男、まあ話を聞いたところ精霊は生殖しないので正確には無性なのだが便宜上これからは彼と呼ぶ。彼は死体が懐に仕舞っていた宝石に宿る精霊のスーフェだと名乗った。
「いや、真名、本当の名前は別にあったはずなのだが、あまりにも人間に接していない時間が長すぎて忘れてしまった」
「しかも私は色々と欠けていてね。本来の私は剣だったはずなのです」
「剣…?」
 彼の本体?の大粒の宝石はどうみてもネックレスのトップだった。
「そう!前の契約者が死んで、少し眠っている間にどうやら私、元いたところから宝石だけを盗み出されたようなのです。気づいたらご丁寧にネックレスに加工されていまして。腹が立ったのでその屋敷の人間を呪い殺したのです」
「は?」
「その屋敷の人間を呪い殺したんです」
聞き違いだと思いたかったけど聞き違いじゃなかった。
「呪い殺した後に、あれ?そういえば全員殺してしまったらこの屋敷から動けないぞ?と気付いたんですけどまあどうしようもなくてそのまま転がっていたら、すぐに盗賊が押し入ってきましてね。そのまま私を盗みました。初回で反省した私は皆殺しにしないように気をつけつつ、色々な人間の手を渡り歩きました。私は比肩し得る存在などない、この世で最も美しい宝石。多くの人目に触れていればいつの日か私の出自に気付き、元の姿に戻れると思い日々を嵩ね…」
「最後に失敗して危うく森の中で朽ちるところだった、と」
「何を言うのですか!貴女という隠世の瞳を持つ人間に出会えたのです!私は最善の行動をして、運命を打ち勝ったのです!」
「いや、わたしがか、か…よ?の瞳をしていて、あなたみたいな精霊が見えても、わたしは田舎の村娘だし、あなたの元居た場所も分からないのに連れて行ってあげることなんてできないよ?」
「いえいえ全くそんなことはありません!田舎娘の貴女に見る目がないのは致し方ありませんが」
「おい」
「ありませんが、私は世界一の宝石。見る目があるものには私の価値は一目でわかります。今すぐにとも、タダでとも言いません。ですから、貴女が成人してからで構いません。私と栄えている都市で最も優れた宝石商の元に持ち込んでほしいのです」
「それだけでいいの?」
「いえいえまさか!『それだけ』なんて簡単な事ではありません。私は精霊ですが長く人の世を見渡してきました。人の社会や習性にも詳しいのですよお嬢さん」
「ただの村娘が私の様な価値のある宝石をただ持ち込んではいさようならという訳にはいきません。他にも宝石を持っているのではないかと絡まれたりするに違いありません」
「確かに…」
「もちろんこの辺鄙で寂れたド田舎から栄えた都市に行くのも、旅費の事だけを考えてもだたの村娘のお嬢さんにとってはとてもとても大変な事であると、私きちんと理解しています」
「ですから、私と契約して欲しいのです」
「そうですね…取り敢えずは私は貴女が成人するまで健やかに過ごせるよう全力を尽くすことを誓いましょう。その代わり、成人した暁には貴女が可能な限り格の高い宝石商に私を託してくださいませんか?」
「…すこやかに、って具体的にはあなたはどんなことができるの?」
「ふふふふ…。私はこの世で最も美しい宝石。格調高く存在値の高い存在です。有象無象の宝石は皆私にひれ伏します」
「つまり?」
「つまり、他の宝石を操り、情報収集や敵を呪い殺したりできます」
「コワッ!」
「まあ呪い殺すためには条件が揃っていないといけませんので…専ら情報収集ですね」
「…まずさぁ、村娘の周りに宝石持ってる人なんてそうそういないんだけど」
「………」
「………」
「…あとは剣…刃物もある程度操る事が出来ます」
「ある程度?」
「例えば、暴漢が貴女を剣で切り殺そうとしたとして」
「そのシチュエーション、人生で一度でもあってほしくない」
「切り殺そうとしたとして、その軌道を逸らしたりできます」
「それって締め殺されたりしそうになったらどうしようもなくない?」
「貴女が剣を使うのを補助することもできますよ」
「とっさに切れる気がしない」
 どれもこれも私の人生で活躍しそうにない能力だ。
「じゃあ、これが一番重要なんだけど」
 そう思ってるのが顔に出ていたんだろう、苦い顔のスーフェに問う。
「はい。なんでしょう?」
「契約したとして、もし、私が成人前に死んだり、成人しても宝石商にあなたを持ち込んだりできなかった場合はどうなるの?」
 スーフェは、本当の本当に愉しそうに笑った。長い年月を生きたというその自己紹介に違わない、吸い込まれてしまいそうな、本体と同じ色の瞳が、深く、重く、輝く。
「ああ、本当に、貴女と出会わせてくれた運命の神に感謝しましょう。貴女は本当に思慮深く、得難い人間です。私は是非貴女と契約したい」
「ふふふ。そう、不履行の場合ですね?そう、それを聞いた貴女は本当に正しい。まともな精霊に人間の都合は理解できません。私でなければ、貴女は成人と同時に精霊に召し上げられていたでしょう」
***
「まあ、それを聞かなくても私は『良心的な』契約を持ちかけていましたけどね?私は世界一の宝石。人に視線を浴びて光り輝く存在。有象無象の馬鹿な精霊どもとは違って善良で公平な契約をしますとも」
「私は『貴女が成人するまで健やかに過ごせるよう全力を尽くす』と言いましたね。ですので、成人までに貴女が
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創作ネタ出し作業

とても徒然なるままの作業風景です。
執筆開始 : 2019年12月08日 20:48
最終更新 : 2019年12月08日 22:17

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