ノープラン。
悪路。
舗装も碌にされていないでこぼことした道は、幾ら最新式の蒸気車をもってしても凄まじい振動を伝えてくる。主にケツに。たまに大きめの砂利を踏んだ時などは一際に車体が跳ね、したたかに身体を座席にぶつける。最悪だ。こんな場所を走る為に愛車を手入れしていた訳ではないのに。くそ。何でこんな目に。やってられん。ぶつぶつと口からは悪態が零れて尽きることはない。
だというのに。
横目で助手席を見る。
こちらが必死でハンドルを握り、暴れ馬の如き愛車を宥めつつ走らせているというのに、助手席に収まっている女は涼しい顔で周囲に視線を巡らせていた。
そもそもは、この女が元凶なのだ。こんなことになったのは。
足の代わりになってほしい、と結構な額の金を積まれた時に怪しむべきだったのだ。
そう年を重ねているでもない、世間知らずのお嬢様。そう高を括ったのが大間違いだった。
この女を乗せて走って、少しして。
あっという間に追手がかかった。
背後からは荒っぽい蒸気機関の音と、罵声。随分と粗野な追手のようだ。
女はしかし、涼しい顔で助手席に収まっている。
「そのまま。走り続けて。大丈夫だから」
平静そのものの声でそう告げて、こちらが少しでもブレーキを踏もうとすれば咎めるように大きな瑠璃色の瞳でこちらを見つめてくる。
眠くなってきたので今日はここまで。