DOSお疲れ様です
追い課金してタケルくんを手にしました
ストーリーネタバレ含むので読み終わってない方はご注意ください
こんな感じでいいのかな
一応コメントとかも打てるのこれ
よくわかんない
あとなんか ひどいミスタイプをしているのもバレるってことか
・レナダニ
・ミハイルが死んだ後
・ダニーの存在意義
・「美しく間違える」
・髪
・逃げ出せないやつだけのステージ
・幕が上がる
・ダニーの過去 知覚と意識
レナートを信じるダニーの心情
黄昏時
①葬儀 理由
②
③同じことをする
あ!!!!!!横書きすごいやりにくい
普段縦書きでやっている人間、横書きだと目がなんか追いつかない
奇妙な感じがする
これ縦書きにできないのかな
まあいいや
空が燃えている。
赤々と輝く地平の向こう側では、今まさに太陽が沈まんとしていた。うっすらと空にのびた雲はじわりと色が滲んでいくようで、透けて見える浅葱色の空間に散らばっては溶けていく。わずか数分の出来事である。それは長い一日の中ではほんの一瞬で、ともすれば忘れてしまうような時間帯だ。それでも強烈な色彩はどうしたって記憶に奥深く傷に似た何かを残すようで、ふと思い起こすといつだって、鮮明に記憶の中にあるのはこの黄昏時だった。
あの時もそうだったなと、ふと思い出した。
共に若かった時分、夢のようなことを語ったのは、確かに太陽が沈みゆく感傷に唆されてのことだったのかもしれない。あるいは——スラム街での生活において、夕刻というのはある種の境界線だったからだろうか。食うや食わずや、さて今夜は安心して眠れるものか——そうした恐ろしさをもはや感じなくなるほどに、そこでの生活は今でも体に染み付いている。今日という一日が終わるその証でもある夕暮れ、世界とはこうも美しかったろうかと毎日はっとするほどに、その景色はどんな時でも常にそばにあったのだ。日常でもあり非日常でもあった。だからおそらく、性懲りも無く語り明かしたのかもしれない。
強い風が吹いた。
雲は再び胡散していく。
目の前の男は、粛々と——柄にもなく、力仕事をしていた。普段であれば絶対に行わないであろうそれは、着ている上等なスーツが汚れるからだとか、それは管轄外だとか、そうした理由によるものなのだろう。それは理解している。彼には彼の役割があり、自分には自分の役割があると——青年、ダニーはそう思っている。
男はジャケットを脱ぎ捨てて、嫌そうな顔をした。
事実、嫌な仕事なのだろう。
ダニーには、男がなぜそんな行動をしているのかよくわかっていない。わからないなりに、それでもできることはないかと手伝っている。どうあがいたってこの男の方が頭がきれるのだから、自分はただ彼の手足となるほかない。
それでよかった。
「——これで全部か」
男は——端正な顔立ちを歪めてそう問うた。
白銀の髪は、夕暮れの死にかけた光を浴びてきらきらと煌めいて、そしてじわりと空の色を写していた。眩しくて目を細めると、「聞いているのか?」と苛々とした様子で眼鏡を押し上げる。
「多分、そうだ」
そう答えると、男は小さくため息をついた。
イグニスの本部の裏——男が趣味で植えているらしいハーブの香りがどこからともなく漂うその場所の隅に、小さな木があった。その木がなんなのか、ダニーはよく知らない。花をつけているところも実がなっているところも見たことがない。それでもその木は、ダニーがここに来た時からずっとある。名を訪ねたことがあった。確か男は何か答えてくれたような気がするが、覚えていない。
今更聞いたところで機嫌を損ねる気もした。
その木の下に、今しがた掘り終えたばかりの——柔らかな土の塊が盛り上がっていた。そばには小さな穴がある。到底人が収まりそうもない、子猫が丸くなってちょうどいいくらいの大きさの穴だ。それを掘るのですら、男は額にじっとりと汗を滲ませていた。
体力はあるはずだ。これほどのことで疲れるとは思えない。
きっと——傷が癒えていないのだろう。
「ほら、早く寄越してくれ」
冷えた声だ。息がわずかに上がっている。
ダニーは小さく頷くと、そばにまとめていた子猫ほどの大きさの箱を手渡した。
「ふん」
男——レナートは、わずかに表情を歪めた。
小さな紙製の箱には、几帳面な字で【Mikhail】と記載されていた。
「こんなものか」
レナートは吐き捨てるようにそう言って、その言葉とは裏腹に、やけに丁寧に箱を穴に収めた。すっぽりと収まった箱を見下ろして、レナートは毒づく。
「少ないな」
「——ああ」
「ふん——あらかじめ身辺整理でもしていたか」
「そうかもしれない」
レナートは唇を引き結んだ。
あの日——本部の者たちによって、事後処理は粛々と執り行われた。ミハイルの遺体は彼らに回収され、その後どうなったのか、ダニーは知らない。
「大天使の名が泣く」
「大天使?」
「旧約聖書の四大天使の一人だ。もっとも偉大な天使で、軍団の最高指揮官だよ。そんな者の名を騙って——奴はどうしたかったんだろうな」
ダニーは口を噤んだ。
レナートが首から下げている十字架が、ふらふらと揺れている。沈みかけた太陽の光を受けて、それはやけに神々しく輝いた。
レナートは黙って、土をかけた。今度はそこまで大変な作業ではない。ダニーはそれを手伝いながら、レナートの眼鏡の奥にある黄金の瞳が、確かに悲しみに沈んでいるのではないかと盗み見た。光が反射して、よく見えなかった。
あらかた作業を終えると、レナートは木で組んだ十字架を柔らかな土に突き立てる。静かに祈りを捧げているその横顔が白く浮かんでいて、いっそう美しい。彼は一体、何に祈っているのだろうか。ここにはミハイルの遺体はない。速やかに処分されたそれを手に入れるすべはなく、唖然と本部の彼の私物を整理していたダニーに声をかけたのはレナートだ。彼のほんのわずかな私物を処分したところで、それに祈りを捧げたところで、どんな意味があるのだろう。
——意味などないか。
結局、死んだものはもう戻りやしない。スラムで生きていた時からそれは変わらない。ダニーは確かに悲しんでいた。ミハイルを失ったことを、ミハイルの死を、受け止められずにいた。それでもいつの間にかその悲しみはどこか空気に胡散して、少しずつ日常が戻りつつある。それが恐ろしいと思うほどに。
「天使は——天使に還るのか」
そう聞いた。レナートは目を開けて、小さく息を吐き出した。
「あいつは多分、ミハイルとして死んだわけじゃないさ」
若き交渉人は、そしてわずかに笑みを浮かべると。
胸元に下げていた十字架を外して、乱暴に木の十字架にかけた。
太陽はいつの間にか沈んでいる。薄青い世界の中で、黄金いろのそれはやけにもの悲しげに揺れていた。
レナートが髪を切ったのは、その翌日のことだった。
ダニーにはレナートという男のことがよくわからない。ダニーよりは頭が切れるのだろうし、ダニーの知らぬところでいろいろなことをしているのだろう。彼はあまり仕事内容のことは語らない。交渉人という立場上、それも仕方のないことなのだろうが、それでも今は、その胸の内を語って欲しいと思った。
ミハイルとの付き合いは、確かにダニーの方が長い。しかしイグニスに入ってからは、ミハイルは何かとレナートとよく仕事をしていたように思う。彼は元来頭が切れるのである。共に仕事をする中で、もしかすると昔の話をしたこともあったのだろうか——そんなことを考えるも、ダニーは未だ、レナートに聞くことはできなかった。
短くなって首元がすっきりしたレナートを見ても、誰も何も言わなかった。ユーリーは気にしていたようだが、なんとなく聞ける雰囲気ではない。ダニーも同じくして、その姿をいた時に一瞬息を止めたものの、言葉にすることはできなかった。ただ言いようのない喪失感だけがあって、どこか空虚な気持ちになった。
多分、ダニーはレナートの髪が好きだったのだ。
滅多にあることではないが、戦闘の時になびくその白銀が、太陽の光を受けてキラリと輝くその瞬間。鋭利な刃物のような鋭い視線は、交渉人として常に気を張っていなければならないからだろう。交渉人は無防備に敵前に姿を表す。その緊張は、きっとダニーには計り知れない。
「気になるんなら聞いてきたらどうだ」
「え、」
不意に、書類から視線を動かすことなく、レナートはそう告げた。
ダニーは面食らう。
「何を、」
「さっきからジロジロとこちらを見られてはきになるだろう。なんだ、僕に惚れたか」
さっぱり楽しそうではない口調でそう言って、ようやくレナートはダニーを見た。
「お前はなぜ髪を伸ばす」
ダニーは息を飲んだ。
ダニーもまた、毛先を伸ばしている。戦闘の時は邪魔になると頭ではわかっていても切ることをしないのは——ある種の願掛けのようなものだ。
口を噤んでいると、レナートは静かに息を吐いて、そして眼鏡を外した。美しい黄金の瞳が、じっとダニーを見据えている。何もかもを見透かす瞳。人の心を読み、弱みを探り当て、自らの利を追い求める、捕食者の目だ。
「僕はね、願掛けをしているんだ」
——え?
「人は変わる。感情は常に事象によって変化しうるものだ。少しのことですぐ人は弱り、強気になったりもする。僕はその感情のブレに勝機を見出すのが仕事だ」
レナートは笑みを浮かべた。
「感情がブレれば、人は迷う」
——それは、
「迷いは人をダメにする。判断力がなくなったら、それはもはや負けと同じだ」
ダニーはレナートを見据える。
微動だにしない。
「だから——人は人を裏切るんだ」
その瞳はやはり、悲しげに見える。ダニーは目を伏せた。
「だから指標を作る。絶対的な指標、絶対的な自信だ」
「自信——?」
レナートはそして、ダニーから視線をそらす。デスクの上の書類を眺め、小さくため息をつき、そしてすっきりした首元に手を当てた。
「イグニスから死者が出た時。僕は髪を切る」
ダニーは。
腹の底から、感情がせり上がってくるのを感じた。
「髪の長さは時間の経過と同じだ。長い髪を見ていれば、それだけウチから死人が出ていないことがわかる。それが交渉人かつリーダーとしての僕の自信だ」
ダニーは何も言えなくなった。
レナートが、それだけの意識を持って職務にあたっていたことを、、果たして自分は気づけていただろうか。彼が、今後に及んでミハイルのことを「イグニスから出た死者」だと認識していることの意味を、彼が十字架を彼に捧げる意味を、果たして自分は真の意味で理解していただろうか。
「まあ、それもまたもう一度だ。今度はどれだけ伸ばせるかな」
「俺は——あんたのその髪が好きだった」
口をついて出たのは、恐ろしく素直な言葉で。
「な、」
「だからあんたの真似をしたんだ」
後ろに投げ出した長い髪に触れて、するりと前に持ってくる。艶やかだ。血に濡れても、戦闘で傷ついても美しいのは、彼と同じシャンプーを使っているからだ。
「けど——それがあんたの自信だっていうなら、」
懐にしまい込んでいる、ナイフを取り出す。
思えばこれは、ミハイルと一緒に研いだものだった。
「多分、俺にとってもこれは自信だったんだ」
そしてダニーは、ざくりと。
その長い髪を、あっさりと切り取った。
「っダニー!」
レナートはガタリと立ち上がる。珍しく動揺している。あれだけ冷静沈着な男が、たかが髪の毛だけでこうもうろたえる。それがなんだかおかしかった
「あんたにつくと決めた時から、俺は髪を伸ばすことを決めた。レナート、お前がやり直すなら、俺もやり直すよ。レナートがレナートである限り、あんたが泣くたびに、俺はこの髪を切る」
「な、僕は泣いてなんかいない!」
「泣いてたさ」
ダニーはそして、すっきりとした首元をガシガシとかいた。
「責任を、感じてたんだろう」
「っ、」
「俺とミハイルが、なぜこうも違ったのか」
「それは、」
「レナートのせいじゃない」
「——!」
「なぜ違ったのか、それは俺にもわからない。多分一生わからない。けど、こんな思いは二度としたくない。あんたにも、二度とさせない」
そしてダニーはふと、気がつく。
ダニーは——嫉妬していたのだ。こいつの方がリーダーにふさわしいと、レナートに言わしめるミハイルに。死してなお、レナートの表情を変えさせるミハイルに。彼にできて、なぜ自分にできないのか。ある意味で彼のほうが、人としては魅力的だったのではないかと、そんなつまらないことまで考える。
「ダニー、」
「——僕は、」
「もう、髪を切るのは最後だ、レナート。あんたを泣かせるようなことは二度と起きない。おこさせない」
レナートは、表情を変えた。
「それなら——僕と約束しろ、ダニー。二度とここから死者を出さないと。お前は絶対に、僕より先に死なないと!」
ダニーはふ、と笑みを浮かべる。
レナートは静かに息を吐いて、今まで髪を言っていた金の飾りを、ぽいとダニーに投げてよこした。
「僕のだ。大事なものだ。お前に預ける」
「レナート、」
「今はまだつけられる長さじゃないが——いずれ必要になるだろう」
ダニーは受け取ると、ギュ、と握りしめた。
言いようのない感情が、胸の中に生まれるのを感じる。温室育ちのエリートだろうが、スラムで育った薄汚い孤児だろうが、そんなことは関係ない。同じ人間である限り、感情を通わすことに違いなどあるはずがなかった。レナートは、一度だってミハイルやダニーを心から格下に見たことなどなかった。ミハイルだって、きっと心の奥ではそれを信じていたに違いない。けれど歯車が壊れ、物語は悲しい結末に向かってしまった。
ダニーはそして、ポケットにしまっていた銀色の小さな塊を、レナートに投げる。
「これ、は」
「ミハイルの私物だ。埋めずにとっておいた」
「——遺体から回収したのか」
ダニーは答えなかった。
ミハイルがつけていたペンダントを握りしめ、レナートは淡く笑う。
「まったく。油断も隙もない」
「あんたに言われたくない」
レナートはジャケットのポケットに突っ込むと、「そうだな」と言った。珍しく反論しなかった。
喪失感はやがて薄れ、また日常に戻るのだろう。それでいい。悲しみに沈んでばかりでは前に進むことはできない。けれど、互いの伸びかけの髪を見た時、きっと思い出すだろう。
ダニーはふと、窓の外を見る。
——ああ、やっぱり。
外の世界は。
燃えるような、夕暮れだった。
(了)
お付き合いいただきありがとうございました!すごい、終わった瞬間にハートもらえるの嬉しいですね。ちょっとあまりにもうっている速度と反映速度かおそくて、シリアスなシーンでとんでもない誤字をするのがどうしても耐えられず・・・これだけ長い話はもうやらないかもしれません。
今回の話は加筆修正してどっかにあげます〜!
ではまた。