衛が冷蔵庫の前で固まっている。
どうしたのだろう、とは思うがしばらく見守ることにしてみた。俺がいるのに気付いてはいると思うが、ひたすら腕を組み、うーん、と唸って首を傾げている。
此処から見ていると面白いし、可愛らしい。
「衛、何を唸ってるんだ?」
「あー……先程……冷蔵庫の中に……」
「冷蔵庫の中に?」
「ぷ、プリンがあったような……」
「ああ、作ってみたんだ」
「もう少し早く気付けば良かったっ!悔しい……」
わかりやすくショックを受けている。その姿が面白くて笑ってしまえば、恨めしそうに衛は俺のことを見てくる。そんな顔をしても可愛いだけだと言うのに全く……
「どうせなら明日まで見えないようにしておいてよぉ……」
「それは無茶な相談だな」
「うぅ……わかってるけど、わかってるんだけど……!」
「一口食べるか?」
「もう夜!夜中!時間が……」
恨めしそうな衛が気にしている時間。現在夜の23時。まもなく日付を越える。
そんな時間に甘いものを食べれば明日に響く……のだろうか?衛はそんなに影響しないような気もするが、我慢は確かに大切だと思う。
それに先程、しっかりと歯を磨いていたのを俺は目撃している。芸能人は歯が命!なんてデビューした当初から言っていたからな。
「どうする?食べるか?」
「こ、コウくんが鬼のようだ……」
「俺としては衛のために作ったから問題はないぞ?」
「そんな誘惑するようになったなんて……」
戸惑う様子も可愛らしい。けれど、瞳が揺らいでいるし、誘惑に負けそうになっている。その証拠にちらちらと冷蔵庫を見ては、俯いたりしている。素直に『食べたい』と言えば良いのにな。
けれど、そんなところが衛は可愛いから困る。
「じゃあ、衛こうしよう」
「な、何?」
「今日しっかり我慢出来たら、明日仕事が終わったらこのプリンに果物を乗せてやる」
「えっ!?」
「プリンアラモードにしよう」
「我慢する!」
「早いな」
あまりの早さに思わず吹き出しそうになる。
プリンアラモードにそこまで食いつかれるとなんだか本当に可愛く思えてしまう。
果物、と言ったが缶詰はあっただろうか……
無ければ明日買ってこないといけないな。
そんなことを思っていると、冷蔵庫の前にいた衛が俺の近くに寄って来て、ぺたん、とソファーの前に座り込む。どうしたのだろうか。
「どうした?」
「あ、あのさ……」
「うん?」
「プリンの上に、生クリームと……あと、さくらんぼ……乗せてね……?」
そんなことを狙ってなのか、何なのか上目遣いで言われてしまえば何も言えなくなってしまう。
いや、これで何か言えるやつがいたら見てみたい。プリンの上に生クリームとさくらんぼを乗せて、とねだる大人がこんなにも可愛いとは……
いいや、衛だから可愛いんだろうな。
大きく深呼吸をして、自分の気持ちを落ち着けてから衛のふわふわの髪を撫でてやれば、くすぐったそうに目を細める。その仕草がまた可愛くて…
「必ず、乗せたのを作る」
「ありがとう!コウくん!」
衛はそう言うと立ち上がって俺の頬にキスをしてくれた。呆然とする俺を放っておいて衛はいそいそと浮かれた足取りで寝室に行ってしまった。
なんてことをしてくれたんだろうか……
ひとまず、ストックしてある缶詰を確認してから俺も寝室に行こう。
時刻はまもなく0時。
明日の楽しみが出来てしまったな。