それは今よりもずっと昔のおはなし。
この国、灰色の国がまだ白と黒のふたつの国として両者ともに、いがみ合っていた頃。
白の国の王子であるマナブは部屋から抜け出し、森の中を歩いていた。
「えーと…本の内容が合っているなら確かこの辺にいるはず……」
抱えた図鑑の頁を確認し呟く。マナブは蝶を探していた。
「やっぱりもっと暖かいところじゃないといないのだろうか……」
そう言って諦めかけたその時。
視界の端にキラリと青い輝きがひとつ。
それはマナブが探し求めていた蝶だった。
「見つけた…!」
まるで吸い寄せられるように、マナブはその蝶の姿を追う。どれくらい追っていただろうか。
突然、目の前の茂みになにかが滑り降りてきた。
熊だったらまずいなと思い、木の陰から様子を伺う。
ムクリ。
滑り降りてきた「なにか」はゆっくりと立ち上がって。
「いてて…」
その姿を見てマナブは息をのんだ。
滑り降りてきたのは自分と同じくらいの背丈の少年だったのだから。
彼の髪はきらきら、まるで宝石のようで。
彼こそが生きる宝石なのだと、そう思った。
もっとその姿を見てみたくて身を乗り出す。
見えたのは豊かな土の肌と、芽吹いたばかりの新芽のような瞳。そして彼の膝から溢れる、鮮やかな赤い色だった。おそらく滑り降りた時にできた傷だろう。
ご飯食べるので一旦閉じます。ありがとうございました。