少年は走馬灯を見た。
 それは楽しくもあり、美しくもあり、悲しくもあり、残酷でもあった。天沢善という少年の十八年の短い命。それ故に長く短い走馬灯だった。
 大人によって無理強いされた殺し合いの末に、善はたくさんのものを見た。
 善が一番最初に見たのは、彼の姉だった。彼は、自分の美しさに強い自信があった。外見の美しさだけではなく、内面も。しかし、彼は姉にだけは、内面の美しさで勝てると思っていなかった。きっかけは覚えていない。だから、それは彼の中の強い固定観念だったかもしれない。
 彼女は幼い頃かかった病によって顔が醜く爛れていた。元は彼に負けず劣らず美しい顔の持ち主だった。それでも、醜くなってしまったその顔を彼女は隠そうとしなかった。彼は一度その理由を聞いたことがあった。
「姉さん、その……顔が美しくなくなってしまったでしょう? それなのにどうして隠さないのですか?」
「……ふふふ、そうね、どうしてかしら……」
 彼の問いはまともに答えてはもらえなかった。
 ある日、姉は死んだ。
 持病が悪化したのだ。善は、髪を伸ばし始めた。亡くなるより、随分と前に姉が言った「善の髪は本当に綺麗ね」という言葉に縋っていた。
 次に善は幼なじみを見た。幼い頃から仲が良くて、親友とも言えた。彼は素敵な笑顔の持ち主だった。優しく、明るく、頼りになる。そんな人間だった。
今も近くにいるのはわかっているから、少し顔を動かせば見えたはずだったが、もう善にその気力は無かった。
 幼なじみと学校までの通学路を歩きながら他愛ない話をして、笑いあうとき、善は楽しくて仕方が無かった。小学校、中学校、高等学校といつも一緒だった。それでもずっと楽しかった。
 殺し合いが始まってからである。幼なじみから笑顔は消えてしまった。生徒会長としても頼られていて、笑顔が似合っていた幼なじみから、笑顔が消えてしまった。善は悲しくて堪らなかった。
 もう一度、笑いあえる日は来るのだろうか?
 もう一度、並んで歩ける日は来るのだろうか?
 きっと、無いだろう。そう気づいてしまったから。
 たとえどんなにこの先生き残った未来が残酷であったとしても、善は彼にだけは生き残って欲しい、そう願った。そして、もう一度彼に笑顔が戻る日が来ることを願った。
 次に善は
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初公開日: 2020年04月19日
最終更新日: 2020年04月19日
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気まぐれで始めたので気まぐれでやめます