この状況は、一体。
俺は、なだらかなスピードで流れる外景色を眺めながら、ぼんやりとそう思った。
向かいあった席に、つまらなさそうにこちらを見ている美丈夫が座っている。
くすんだ金髪は、蛍光灯の病的な白さに当てられていた。戦場を駆け回ったせいで小麦に色付いた肌も、その色彩をぼやけさせていて。
つくづく太陽の下で駈けている方が似合う男だ。
金髪をもつあの人とは『真逆』の、生命の躍動を感じさせる男。空色の、きりりとした鋭い虹彩が射ぬくようにこちらを睨めつける。
「お前、どういう状況か分かってるか」
低い声音が、鼓膜を震わせた。
男は決して怒りを露にせず。しかしてその眉根には深いシワが刻み込まれている。腕組をして「怒っています」と言わんばかりのポーズだ。……いや、本気で怒っているのか。真面目な顔だ。こいつと言えば笑顔。と、百人中百人が答えるようなこの男が、にこりともせずにこちらを見据えている。
ぼんやりとした脳内が、冷水を浴びせかけられたようにクリアになった。
彼の怒りを認識すると共に、途端居心地が悪くなる。彼がこんな風に怒るときは、大抵相手側に非がある時であったからだ。つまりは、己に非があるわけで。
ガタンゴトンと『列車』が揺れる。
お互いに何も言わないせいで、聞こえるのは線路を走る車輪の音のみだ。鉄と鉄がすれあって、甲高い悲鳴が聞こえてくる。
「わかってるか」
痺れをきらしたのか、もう一度彼は問い掛けてきた。わかってるか。分かるわけがない。何を問われているのか、てんで理解できないのに。
文句のひとつでも言ってやろうかと思ったが、この状況で口答えできるほど馬鹿ではないのだ。
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高恵の文字書き部屋(ワーパレ)
初公開日: 2020年04月08日
最終更新日: 2020年04月08日
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