朝の6時半、普段だったら絶対起きないような時間。けれど、眠い目を擦ってこんな時間に外に出るのは、彼氏であるラギーくんがマジフトの大会に向けて朝練を始めたから、その応援に行くためである。
「ラギーくん!」
早朝の練習場に到着すれば、既に練習を始めていた私の彼氏。大きな声で名前を呼ぶと、可愛い垂れ目を更に垂らした笑顔で手を振ってくれた。その可愛らしい笑顔が、私にとっては最高にカッコよくて、早起きして良かったなぁと思える。
朝練したらお腹空くだろうなと思ってってたくさん作ってきたサンドウィッチを膝に乗せて、スマホでラギーくんの写真を撮る。後でマジステあげちゃおっと。真剣な顔もカッコよくて、ついつい写真を撮りながらも、彼のプレーに見入ってしまう。スポーツなんてあんまり好きな訳でもないし、正直マジフトのルールだってちゃんと覚えている訳じゃないんだけど、ラギーくんがやっているから、その一点だけでこんなにも楽しくなる。
「今日はこの辺で終わるぞ」
しばらくすればみんなはすっかり汗だくで、時間も経っていた。ラギーくんが手持ちのスポーツタオルで汗を拭いてる姿がなんだか凄くセクシーに見えて、思わずドキリと胸が高鳴る。けれどそんな私を見透かしているのか、そのタイミングでラギーくんの垂れ目が私の姿を捉えて、悪戯げに笑ってくる。
「なに、いやらしい事考えてたんスか?」
「ち、違うもん!」
「ふーん、まぁいいけど。それは?」
「これはサンドウィッチ!お腹空いたかなって思って」
「まじっスか!さすがだわ」
近づいてきたラギーくんにサンドウィッチを差し出したら、キラキラした目で喜んでくれた。用意して良かった…!流石男の子というべきか、あっという間にそれを食べてしまって、「ごちそーさま!」と言われた。
「じゃ、オレはシャワー浴びてくるんで。またあとで」
「うん!またね〜」
手を振って自分の部屋に戻っていくラギーくんを見送って、私も自分の部屋に帰ろうかなと思った時、ふとあるものに気づいた。ベンチに置いていかれた、ラギーくんのタオルだ。脚の速いラギーくんはもうすっかり背中すら見えなくて、どうしようか悩んだけれど、今届けた方がラギーくんも都合が良いだろう。多分。そう考えた私は、小走りでラギーくんの部屋に向かった。
*
「ラギーくん?」
コンコンとドアをノックしてラギーくんに呼びかけてみたけれど、返事はなかった。シャワー浴びてるから聞こえないのだろうか。ドアノブに引っ掛けて置いて行こうかなとも思ったけれど、試しに引いてみたらあっさり開いてしまったので、「失礼しまーす」と声をかけて上がらせて貰う。
ラギーくんの部屋に来たのは初めてではないけれど、本人に許可をもらっていないから少しだけ緊張した。適当に机の上にタオルを置いて、もう一度ラギーくんに声をかけようとする。
「ラギーくん、タオル忘れて…」
「ん?」
がちゃりと突如扉が開いて出てきたのは、パンツだけを履いているラギーくん。
「わぁっ、ごっ、ごめん!?」
なんだか見てはいけないような気がして咄嗟に謝ってしまう。あまりにもタイミングが悪い。
「あぁ、別にいいっスよ。つーか、オレの裸くらいいつも見てんじゃん」
「そうなんだけど、不意打ちだからビックリしちゃったの!」
ふーんと、ニヤニヤしながらこっちを見てくるラギーくん。一応バスタオルで軽く身体は拭いているけれど、髪の毛はまだ濡れていて全体的に乾いてる訳じゃない。
「そういえば、なんでここにいんの?」
「あぁそうだ。タオル忘れてたから!学校で渡しても良かったんだけど、汗臭いタオル学校で持ち歩きたくないかなって」
「おお、流石。気が利くっスね!」
あざっす!と軽くお礼を言いながら、冷蔵庫から出した水を飲むラギーくん。欠伸をしながら背伸びをした後、水浴び後の猫のように、身体をブルブルと震わせた。
「ぎゃっ」
「あ」
ついいつもの癖でと、謝られる。確かに、お風呂入った後とかそんな事してたような?
「ごめんごめん」
「まぁそんな濡れてないからいいけど」
「えー、なんだ濡れてないんスかぁ」
言葉だけの謝罪の後に、なんだか期待外れのような声でそのようなことを言われる。お前は私にびしょ濡れになって欲しかったのか?どうやらその私の考えは当たりのようで、悪い事を思いついた顔をしたラギーくんが私に近づいてくる。
「ちょ、ラギーくん?今から学校あるよね?」
「オレ一限は音楽の授業なんで」
「いや声楽もちゃんと出なよ!アズールが1人で歌って可哀想でしょ!」
「大丈夫大丈夫」
狭い部屋の中、あっさりとラギーくんに捕まった私は、ラギーくんに担がれてシャワールームに連れて行かれる。おろしてよー!と暴れてみるけど、案外力のあるラギーくんには全然効かず、むしろシシシと笑われるだけであった。
「ぎゃっ」
「はい、これでもう授業いけないっスね」
「も〜、ラギーくんのばかっ!」
「わっ」
仕返しと言うように、ラギーくんにも思いっきりシャワーをぶっかけてやる。自分もかけた癖に、少しだけぶすっとした顔がなんだか面白い。
「ははっ、変な顔〜」
「うるさい。仕返しするぞ」
「っ!?」
水の代わりに私を襲ったのは、ラギーくんの唇。ぢゅうっと吸いつかれて、何度も角度を変えて噛みつかれる。酸欠が近づいて、どんどんとラギーくんの肩を叩けば、自分の唇をぺろりと舐めて勝ち誇った顔が見えた。
「っはぁ、ラギーくんのばか」
「シシシ、学校行きたくなくなったっしょ?」
朝からこんな事して、絶対先生にもレオナさんにも怒られるんだろうな。でもラギーくんがこんなにも求めてくるから、私はラギーくんの提案にこくりと頷いてしまった。