この国の空は、いつだって薄墨色に染まっている。
もくもくとした煙があたりに立ち込める中、僕はひたすらに街を走る。スラム街を抜け、歓楽街を抜け、住宅街を抜け。そうすればようやく、城下町を囲う塀が見えてくる。その塀は高くそびえ立っており、何処かで聞いた噂によればどんな火薬でも壊れないという。まさに鉄壁だ。造りはどう見ても煉瓦だが。
「おはようございます!」
いつも通り元気よく挨拶をすれば、門兵たちが「ヨアヒムか。おはよう、今日もご苦労さま」と言葉を返してくれる。外から城下町に入るには、門はふたつしかない。ひとつは、「王国騎士団」が警備を担当し、王侯貴族が使用する門。もうひとつが僕がいつも使っている、この門である。ここに配置されるのは、警備隊」という組織の中の「門兵」である。
「門兵さんたちも、ご苦労さまです!」
「ははは、ヨアヒムは元気だな。……お、もうこんな時間だぞ。早くフェリックス先生のところに行かなきゃ、また怒られるんじゃないか?」
そう言われ、城下町の真ん中に立つ時計台を見上げれば時刻はすでに九時。たしかにこのままでは遅刻である。
「またって、僕はそんなに怒られてないですよ!……でも、行ってきます!」
「ああ、行ってらっしゃい。ちゃーんと修行して、立派な人形師になるんだぞー!」