桜を見に行こう、と芥川が言い出したのは、司書に頼まれて二人で書庫の整理をしていた時だった。
何を言い出すのかと思えば、とあきれてそちらを見ると、既に飽きたと言わんばかりに袖から取り出した敷島を弄る姿がある。
「桜って、どこに」
「どこでもいいよ。直木さんと一緒なら」
そうは言っても、と思考を巡らせる。
この図書館から一番近い花見の名所は、この図書館の裏庭である。だが、芥川の言う「見に行こう」は、図書館の敷地内をぶらつこうという意味ではないだろう。
どこか遠く。できれば、図書館の面々がいないような場所だ。
「あー……司書の許可が出ればの話だが、上野とか?」
「いいね、上野。酔っ払いの巣窟だって話だけど、面白そう」
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初公開日: 2020年04月12日
最終更新日: 2020年04月12日
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