた頭を動かすには、体を動かすのが一番良いからである。部屋で二人、朝食を摂り、食器を返しに食堂へ戻る。あとは自由で、簡単な書庫で本を読んだり、医務室でのんびりと過ごしたり、部屋で寛いだり、食堂でお喋りに興じたり。甲板へ出て鍛錬をするのはやめてくれ、と言われてしまった。理由を聞けば、貴重な船を壊されては敵わないから、とのこと。仕方なく、部屋で膝を突き合わせて向かい合い、肩から先と首だけを動かして上官に遊んでもらう——紫華にとっては鍛錬だが、上官にとっては子供騙しのお遊びのようなものだろう。そうして日が暮れる頃、食堂で再び成行おじさんお手製の夕食を受け取り、部屋で食べ、食器を返し、医務室に備え付けられている風呂を借りて湯浴みを済ませる。もちろん、上官も一緒だ。湯帷子を身につけることを許可してもらったけれど、入浴の前後には必ず全身の身体検査が行われる。傷の治り具合や精神状態まで、事細かに調べ上げられる。林太郎先生と坪内上官、夜食と水分を持ってきた成行おじさんが満足するまでしっかりと調べ上げられているうちに、眠たくなってくる。欠伸を噛み殺しながら部屋に戻り、褥に横になる。目を閉じて眠りに落ちるまで、隣の褥から、上官がこちらを見守ってくれている。優しくて、温かくて、安心するのに落ち着かない。背を向けて寝ようとしたこともあったが、無理矢理引き戻されてしまった。そうこうしているうちに、大きな——巨大なんて言葉では足りないくらいだ——大きな船は陸に着く。二人して船を降りれば、邦景が飛びついてきた。
「しぃちゃん、おかえりなさい!!」
「あぁ、ただいま。良い子にしていたか?邦景」
「うん!俺、ちゃんと良い子だったよ!!」
試験で良い点をとった、先生に褒められた、お友達にお菓子をいただいた、お使い先でおまけしてもらった、美味しい料理を作ってお裾分けをした。あれやこれやと日々のことを濁流の如く話してくる邦景を宥めながら、後ろで上官と話している父親に向かった。
「春野紫華、ただいま帰還いたしました」
「あぁ。お勤め、ご苦労様でした」
いつもとは逆の立場がやけに擽ったくて、ちょっと泣きそうになる。とうとう、終わったのだ。一人前とは言えないけれど、漸く多少は、近付けただろうか。
「紫華姉さん、お帰りなさい」
「ただいま、幸晶。家のこと、その他諸々、変わりはないか?」
「もちろん。ところでこれ、役に立った?」
胸を差され、取り出してみせる。破れたところを見て、幸晶は肩を竦めた。
「生きてて良かった。何かあったら、どうしようかと思った」
何をらしくもないことを。そう言おうとして、その目がいつもと少し違うのに気付いて口を噤む。
「おかえり、紫華姉さん。生きて戻ってきてくれて、ありがとう」
「あぁ、無事帰った。だが、お礼を言うなら上官に」
もちろん、と幸晶は頷いて、父と話す上官に足を向ける。邦景が近付いてきて、あれやこれやと話し始める。そのうち軍の車が来て——珍しく馬車ではなく、自動車に乗ることになった——家に戻る。車内で事情を簡単に説明してあったらしく、上官は紫華の部屋に寝泊まりすることになった。
「坪内さん、俺もしぃちゃんと同じお部屋がいいんだ。一緒に三人にしようよ」
「こら邦景。我儘を言うのはダメだろう?」
「だって一緒がいいんだもん。ほら見てしぃちゃん、この前の本、面白いんだよ」
「…ふむ。おや、これは面白いね。どういう仕組みなんだい?」
「これ?これはね——」
上官が話を逸らした隙に、部屋を換気して軽く掃除する。元々物が少ないし、片付ける物もないのだけれど。一応襖を引けば二間に分けられるので、寝るときだけはそれで一応仕切らせてもらおう。同じ部屋にいるのは船の上だけにしてほしい。というのも、こう見えて紫華も名目上は名家の娘に相当する。春野家は元より文化人の家系として名を挙げており、父は従軍する前は帝国図書館で司書を務めていた。至極優秀な人材が集う図書館の館長を務めた祖父や、ほかにも官僚やら何やらと名だたる人材を輩出しているのだ。奇抜な紫華が世に認められるのは、帝国図書館の館長でありながら居合の達人だった祖父や司書から文官として従軍した父のおかげでもある。文化人とはいえ、文武両道で名高く、紫華が師範学校に通いながら軍部に足繁く通っていることも、周囲からは賞賛されるばかり。
そんな名家の娘が三十も歳が上の男と同じ部屋で寝起きしているとなれば、どんな醜聞が立つか、想像することすら恐ろしい。人間の感情というのは不思議なもので、称賛の裏には嫉妬が、尊敬の裏には憎悪があり、好意と嫌悪は表裏一体となっている。いつどこでそれが手のひらを返すか、知れた物ではない。いつの間にかひっくり返ってどん底にいた、などというのは洒落にならない。落ちるのが紫華だけならまだしも、父も邦景も幸晶も、そして坪内上官までもが墜とされるのだ。気を付けるに越したことはない。
「しぃちゃん、坪内さん、ゆぅくん、行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい。気をつけてね」
「邦景、気をつけて。何度も言うが、本当に気をつけて。それから——」
「はいはい、紫華姉さんストップ。姉さんが悪い訳じゃないし。邦景、遅刻するなよ」
「うん!じゃあ、行ってきます!!」
小学校の門を潜り、邦景の姿が見えなくなるのを見送る。続いて初等科——高等学校初等科の門の前で、幸晶を見送る。
「悪いな、不便をかける」
「だから姉さんのせいじゃないから。じゃあ坪内さん、紫華姉さんをお願いします」
「うん。確かに、お預かりします」
「よろしくお願いします。できれば、末なが…」
「幸晶」
「はいはい。じゃ、行ってきます」
同じように校門を潜った幸晶を、すぐさま友人たちが取り囲む。悪目立ちさせてしまったかと思ったが、振り返って大きく手を振ってくる弟とその友人たちに、小さく手を振り返す。その姿が見えなくなってから、校門を離れた。
「紫華ちゃん、本当にいいんだね?」
「はい。試験は受けさせてもらえましたし、卒業資格もいただけましたし。何より、免許の試験にはもう受かりましたから、このまま在学していることに、あまり利益がないというか」
師範学校の校門を潜ると、顔なじみたちがチラチラとこちらを見る。数人がやって来て、便箋と封筒を手にあれこれ問い質してくる。彼女たちは色々と世話になったと同時に懇意にもしているため、事前に手紙を送り、退学する旨を伝えておいたのだ。
「紫華、どうしてそうなのよ!そうやって急に言われたって、心の準備ができてないじゃない!!」
「いつも寝てるのに、ちゃっかり試験受かってるんだから。毎時間起きてて最下位の私は、今度から誰かに助けを求めればいいのよ」
「しかもちゃっかり良い男捕まえちゃってるじゃない。聞いたわよ?お姫様って呼ばれてダンスを踊ったんですって?詳しく教えてもらうわよ」
「いやちょっと待てそれは違う」
何だその尾鰭は。一切聞いていないが、恐らく無人島でのことだろうか。訂正しておく必要があるが、話を聞くような相手ではないことを紫華はよく知っている。
「ダンスをして、二人きりで甘い蜜月を過ごしたって聞いたわ!ねぇ、ちょっと詳しく聞かせて頂戴!!」
「私も聞きたいな。ご飯を作ってあげたんでしょ?何作ったの?やっぱり、媚薬とか入れるの?効果は?持続時間は?匂いとか手触りとか、味とかあった?それとも塗る方が好み?」
「ま、待て。あのな、そうじゃなくて——」
詰め寄られてしどろもどろになる紫華を、上官がくすくすと笑う。いまにも大声で笑い出しそうなその人に助けを求めるものの、笑っていてそれどころではないらしい。
「ちょ、いいから聞いてくれ。違うそうじゃない。この人は、父上の先輩で、護衛を務めて下さってる方だ。断じてそういう関係じゃない」
「つれないこと言うのね」
「春野紫華は、恥ずかしがり屋である。元来その性分が強いが、好きな男のことになると特にその傾向が強まるらしい」
「待てなんだその帳簿は。見たことないぞ見せろ」
「いやよ。春野紫華覚書——私たちの一生の宝物なんだから」
「私たち、って…何人いるんだ」
はーい!!と、さらに数人が手を上げる。隣の上官までもが手を上げて、その輪の中に加わっていく。騒ぎを聞きつけた先生が、寂しくなるな、と呟いた。
結局、同級生全員に簡単に事情を説明し、しっかり誤解を解くように説明をした上で——一切の信用を得られなかったことだけは確かである——卒業を保証する証書を受け取り、免許も受け取り、師範学校を後にする。手紙を寄越せ、菓子を食わせるから遊びに来い、たまには稽古をつけにこい、勉強も教えろ、などなど。口々に勝手なことを言ってくる女学生たちを宥めて学校を出る。二度と来ることがない訳ではないのに、彼女たちは泣いていて、紫華もうっかり泣きそうになった。
「随分と人気者だね」
「毛色が違うのがいるから、珍しがっているんでしょう。それから、恐らく集まった目的の大半は上官だと思います」
美丈夫と言って過言でないどころか、美丈夫という言葉が霞みそうなほど、彼の顔立ちは整っている。意識したことはなかったが、佇まいや口調、指先の小さな仕草や足の運び方、髪の揺れる一筋さえも、惹かれるものがある。それは軍にいる時とは異なり、古い言葉を使うなら「あてなり」とでも言えるのかも知れない。上級生たちや近所の人たちまでもが見物に来ていた目的は、この美丈夫である。誇らしいと思っていいのかは分からないが、何だか釈然としない。まるで、お気に入りのお人形を取られた子供のようだと思った。
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待って誰かいるんだ…?えっ…えっなんか、なんか申し訳ない…
196:21
虹薔薇
時々休憩すると切れるのはなんかタイムリミット設定してあるんだろうか(ちゃんと見てない)
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鬼上官(今日中に上げたい)(無理が過ぎる)
初公開日: 2020年04月23日
最終更新日: 2020年04月23日
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文或坪内逍遥軍パロ夢
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