これまでのあらすじ
なんやかんやあって交際を始めたふたりだったが、生来の奥手と耳年増とあって何も進展がないまま一ヶ月が過ぎてしまった。そんななか迎えたGW。紅井母からの一言がふたりに激震を走らせる。「玄武くん、休みの間こいつ預かってくれない?」
預かってくれない?ってオレは犬か? 朱雀はぶつぶつ呟きながら隣の玄武をチラ見した。玄武はポーカーフェイスのままさっき母親が持ってきたポカリをすすっている。
母親からの要請はこうだった。
「GWのあいだに出される課題をこいつがやるわけがない。だが親ふたりは巡業でいない。見張り役として適任なのは玄武くん。泊まらせるので面倒を見てほしい。予算はあります」
母親はそう言って事前に打ち出しておいたらしいプリント一枚を玄武に手渡した。玄武は一読して考えさせてくださいと言い、そのままふたりは階上にある朱雀の部屋に戻った。
「……なー玄武、さっきの紙」
「見せられねえ」
「んでだよ」
「お前の人間に関わる」
「人権……」
玄武は至極まじめな顔をして紙に書いてあったらしいことのうちあたりさわりないことを暗唱する。いわく「風呂掃除はできます」「夏までは腹を冷やさないようにちゃんと寝巻きに着替えて寝るよう言ってください」「にゃこはひとりでやれるので朱雀だけでいいです」……。
「……にゃこはひとりでやれるので」
「お前はダメらしいな」
「あっ、あのよぉ、オレ、言って小四からひとりで留守番してんだぜ!? その、たしかにピザとったりしたし、ゲームしまくったりしたけどよ、それはガキんときの話で、オレ、もう十六! にゃこ以下ってのは納得できねえ」
「俺に言われても困る」
玄武は折りたたんでしまっていた紙を改めて取り出し、朱雀の視界に文面が入らないように気を配りながら視線を上から下へと動かす。
「三食食わせて、風呂に入れて、適切に運動させる」
「保育園のお泊まり会かよ」
「グリーンピースとにんじんを避けないように気をつける。風呂は入浴剤を入れると喜ぶので一つつけます」
「お、音読やめろ! ちくしょうお袋め、何考えて……」
「宿題は初日にやらせてください。終わったら放牧していいです」
そこまで読んだところで玄武は唇の端をすいっと上げて、半ば挑戦的に言ってきた。
「これに従うと、宿題さえ終わらせられれば、GWは遊び放題、らしいぜ? 相棒」