ワードパレット 性的「桃」「背中」「強く脆い」
 木箱いっぱいに桃を詰めて、彼女に会いに行った。
「まぁ」
 彼女はにこりと笑う。
「私アレルギーなの」
 ずしりと、木箱が重くなる。
「なんか、花粉症の兼ね合いで」
 彼女は笑いを崩さずに、意外なほど力強く木箱を受け取った。
「ありがとう、桃のジャムにしてお友達に配るわ。あなたも食べるでしょ?」
 複雑な気持ちを抱えながら、僕は頷いた。
 その日僕は告白して、彼女と付き合うことになった。
 彼女とは大学の同会生で、最初、すごく遠くに感じていた。
 一限、いつも一番最初に席についていて、しゃんと背筋を伸ばしていた。明かり窓から差し込んだ光が彼女の首筋に差していて、その白い肌が日焼けしてしまうんじゃないかと、はらはらしながら見つめていた。
 僕と彼女はすごく数の多い同じグループに属していた。十人単位で食堂でご飯を食べる。二人とも地味な方なので端っこの方で食べるから、よく向かい合っていた。二人とも黙々とご飯を食べていたが、微笑みが行き交ったこともあった。頬っぺたは桃の様にすべすべで、自然な桃色に色づいている。
 ポジションという意味では近かったのかもしれない。僕も彼女も休まず講義に出ていたし、レポートの成績も良かった。それなのに、これといった会話がなかったのはお互い聞き手に回りがちな性格のためだろう。僕はその静謐な距離感に心地良さを感じていた。彼女もきっとそうだったと思う。
 大学二回の新緑の頃、一限の講義に出ると、いつも彼女が座っている席が空いていた。珍しいこともあるものだなと思いながらも教授の話を聞いていた。季節外れの強い台風の影響で、鈍く頭痛がする。こつこつと、指でノックするような痛みから扉をドンドンと叩くような耐え難い痛みになる。聞こえてくる内容はうまく組み立てられずに空中分解していき、止むを得ず席を立った。
 自動販売機でミネラルウォーターを買って、頭痛薬を流し込む。校舎を出たところにある屋外の休憩スペースにはコデマリがウッドテーブルとベンチとを囲むように咲いている。何気なく向けた視線の先――ベンチに座っている人影を認める。
彼女が一人で座っていた。何かを食べているようだが、こちらからは良く見えない。近付いていくと、彼女は視線をあげてこちらを見た。
「あ、おはよう」
「おはよー」
 少し気まずそうな顔をしたが、いつもの柔らかな笑顔に戻る。テーブルの上に並べられていたのはお菓子類だった。チョコレート、輸入菓子、知育菓子等、それらがUFOキャッチャーの景品みたいに彼女の前に積まれている。それはある種異様な光景だった。
「座ってもいいかな?」
 だから自分がどうしてそんなことを言いだしたのか分からない。彼女について知りたいと思ったのか、甘いものを食べたいと思ったのか。
「いいけど、大丈夫? 顔色が悪いけれど」
「薬飲んだから平気だよ」
「そう? チョコ食べなよ。元気になるよ」
「ありがとう」
そう言って受け取ると、彼女はにっこりと笑った。
「……講義、受けなくていいの?」
「たまにはいいんじゃない? お菓子パーティしてたの」
「……一人で?」
「私パーティって一人でしかしたことないの。呼ばれないのよ、そういう催しに」
「まぁそれは、僕もそうだけど……」
 『ちょっとしたパーティーに最適!』のちょっとしたパーティーとは何だろうとよく思う。
「気が合うわね」
 彼女は何でもない顔でチョコレートを口に放り込む。舌の上でじっくり味わっているようで、口の端には笑顔が浮かんでいる。
「どこにいても一人とか。誰といても孤独って感じることない?」
 藪から棒にそんなことをいう。さっきまでコデマリを漫然と眺めていた瞳はこちらにまっすぐ向けられている。
「ままあるね」
「あなたは自分の孤独になんて名前を付ける?」
「名前?」
「そう。記名して向き合うものでしょう?」
 頭を抱えてしまう。何か気の利いた言い回しがあればいいんだけど、うまくいかない。幾分引いたが頭が痛いのだ。
「考えたこともなかった。漠然と感じる馴染めなさとか、異物感とか」
「もっと抽象的に」
「面白いことを言うね。普通日常会話では具体的にというものだけど」
「そう? じゃあ宿題ね。今度私の家に遊びにおいでよ。美味しいチャイを入れてあげる」
 彼女はそう言って、スマホで住所を送信した。そんな気安く女の子の部屋に行ってもいいものなのだろうか。
「私はね。自分のことを鏡だと思うの」
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33:05
ななし@75d32a
おはようございます。景石です
34:10
おはよー
60:48
ねじねじへ、ヒロインと主人公の名前を決めて下さい
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向き
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性的
初公開日: 2019年10月18日
最終更新日: 2019年10月25日
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相互様より貰ったワードパレットから掌編を書くよ
性的
「桃」「背中」「強く脆い」
※全年齢向けです★