#name#が脚を駄目にしたのだと聞いたとき、鋼鐵塚は「なんだ、死ななかったのか」と思った。あの気性である。傷を負って引き下がるような半端な真似をするくらいならば、首だけになっても鬼の喉元に食らいつく男だ。
 あの激情と怒りを不具となった体に封じ込めておけるとは思えない。そういう隊士の末路を、鋼鐵塚は子守歌のように聞かされ続けてきた。目の当たりにもした。廃人になるか、死ぬか、どちらかだ。鬼殺隊士という生き物は、大概がそういうものであった。
 多少なりとも惜しいとは思った。#name#は鋼鐵塚の打った日輪刀を、それなりに上手く扱った。#name#は喧嘩のやり方を心得ていて、つまり有効な凶器とそれを繰り出す時機に聡かった。それに、鋼鐵塚の人間性に付き合えるという点でも#name#は稀有だった。誰もが――鬼殺隊士であってさえ――理不尽な逆上は耐え難い。怒り喚き散らす鋼鐵塚に同じだけ噛み付くことの出来る#name#の気性は、少なくとも鋼鐵塚にはやりやすかった。尤もそれは同じことが#name#にも言えたが。
 鋼鐵塚が一本立ちして初めて担当した山繭白瀬に作刀を断られ、#name#に振り分けられて以降、鋼鐵塚は同じ隊士に三本と刀を打っていない。担当を命じられた新人隊士の半数は早々に鋼鐵塚の癇性に音を上げ担当替えを申し出た。半数は死んだ。それに関しては一概に鋼鐵塚だけを責められるものではないかもしれない。鋼鐵塚にとっては初めて長く受け持った隊士である#name#が追いかけまわそうがぶん殴ろうが腹に空いた大穴を平手を入れようがめげずに食らいついてくるものであるから、常人はそうもいかないということをいまいち飲み込めずにいる。
 鋼鐵塚は#name#のことは結構好きであったが、それは彼が己の刀を振るうからだ。#name#個人がどうかといえば、ムカつくチンピラだな、と思っている。鋼鐵塚は#name#と刀のこと以外について話したことはほとんどなかった。下の名前は辛うじて覚えたが、姓がどうであったかは知らない。聞いたが忘れたのかもしれないし、そもそも聞いていないのかもしれない。どちらでもよかったし、どうでもよかった。だが、隊士になった理由くらいは聞いておいてもよかったな、とふと思った。
 思っていたところに#name#が跛足を引きずり家にまで押しかけて来た。顔色が悪いうえに、その顔には鋼鐵塚の記憶にはない傷が刻まれている。地面を抉るほど力強い踏み込みをした右の脚は頼りなく地面に下ろされているだけで、#name#の背後には左右非対称の奇妙な足跡が伸びている。
 別れの挨拶ならば、無駄なことだ。鋼鐵塚は#name#に多少の愛着はあったが、刀を打たなくなればすぐに忘れるだろう。#name#の存在は鋼鐵塚の鍛錬技法の中に僅かに息づくだけになる。完全に手元の刀に意識を奪われていた鋼鐵塚に、#name#は「片輪でも戦える刀が欲しい」と言った。そうか、と思った。それならば話が変わってくる。隻脚である分、体への負担を減らして短く、薄く、軽い刀身にするか。機動力がない分、一撃を重くするか。刀の形にこだわらず刃のある別の武器を模索すべきか。素材に工夫の余地はあるか。刀で脚の機能を補うことが可能か。鋼鐵塚の脳裏を幾通りかの案が浮かんでは消えていく。
 里の者に頼まれていた刀の研磨には集中しながら、鋼鐵塚は歯噛みする。試したいことはいくつか思い浮かんだ。傷を負ってすぐその話が持ち込まれていたならば、今この場で#name#に刀を抜かせられた。脚が利かなくなってからこちら、一体何をしていたのだ。まさか寝ていたわけではあるまいな、と眉をひそめる。鋼鐵塚の頭に「重傷で寝ていた」であるとか「隊士を続けることに葛藤があった」などという配慮はない。
 「来るのが遅ェ」とだけ唸れば、常であれば鋼鐵塚の胸倉の一つも掴み上げるであろう#name#がやや息の上がった声で「うるせえ」と呻いた。そこで鋼鐵塚は「あ、こいつ本当に脚をぶっ壊したのか」と遅ればせながらささやかな衝撃を受けた。
 刀を置き、立ち上がり、襷を外しながら#name#の立ち姿をじろじろと眺める。それから#name#にずかずかと歩み寄ると、杖代わりによりかかっていた#name#の日輪刀を力づくで取り上げた。#name#は短く声を上げ、よろけて三和土に尻餅をつく。一瞬呆気に取られて鋼鐵塚を見上げたが、すぐに歯を剥いて怒った。顔面の傷が引き攣れ、唇を捲りあげる。
「はァ!? ふっざけんなよ、なんなんだテメエは!」
「テメエこそ俺が打った日輪刀を杖代わりたァいい度胸だ。もう一方の脚も腐って落ちりゃいい」
「言うか! そういうことを!」
 怒りを通り越して半ば呆れたように#name#は声を荒げ、玄関先の砂利を掴んで鋼鐵塚に投げつける。角のない小さな玉砂利だが、#name#が一切の手加減なしに投げたのでそれなりに痛かった。だが鋼鐵塚が#name#の真正面に立っていたので、鋼鐵塚の胸に当たった砂利はばらばらと動けぬ#name#の顔面に降り注いだ。
 鋼鐵塚はそれを火男面越しに見下ろす。
「ばかか、お前は」
「うるせえよ殺すぞ」
「だから傷が絶えねえんだな……お前の傷はばかの証なんだな」
 鋼鐵塚は三和土にふてぶてしく座り込んだままの#name#の、ぐにゃりと投げ出された右脚を足で踏む。#name#は顔をしかめたが、何も言わなかった。そのまま徐々に体重を乗せていく。鋼鐵塚の足の下で#name#の脚がみしみしと軋んだ。鋼鐵塚は鼻を鳴らす。
「全く動かないな」
「まあな。ついでに言えば多少は痛むからさっさと退け、タコ」
「痛むのか?」
「痛くはねえけど、痛いんだろうってのは分かるな。ケツのあたりがぞわぞわする」
 ふうん、と鋼鐵塚は目下の#name#を見下ろす。#name#は右脚を抱え込むように引き寄せると、鋼鐵塚に手を差し出した。傷と胼胝だらけの手のひらを、鋼鐵塚は胡乱な目で見た。
「なんだ」
「このまま放っておく気か。立てねえんだよ」
「態度がデケえんだよ!」
 悪態をつきながら、鋼鐵塚は#name#の手首を乱暴に掴むと引っ張り上げる。引きずりあげるように立たされた#name#は目を丸くして鋼鐵塚を見る。短い付き合いではないが、鋼鐵塚は#name#のそういう表情を初めて見た。
「ンだ、その顔」
「…………俺ァ刀寄越せって手ェ出したんだよ」
 鋼鐵塚は#name#の手首を握る己の右手と、#name#の日輪刀を握る左手を順に見る。それから刀を丁寧に壁に立てかけると、#name#の手首を掴んだまま空いた左手で#name#の顔を殴った。さすがにそれは避けられ、鋼鐵塚の拳は空を切る。
「俺の、刀を、杖に、するんじゃねえ!」
ねむいわ
飽きたし
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やまの
ハートボタン、クッキークリッカーみたい
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のろ
あ、このハートはそういう
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ななし@ff4fc3
大穴「を」で合っていますか?
53:33
ななし@c17e9a
頑張ってください!!!!!好きです!!
56:22
のろ
あざすあざす
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