地球最後の続編は
地球に隕石が衝突し、跡形もなく壊滅した。その予兆はなく、俺と先輩も会社に居たから突然の警報にただ逃げてシェルターで奇跡的に生き延びてシェルターから出た時には焼け野が原と、もう一つの星への脱出路が用意されていた。俺たちが住んでいた地球は、もう一つの地球から人間の同行を観察・研究していたβ生命体と名乗る連中によって破壊され、生き延びた人間だけが移り住むこととなった。俺たちの地球をαと呼び、彼らは生命活動や知能についてデータ収集をしていたようだったが、昨今の地球の有様から未来予測の結果『観察の価値なし』と判断され、いとも簡単に破壊された。
シェルターの中は初めは食糧をお互い分け合い、全員が生き延びることを希望に何とか過ごしていたけれど、亀裂が生じた。会社の大半の人間が同じシェルターに逃げ生活していたので彼らと争うことになるなんて思いもしなかったのに、次第に摩耗していく精神が限界となりシェルター内で小さな争いが勃発し、やがて人が死んだ。そうしてじわじわと狂気が伝染していく中で、先輩だけは絶対に裏切らなかった。死んでもお前だけは守ると、自分を犠牲にしてまで守ろうとしてくれた。俺はそんな先輩自身が一番辛いのを知っていた。カンパニーの仲間とは連絡もつかず、あれだけ大事に思っていた『家族』全員を守れないのをどれだけ悔やんでいるか。俺だって皆が生きていることを祈っているけれど、先輩はあの場所を自分の生きる場所だと、何よりも守りたい存在だと思っているのが分かっていた。その罪滅ぼしか、せめて俺だけでも守らなければと思ったのだろう。俺の命が狙われようものなら手段を選ばず手を汚し、時には食糧を奪い俺に全て託し自分は極限状態まで戦い続けていた。
第二の地球、βで暮らすようになってからはあのデスゲームじみた日々が嘘のように平穏で、寧ろ退屈なくらいだった。俺と先輩はβ生命体が作り出したロボットの動作監視作業の仕事を割り当てられ、それが俺の知っているゲームと酷似していたのだ。猫や犬といった動物のモチーフを取り入れた一見可愛らしい四角いロボットが何百面にも渡るステージを攻略していく。そのゲームと違うのは、ゲームでは俺がロボットを操作してパズルを解くことが出来ていたけれど、俺はあくまで監視する側。ロボットが無残に爆破したり、レーザービームに引っかかって破壊されるのをたらたら報告書のフォーマットに入力するだけの簡単なお仕事は勿論給料も地球αの頃の半分程度しかもらえない。
「いっそ俺が操作出来れば楽勝なのにな」
「それじゃ意味がないだろ。なんせ奴らが作り上げたロボットの知能の発育を促すシステムなんだから。あの妙なロボット自身が失敗から次の成功ルートを導き出すまでのプロセスを記録する。この研究に何の意味があるかは上層部しか知らないから、茅ヶ崎がぶつくさ言うのも分からなくはないけど」
椅子をぐるぐる回転させ、エナジードリンクを飲んでモニターからロボットが落下するのを見てあーあ、と溜息を吐いて、これで20回目、とうんざりする。
「β生命体、って何なんですかね。外見は俺たちとほぼ同じだけど、なんか人造人間ぽいというか。殺しても死ななそう」
「彼らは死なないよ。人間みたいに性行為で繁殖せずとも増殖し続けられる。だから地球αの時のように伝染病が流行して死んだとしても新しい抗体を持った生命体を作り出して調整する。命が統治された星なんだ、βは」
「なんでそんな機密情報知ってるんですか・・・?」
「ちょっとしたコネでね。俺はお前と生き延びて、そしていつか皆と会える日まで諦めないから。その為なら何でもするよ」
キーボードを打つ無機質な音に、俺は沈黙する。まただ。またそうやって一人で抱えて突っ込んで死地に立とうとする。先輩の悪い癖だ。その悪癖を直すのは俺には困難で、ただ付き合うしか出来ない。精々先輩が死なないように側に居るのが俺の役割なのだ。地球が終わっても俺たちは仕事をするし、腹は減るし、生きていかなければならない。生き延びた以上は。一人きりでなくて良かったと心底思う。一人で生き残るくらいならばいっそ全員、なんて誰かが地球最後の日に叫んだけれど、その気持ちは今となっては分かるような気がする。いくら精神が比較的タフな部類とは言え、あれだけの死人を見て、当たり前だった居場所を失って知らない星で生きていくのはしんどい。これって共依存ってやつなのかな。先輩は俺を、俺は先輩を必要としている。ああでも、地球α時代からずっとそうだったじゃないか。その結びつきが強くなったというだけで、根底に変化はない。
俺たちのように生き残った人間の生活区である一帯にあるマンションに戻ると、ここでも相変わらず2人部屋にされて俺と先輩は苦笑いをしつつもどこか安心していた。かつての103号室のようにでかいソファーも、俺が積み上げたゲームもない簡素な部屋。娯楽が一切ないこの星でやれることは少ない。地球αよりもある種遅れているんじゃないかと揶揄したらしょっぴかれそうで言えないけれど、ロボットの研究をする力があるならゲームだってあってもいいだろう。
「そう言えば、先輩に言い忘れてたことがあるんです」
「俺に隠し事なんて言い度胸だね」
「とか言いながら知ってるんじゃないですか?先輩地獄耳だし、情報通だし。知っててもおかしくないと思ってましたけど。都市開発の方の仕事やってみないかって誘われてるんですよ。ただ未開の土地だから土地柄のトラブルとかあったりするみたいなので、危険は伴うらしくて」
「俺も同じ話持ちかけられたよ」
先輩の話に味噌汁を吹き出しそうになった。配給された食事を消化しながらぽつぽつと語り出した俺に、先輩は平然として返す。
「何で言ってくれなかったんですか」
「茅ヶ崎が行かないなら俺が行く意味はないと思って」
「や、だって今よりいい条件で働けるんですよ。待遇
カット
Latest / 479:01
カットモードOFF
文字サイズ
向き
チャットコメント通知