鋼鐵塚は己の手の下の#name#の背中の筋肉が強くうねるのを感じる。失った下肢の機能を補うように#name#の上半身は短期間で厚みを増した。だが上肢と下肢ではもとから備わる筋肉の量が違う。いくら上肢を鍛えたところで、以前と同じようにというわけにはいかない。
では以前と異なる戦い方は、と鋼鐵塚は面の下で眉を顰める。
「刀を重くする。構わねえか」
「どの程度だ」
「最低で倍」
#name#は振るっていた刀をだらりと下げると、振り向いて鋼鐵塚を睨む。もとより#name#の刀は長く、厚く、重い。打刀の規格を超え太刀に近いものだ。
「殺す気か」
「死ぬ気で振れ」
「殺してやる」
#name#は吐き捨てるなり脇に放っていた鞘を片足立ちで腰を曲げ拾い上げた。鞘を杖代わりにすることを、鋼鐵塚に何度怒鳴られようと#name#はやめなかった。木工の出来る職人は里に腐るほどいるのだから杖の一本でも作らせろと言えば、#name#は「杖なんか持ち歩けるか、ジジイじゃねえんだ」と言い放つので馬鹿々々しくなった。
鞘に体を預けながら、#name#は鋼鐵塚に歩み寄る。傷だらけの凶相にぎゅっと皺が寄った。
「テメエは俺をぶっ壊す気か」
「知ったことかよ、もうぶっ壊れてんだろうが」
鋼鐵塚が言えば、#name#は野犬が牙を剥くように笑う。
「ちげえねえわな」
それから、ふと表情を曇らせる。
「どうでもいいけど、おまえめちゃくちゃ汗臭い」
鋼鐵塚はこめかみに青筋を立てると拳を#name#の頭に振り下ろす。#name#は少し首を竦めるだけでそれを避けた。
「テメエには言われたかねえよ! なんか濡れた犬みてえなニオイがすんだテメエは!」
「はァ!? ンなわけねえだろ! 毎日湯治させられてんだぞ――あっ、おい! 言い逃げか!? 待てコラ!! 臭くねえよ!!」
鋼鐵塚は言うだけ言うとギャアギャアと喚く#name#を置いてその場を後にする。湯を浴びて着替え家に帰る頃には日も傾きかけていた。
開け放たれた雨戸の縁側で、#name#は刀と鞘を抱えるように眠っている。西日を受けた頬の傷が濃い影を刻む。頬骨の目立つ顔は、だがいまだどこか幼さを残している。隊士として幾度もの修羅場をくぐったとはいえ、その傷んだ肉体は二十そこそこのものでしかない。鋼鐵塚は鼻を鳴らし、#name#の肩口を蹴りつけた。
「起きろバカ」
「――るせえな、寝かせ……」
#name#は鋼鐵塚を見上げると眉間に皺を寄せる。
「誰だテメエ、人ん家に何の用だ」
そう言うので鋼鐵塚はとうとうこいつは記憶力までどうかしたのかと呆れ果てたのであるが、己が面を外していたことを思い出した。