よーしいくぞー!
降新だけじゃなくて新蘭のターンもあります!!!!
「降谷さんごちそうさまです」
 ごきげんに頬を緩ませた新一くんが、ねらった上目使いで僕に笑いかける。かわいい恋人だ。おごってもらったお礼に僕が喜ぶことをしてくれている。直視すると変な気を起こしそうなので「気にしないで」と歩き始めた。
「駅はどっちだっけ」
「酔いざましに少し歩きませんか?」
「ここからだと家が逆方向だけれど、どちらへ行く気だい」
「降谷さんち。さっきうまい日本酒をもらったっていってたじゃないですか。あれ俺も気になるなー」
 僕が断らないことを知っている言い方。
「明日、大学休みなんですよね」
 加えてしおらしく言うものだから僕はこらえきれずに笑ってしまった。
「もう単位足りてて気ままに大学生活を送っている暇人がなにか言ってる」
「でも恋人が多忙だからなかなか二人の時間が取れなくて寂しいなー」
「かわいさに免じてなんでもつまみを作ってあげよう」
「俺、あんたのそういうところ好き」
 新一くんが僕の手を取って歩きだす。
 夏も過ぎて涼しくなってきた夜風が心地いい。
「この前、なんか変な夢を見たんですよ」
「君が夢の話なんて珍しい」
「なんだか気味が悪い夢で。そのうちに忘れるかなと思ったんですけどまだ記憶にこびりついているんですよ」
「話してごらん。僕も気になってきた」
 新一くんの指が僕の指と深くからまり、きゅっと握られる。
「夢の中で俺は、蝶を追いかけているんです。蝶はアゲハチョウくらいの大きさで、刻々と色を変えるんです。俺はどうしてもその蝶が桜色のときに捕まえたかったんですけど、やっとのことで捕まえると淡い黄色で、あんなに俺から逃げていたのにまとわりついてくるようになったんです」
「かわいい夢じゃないか」
「でも、蝶を眺めているうちに空が落ちてきていることに気がついて」
「空が落ちる?」
「地面が上がっていたのかもしれないです。よくわからないんですけど、夢の中の俺は空が落ちてきていると気がつくんです。そして誰かの声が聞こえる。どうすればいいのかわかっているんだろうって。そうしている間にも空は落ちてくるので、俺はついに蝶の羽をもぎ取って食べるんです。すると蝶の胴の部分がどんどん長くなって、つっかえ棒のように空を支える。それを見届けて口の中の羽を吐き出すんですけど、それはもうブルーグレイに鈍く光るたくさんの金平糖になっていて、俺は後悔するんです」
 新一は目を伏せる。
「なにを後悔するんだい?」
「夢の中での話ですよ。なんで蝶の胴まで食べてやらなかったんだろうって後悔して、白い百合の花のうつわみたいになっているところに金平糖を入れて蝶に戻そうとするんですけど、花の中から出て来るのは南瓜くらいの大きさの青い林檎でした。俺はその林檎を隠そうとして食べるんですけど、すると中から動物の骨が出てくるんです。そこで目が覚めたんですけど、なかなか気味が悪いでしょう」
「たしかに不思議な夢だね。ルイス・キャロルみたいだ」
● 
「夢ってどうしてあんなに脈絡なくへんてこなものなんでしょうね。夢を見るメカニズムは解明されて、そのうち誰もが見たい夢を見るようになったりするんですかね」
「どうだろう。僕みたいに夢をほとんど見ない人からすると、へんてこな夢を見られるのは楽しそうだ」
「ね、今夜は一緒に寝ましょう。俺と一緒なら変な夢が見られるかもよ」
「うちにはベッドひとつしかないよ」
「泊めてくれんの、ラッキー!」
 最初からそのつもりだろうに白々しい。
 新一くんはそれきり静かになって、僕にもたれかかるようにして体を寄せてきた。ああ、しあわせだな。
 失恋に落ち込む新一くんを見ていられなくていろいろと世話を焼いているうちに好意を寄せられて、どうやって断ろうかと頭を悩ませていたころからすると信じられないくらいにしあわせだ。断っていたらまた新一くんが落ち込むことはわかっていたことだろうに、あのときの自分がなぜ新一くんを遠ざけようなどと考えていたのか今更ながら理解に苦しむ。新一くんはこんなにかわいくて、仕事に理解もあって僕にぴったりの恋人なのに。
●もうすこしのろけタイムを
 人通りの少ない道をふたりで歩いていると、僕の家へ帰る路線の地下鉄の駅が見えた。
「ねー、もうひと駅だけ歩きましょうよ。俺まだ明るいところに行きたくない」
 新一くんが僕の腕にしがみつく。
「僕としては早く家に帰って君ともっといちゃつきたいな。タクシー呼ぶ?」
「じゃああっちの大きな道に出ようぜ」
「了解」
 その前にとでも言いたげに、新一は背伸びをして形のいい唇をつきだした。かわいいなあもう。タクシー乗るまで待ってといつもなら言うところだが、周囲には誰もいないから期待に応えてあげた。
 行く先に見えている大通りは夜でも明るく行き交う車も多いようだが、大通りを少しでも外れた住宅街はとても静かだ。街頭が点々と輪郭のあやふやな道を作っている。
 闇に呑まれたような町の中。
 僕はそこにあるはずのない小さな人影を見た。
「コナンくん!」
 間違いない。
 僕は居ても立ってもいられず、腕にまとわりついているものを振りほどいた。
「ちょっと!」
 案の定、彼女から不満げな声が上がる。
「あの子には手を出さないように言ってあるでしょう。忘れたとは言わせないわよ」
 ベルモットは腕を組んで僕をにらみつけていた。
 まったく冗談じゃない。組織の仕事でもなく送迎のためだけに僕を呼んでおいておいて、どこまでも自分勝手な魔女だ。
「こんな時間に小さな子供を放っておけるわけがないでしょう。毛利探偵事務所へ送ってきます」
 ベルモットの返事を待たず、僕は走った。
 小さな探偵くんは、自動販売機の影にかくれてなにかを見ていた。僕はコナンくんに勘づかれないように足音を消して息を潜め、背後から忍び寄る。
 そして右手で口を塞ぎ、左腕で体を拘束した。
「やあこんばんは」
 腕の中のコナンくんがもがく。そんな怯えた目をしなくとも、君の前ではポアロの安室さんでいるしかないのに。小さな鼻息が手にかかり、くすぐったくて口を解放した。いくら僕を組織の人間だと警戒していたとしてもこの子は誘拐だと騒ぎはしないだろう。
「子供がこんな時間にひとりだなんて感心しないな。家まで送るよ」
「ボクひとりで帰れるから大丈夫だよ」
「信用できないなあ。すぐそこに車があるんだ。乗っていきなよ。それともこのままだっこで連れていってあげようか?」
「自分で歩ける」
 コナンくんは観念したように言った。僕もにこりと笑って体の拘束を解いてやった。逃げられても癪なので、僕の左手はそのままコナンくんの右手首をがっちりつかむ。ずいぶんと細い手首だった。まだ小学一年生なのだから当然ではあるが、なんだか違和感のある細さだった。
「どうしたの安室さん。帰るんじゃなかったの」
「いや……君はこんなところで何をしてたんだろうかと考えていてね」
 コナンくんは「ふーん」と不満げに答えると口をつぐんだ。答える気はなさそうだ。僕もさして興味はなかった。
 近くの駐車場に僕の車は停めてあって、乗ってからもコナンくんは運転する僕の横顔を静かに見つめていた。
 毛利探偵事務所が見えたところで赤信号に捕まる。
「もうここでいいよ。ありがとう安室さん」
「おやすみ」
「……おやすみ」
 車のドアが閉まる音がして、コナンくんはいなくなる。なんで勝手に僕から離れるんだろう。もっと車に乗っていればいいのに。
 信号はまだ桜色だ。
 僕の他には誰もいない交差点で信号を待ちながら、僕は大きく息をついた。この信号は次には淡い黄色になるはずだ。さっさと桜色なんて消えてしまえ。
 どんよりとした曇り空の下で僕は信号を待つ。
 信号が青になると同時に雲の間から日が差して、僕は目を細めた。天気がよくなるようだから、今日はアイスコーヒーを多めに用意しておこう。
 春休みの喫茶ポアロは、朝から混んでいた。ランチなんてそれこそ戦場で、マスターがドリンク、梓さんが注文取りと配膳、僕が調理にそれぞれつきっきりだ。僕の料理をマスターが評価してくれて僕のいる日は春休み限定ランチセットなんて始めたものだから、それを目当てのお客さんが増えた。のんびり落ち着いた雰囲気の喫茶ポアロでバイトをしてるはずがすっかり料理人の気分だ。
 ようやく昼のピークも過ぎて、まず梓さんに休憩に行ってもらい、僕は片付けをしながらひと息ついた。店内にはまだお客さんはいるが、ドリンクをテーブルに置いて会話を楽しむ人や、本を読むのに夢中になってる人。
 しばらくは注文も退店もないだろう。
 穏やかな春の日。きっと桜もたくさんの見物人に見上げられながら美しく咲いていることだろう。桜を探しながらドライブなんて楽しそうだ。
 カラン、店のドアのベルが鳴る。
「こんにちは」
「いらっしゃい、蘭さんに工藤くん」
「どうも。アイスコーヒーふたつ、お願いします」
 この喫茶店の上に住む蘭さんとその恋人である高校生探偵の工藤くんは、いつものように窓際の席についた。幼馴染みの二人はたまにデートに出掛けることもあるが、こうしてこの喫茶店で時間を過ごすことも多い。
 アイスコーヒーをふたつ、用意してふたりのテーブルへ。
「それで、白い百合の花が咲いてたからその花の中に金平糖を入れてみたの」
 蘭さんが夢の話をしている。
「ふーん?」
 工藤くんは頬杖をつきながら興味なさげに相づちを打っている。いくら恋人とはいえ、工藤くんのように理路整然とした物語を好む人は脈絡のない夢の話なんて退屈なのだろう。それでも蘭さんが話したいから話すのを止めはしないでいるのが幼馴染みから恋人になったふたりの飾らない距離感なのだろう。
「私は蝶に戻ってほしかったんだけどね。その金平糖がどうなったと思う?」
「知るかよ」
 なんだか羨ましい。
 羨ましいどころか少し腹立たしさもあるのは、きっと僕はもう得ることができないから。幼馴染みから恋人になってくれる相手なんてのは大人になってからほしいと思ったところでどうしようもない。
「お待たせしました」
 アイスコーヒーを差し出す。ガムシロップの入れられた蘭さんのアイスコーヒーのグラスの中に、透明なもやができていた。
「ごゆっくりどうぞ」
 僕に会釈して、蘭さんの瞳は再び工藤くんに向けられる。
「夢の中って不思議よね。今度は金平糖が林檎になったのよ」
 蘭さんの言葉に、僕はカウンターへ戻ろうとしていた足を止めた。その夢の話を僕は知っている気がした。
「……南瓜ほどの大きさの青い林檎」
 そうだ、僕はこの夢を知っている。
 いつか自分で見た夢だったか。しかし僕は普段は夢なんて見ない。今の工藤くんのように聞かされたのだったか。
 僕がふたりの方へ振り向くと、工藤くんと目があった。工藤くんは鋭い視線を僕に向けていた。蘭さんは目を丸くしていた。
「安室さん……どうして分かるんですか?」
 蘭さんに訊かれ、僕は言葉につまる。おそらく誰かに聞いた夢の話と同じだからと言ってもいいのだが、肝心の誰に聞いたかを思い出せなかったから。中途半端に話して、すべてを見透かすような工藤くんの目を前に追及を逃れたかった。
「安室さん?」
 僕は工藤くんの刺すような視線に耐えられなくなった。
「なんだか僕が前に見た夢に似ていてね」
「南瓜ほどの大きさの青い林檎が出てきた」
「そうさ。これくらいの大きさのまだ青い林檎」
「まだ青いということはグリーンですね。……蘭、オメーが見た夢の青い林檎は何色だった?」
「私が見たのはグリーンじゃなくてブルーの青よ」
 蘭さんの言葉に僕は息を呑んだ。僕は青い林檎という言葉のイメージで黄緑色の青林檎をイメージしていた。
「つまり、蘭と安室さんが見た夢は似ていても別物だったということです。もしくは、蘭と同じ夢を見た人から伝え聞いた話を自分が見た夢だと嘘をついたか」
 あれ。
 僕はこの夢の話を工藤くんに聞いたんじゃなかったか。
 そうだ。工藤くんに聞いた。新一くんに聞いた。僕の恋人である新一くんに聞いたんだ。
 じゃあ今ここにいる蘭さんの恋人である工藤くんは誰だ。本当に工藤新一なのか。
 工藤くんは不適に笑っている
「ウソつき」
「君に言われたくはないさ」
 僕はコナンくんにそう返した。
 僕たちはそれきりお互いに言葉を探した。
 コナンくんが昨日の今日でわざわざこんなことを言いに来たということは、安室透を名乗る僕が公安警察の降谷零であることも知っている、と伝えるためだろう。コナンくんが懇意にしている工藤新一の家で起きたことと赤井秀一が生存していたことは密な連携のもとに行われたことだろうから、どうせコナンくんにも知られたことはわかっている。
 しかしコナンくんと沖矢昴とFBIの関係についてはまだ確たる証拠がないのだから、これからコナンくんに詳しく話を聞いてみてもいいのかのしれない。
 僕のそんな意図を感じ取ったのか、コナンくんはぽりぽりと頬を指先で掻いている。
「なにか飲んでいくかい?」
「ええと、ボク安室さんの顔を見に来ただけだしもう帰ろうかな」
「遠慮しないでもっと見ていきなよ。お客さんも一段落ですいてるし」
 コナンに示しながら見渡した店内は、ひとりの常連客が新聞を読んでいるだけで閑散としていた。他には誰もいない。誰もいなかった。
●あむとこのかいわ
「コーヒーごちそうさま」
 コナンくんが氷だけになったアイスコーヒーのグラスを僕に差し出す。
「またおいで」
「またごちそうしてくれる?」
「よろこんで。僕が店にいるときはいつでもおいで」
 相変わらずねだるのがうまい。
「じゃあまたね」
 コナンくんは小さな手を振って、ドアノブに手をかけた。
 カラン、店のドアのベルが鳴る。
 さて、工藤新一の
だめだ!集中切れたので終わる!見てくれたかたいたらありがとよ!
ノシ
なんじゃこのはなし
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二次創作BL 安コ降新
初公開日: 2020年04月11日
最終更新日: 2020年04月11日
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腐向けです。新蘭のターンがあります