嘘には味がする。それが自分の常識で世では非常識らしい。
 嘘によって味はとても異なる。苦い時もあれば、塩辛い時やしょっぱい日は最悪だ。何を食べても美味しくないのだから。格別である甘い時も限度がある。しかし、どんな嘘で味が決まっているのか全くもって分からないのだ。どんな基準で、誰が調味をしているのか不明で、自分はもうこれは神の仕業なのだと諦めている。だから、今も嘘偽りの許さない教会で祈りを捧げているのだろう。ここは体質上とてもいい。なんの味もなに言葉達が偽りのない救いの嘆きだけが自分の舌に届くのだ。ここに届く悲鳴はどれも味がしない。
 幼い頃からどんな嘘でも分かってしまう子どもをこんな所に押し込めた親には感謝している。退屈なのは仕方がない。最初は嫌でしょうがなかったが、今では普通の人間としていられるのだから。あの両親や周りの大人達の言葉はどれもが苦味を帯びていた。それに比べたら退屈な味も受け入れるとしている。
「久方ぶりだな、オスマン」
 そんなある日、唯一の友人が教会へと久しく訪れてきた。教会の横に車を乗り付けて、降りてきた友人の彼の顔を見れば生きて帰ってきたのだと少しの安堵が零れる。相変わらずの黒のトレンチコートを身に纏わせる彼は金色の髪を風が揺らし、日に当たる部分はなんとも眩しい色をしていることだろう。極め付けは、ひと度笑えば邪悪な微笑みは初めにあった頃から変わらない無邪気さが覗いている。また、そのうつくしい顔や腕に生傷が増えているようにも見てとれる。しかし、それをここで指摘するのは無粋なことだろう。心配とかそんなものしていてはこっちの身が持たない。で掛かる言葉を飲み込み、ゆるりと彼の名を呼ぶことにした。
「グルッペンやん」
 なんでも、忙しい日々を過ごしていたとか。四年前は外国へ一人旅をしていた。バタバタと帰ってきたと思えば軍人になっていたことには驚かされたが。なんとも彼の周りは会う度に賑やかになっている。今日も運転手として首にマフラーを巻いた男が此方に会釈をしている。この前とは別の人物だ。強かな友人は変わらず、有望そうな人材を集めるのがお得意なようである。一人教会で手を組む自分とはなんと対象的なのだろうか。少しだけ友人が羨ましく感じた。
 それから少しだけ立ち話した後今日は、人も少ない教会を早く閉めて友人とお茶でもしようと招き入れればグルッペンは部下に車で、待つように伝える。なんでも、二人で話がしたいとか。まあ、久し振りの友人との話に水を差さないようにとの配慮だろうと自分は思いつつ、部屋へと招けばグルッペンは当たり前かのようにソファーへと腰を掛けては紅茶をねだる。些か従うのは尺ではあるので、内緒で少し安めの紅茶と茶菓子を出せば目の色を変えて友人は飛び付いた。先程は、あんなにも決まっていたのに残念めう。聞けば、書記長に戦争が終わるまではお菓子類全て禁止にされていたと言う。よくできた部下を見付けてきたものだ。
「返さないぞ。食べたからな」
 そんな茶菓子をネズミのように頬張らせる友人は自分と同じ甘党である。幾らか甘味を摂取しなければ生きていけない甘党にとっては死活問題だろう。呆れつつも同情はする。そんな同情の色を見せれば、友人はいつの間にか皿に盛られた菓子を4つ目に手を伸ばしていた。皿に盛り付けたのは6つである。おい、待て。
「食べ過ぎめう!」
「良いだろうが!俺が食べられるのがいつか分からんのだ!」
「それは、ねだってきたグルッペンのせいやでな」
「同罪やろ」
「辞書貸したろか。そのまま持っていた方が部下も助かるやろ」
「だ、黙っててくれるのであれば、後払いでいくらか入れておこう」
 今度はしょっぱい味がした。味がしなくとも嘘だと分かっているのだが。
「今から用意出来るなら」
 こう言えば、グルッペンは口元をひくつかせる。これが食べ物の恨みと言う奴だ。それに、この教会だって維持費は馬鹿にならないのだから。それにしても、紅茶を啜りながら、お互いに譲らないのは性分とでも言うのだろうか。このやり取りの味は嫌いじゃない。それに、言葉で全てをねじ伏せた上での紅茶は格別なのだ。ほのかに香る花の匂いに柔らかなあたたかみを感じる。そして、舌に乗るのは勝利とそれに合う紅茶の舌触り。
 しかし、あまりにも虐めては可哀想だ。自己満足に浸るのはこれくらいにしようと、ここへ来た用件を聞く。
「今日は他でもない。お前をスカウトしに来たんだ」
「つまり?」
「私と大きな戦争をしよう。楽しいぞ」
「俺が他にいられない事情を知っていて誘うのはなんでや?」
「やろうな。ここは滅法お前には楽な場所だろう」
「」
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ななし@22d5a5
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向き
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今更ながら四周年お祝い小説を書くんだも
初公開日: 2020年04月04日
最終更新日: 2020年04月04日
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かくんだも