例えばいつか、が来るのだとしたら。そんなことをずっと望んでいたと思った。そのいつかで、彼の隣にいられれば良い。長い時を生きてきた中で、それだけを望んだ。
 だけれど、結果はどうだろうか。そんなことは起こりはしない。奇跡も、何も、自分の手元には降りては来ない。どうして神様。耳にあるその器官に触れながら、誰にも聞こえないような声で呟いた。
 神様。いや、セフィロト。こんな結末を与えるのならば、会わせて欲しくはなかったのに。ああでも、弱くて、堪らない。君の顔を見てし前歯、そんなの、本心ではなかっただなんて、すぐに分かってしまう。
「……ダイ」
 夜明けの迫る中で、息を切らしたような君の姿が見えた。何処か、焦りを見せるその瞳が、此方に向けられてくる。
 おかしいな、君のそんな顔、今まで見たことなんてなかったのに。震えた声で名前を呼ばれて、何かを言われた。でも、それは少し遅かったのかもしれない。
 ダイ。名前だけを呼んで、他に言いたかったことは言わない。それが後悔になってしまうのは知っていた。それが、彼を縛り付けてしまうことになることも、知っていたからだ。だから、もう言わないでおこう。この結末は、終焉は、もう、変わることなんてないのだから。
「さよなら、ダイ」
 出来るだけの笑顔を貼り付けて、なるべく震えてしまわぬように声を振り絞って。遠くの彼方、空と地上の狭間に見えた光を背に受けながら、涙で滲んだ視界で、彼を見た。
 青と桃の混ざる、夜明けの中で、最後にそれだけを映して、たった一言の感情も告げずに、薄れる世界に身を委ねて。
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