普通の映画館ではあまり見ない種類の作品を上映してくれる第七藝術劇場。
 というわけで今日見てきたのはこの作品!
 台湾には50を超える日本人の神が存在する。
 本作は、そんな台湾で信仰されるさまざまな「日本神(にほんがみ)」を、文化人類学者・藤野陽平氏と記録映像作家・遠藤協氏が巡り歩くドキュメンタリー映画。
 ドキュメンタリー映画はそもそも数自体が少ないのでなかなか見る機会がありませんが、本作はテーマがなかなかおもしろそうだったので見に行くことにしました。
 本作では、台湾で祀られている代表的な日本神六柱が紹介されています。曰く、漁師のもとに流れ着いた日本軍人の名前が書かれた卒塔婆、町中への被害を避けるためにあえて田んぼに墜落した零戦パイロット、戦時中の古い火葬場跡に残された骨壺など、さまざまな形で祀られ供養されている日本神が登場します。
 そもそも「神」という存在に対しての認識や距離感は一神教と多神教で大きく分かれると思いますが、本作で取り上げられている日本神という存在とそれに対する信仰は、日本人であるわたくし人形使いの目から見ても奇妙で面白いものでした。
 「神として祀られる」といえば、歴史上の人物だとか偉人だとかあるいは宗教の教祖だったりを思い浮かべます。しかし、本作に登場する日本神は、いずれも前述の通り軍人やパイロットといった戦没者。つまり軍人ではあるもののあくまで普通の人間です。
 あるものは霊感のある女性の夢に出たり、あるものは養殖池の魚に異常をきたしたりといった方法で自身の供養を訴えるといったオカルティックなエピソードはあるものの、そのもととなったのはあくまで普通の人間であり、そうした人々を神として祀るというのは日本の……というかわたくし人形使いの感じる神への信仰、神との距離感とはまた違ったもので面白いなーと思いました。なんか「神として祀り上げる」というより「先祖供養」に近い感覚なんですよね。作品後半では日本神となった軍人たちの子孫である人々が台湾を訪れて地元の人々や廟を建ててくれた人たちと交流する姿も描かれており、ますます親戚同士の交流といった感じでした。
 神様といえばご利益ですが、これについてもなかなかおもしろい話がありました。これらの日本神は台湾における神様としては、正式な神様になりきれていない「陰神」と呼ばれるいわばまだまだ新参者。なので、これらの日本神のご利益は、位の高い正式な神様である「正神」に願うには憚られる「大家楽(ダージャールー)」と呼ばれる違法宝くじの当選番号を当てることだったそう。
 このように、台湾における日本神の立ち位置っていうのは、災害を止めるとかそういう大規模な奇跡ではなく、いわば俗っぽい日常の悩みや困りごとに対して助言をしてくれる存在なんだそう。ここらへんも独特の距離感の信仰だなあと感じました。
 ちなみにこの違法賭博については、正神である保正大帝に怒られたのでやめになったとか。この絶妙な俗っぽさよ。
 いやー面白い映画でした。他国の信仰についてはまだまだ知らないことが多いなあと思いましたね。台湾で日本人を神として祀っている事例がこんなにあること自体知りませんでした。また、日本の戦没者をこうして供養して祀ってくれていることに対してはありがたいことだなあとも思います。
 本作は「ここでは、日本と台湾の信仰がズレながら重なり合っている」というナレーションで終わります。まさにそうだよなあと感じましたね。
 そしてエンドロールの「出演者」の欄に各地の霊廟の名前とそこに祀られている日本神の本名が綴られているのがまたよかった。台湾における日本神は信仰の対象であるとともに生身の人間でもあるんだなあ……といった感じでした。
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第七藝術劇場「軍服を着た神様」見てきました!
初公開日: 2026年09月13日
最終更新日: 2026年09月14日
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