どう考えてもおかしいと思ったんだ。豊前は昔からそう。大事なことを最後にもってくる癖、変わらないよね。いや、もしかしたら豊前にとっては大事でも何でもなかったのかもしれないけど。
「久々に会ったし、飯でも行くか?」
高校時代、僕と豊前は付き合ってた。身体の関係こそなかったけれどそれ以前のことはだいたい済ませたし、なにより。僕は豊前がたまらなく好きだった。性別の壁なんか飛び越えて、勝手に口から好きだって盛れるくらい。僕の言葉に驚いたように目を見開いて、それからゆっくり破顔する君の事が。俺も、なんて嬉しそうに。そこいらの女の子達の初恋なんか余裕で奪う癖に。女の子より可憐な顔をして笑うんだ。誰よりも好きだった。なんなら家で管理してた畑より好きだった。でも。高3の冬、僕達は別れた。なんでかはよくわからない。僕が地方に行って離れてしまうから、それなら、と。豊前がそう言った。僕は豊前がそうしたいならと特に反論をしなかった。その時の豊前はどんな顔をしていたっけ。傷ついた顔をしていたら、良かったのに。君はいつもみたいに笑うだけだった。じゃあな。いつもの通学路、呆気なさすぎる最後だった。それから幾許。いや数年。僕は地方の大学を卒業して住み慣れた都会に戻ってきた。こちらで就職すると決めた、そう伝えたかった相手は既に連絡先を変えていた。就活ですっかり慣れてしまったスーツも新しいもので、晴れて新生活。心はあまり晴れなかったけれど新天地には変わりないのだ。そんな想いで足を踏み入れた場所に、君はいた。久しぶり、そう言って笑う表情は少しだけ大人になっていた。
「いいね、どこ行く?この辺り変わっちゃってお店よく知らないんだよね」
断るわけが無かった。嫌なわけないし、むしろ心は超弩級ハッピーだ。なら俺が知ってる店行こう。嬉しそうに、どこか安心したように言う君に。少しだけ、本当に少しだけ、また君に。
「豊前」
まぁそんな期待は脆くも崩れ去った訳だ。
「え、あれ、なにしてんの?俺ここいるって言ったっけ」
豊前が教えてくれたお店は安価だけど味は確かな居酒屋だった。店構えは古めかしいけれど中は小綺麗で居心地がいい。そんなお店で飲み食いして、時に昔の話をしたりして。楽しく過ごしていたのだ。それを、それを!!
「長谷部から聞いた、飲み行くって言ってたからあそこだろうって」
誰だ、誰なんだこの突然現れた大男は。こちらは座っていることを加味しても相当でかいぞ。しかもめっちゃ見てくる。なんか凄い、すごい睨まれてるよ、これ多分気の所為じゃない。
「なんだよ、ストーカーか?」
「そりゃあ、ストーカーしたくもなるわなぁ」
恋人が昔の男と一緒だってんだから。まて、いや、いやいや、まって、いやほんとに無理。静止の言葉しか浮かばない。思考停止もいい所だ。なんて?なんて言ったん?恋人?…恋人!?!?
「おま、」
「なんだよ、恥ずかしがらなくていいだろ?こいつもこっち側なんだし」
男がぐい、と豊前の腕を引いた。無理やり立たされた豊前はよろけて、男に寄りかかる。寄りかかってきた豊前をしっかりと支えた男はにやり、笑った。
「こいつの今のカレシだ」
妙な気起こすなよ?男は豊前を連れて店を出た。残された僕は…泣いた。普通に。無理だろ。いやだって。
男に抱き寄せられた豊前は見たことの無い顔をしていたから。
 僕は明日、男が直属の上司であることを知る。僕、前世で何か悪いことでもしたんだろうか。
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卵食

published byあきよし
執筆開始 : 2019年11月20日 00:14
最終更新 : 2019年11月20日 00:59

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