《利吉さんの夢小説を書きます》
筋を考えるのも今からなのでとても遅い、というかおそらく完成はしません
女の愛は男の愛より忍耐が必要
自他共に認める売れっ子忍者の山田利吉。それが我が家に出入りする、というか、まあ、有り体に言えばわたしの恋人である男の名前だ。もはや「売れっ子忍者」まで含めて名前としてまかり通っているようなやつなのである。
(仕事、人望、というかモテる)
性格まで完璧かは置いておくとして、総合的に見ればやっぱりいい男だ。はじめて出会ったのはわたしがまだ忍術学園のくのたまだった時だけれど、その頃から利吉さんは期待の新人プロ忍者として頭角を現していた。
家の中で家事をしているだけだなんて、退屈で仕方ない。そんなわたしの心を理解してくれる友が北石照代ちゃんだった。「わたしだって女の子と遊びたいんだもの」と言っては町やらに連れ出してくれる彼女と出会ったのも、そういえばあの人の紹介だったのだっけ。いや、そんなことは今は考えないようにしなきゃ。息抜きをする日はかわいいものと美味しいもの以外全部忘れてしまうって決めているんだから。
しかしまあ、同年代で気の置けない仲の女ふたりだ。これ以上本音を話しやすいこともそうそうないのがまた事実であって。結局、市場をひと巡りした後の甘味処で北石照代お悩み相談室が開かれた。開かせてしまった、とも言えるけれど。
「いつもいつもごめんね……ここ奢るよ」
「いーのよ、私だって仕事の愚痴聞いてもらうしね。
「わたしも、仕事復帰しようかな」
「ええ?」
たっぷりの間の後、ふと口にしてみたその思いつきは案外しっくりきた。お茶を啜りながら怪訝な表情をする照代ちゃんに構わず、わたしは先程とは打って変わって晴れやかな笑みを浮かべた。
「辞めたっていっても、まだ体が鈍ったわけじゃないもの。今からでも仕事を取ってくる自信はあるわよ。そうすればわたしだってあの人の助けになれるかもしれないでしょ。なんという名案」
「いやいや、ちょっと待ちなさいよ。急に話が飛びすぎじゃない?」
「あのね。今からひとつ大事なことを言うから心して聞きなさい」
「……うん」
「私はずっとあなたのことを見てきたから、その気持ちもわかるわよ。だけど、あなたは家で待ってなきゃだめなの」