「ふぅん。親ね」
 式がつまらなそうに呟く。その白い顔に斜陽が差す。常に暗闇がただよう三十一町の奥に位置する奴隷市から、一本道をずいぶん上ってきたようだ。
 しばらく無言が続き、辻道に差し掛かったところでふいに景國が口を開いた。
「式。この先はどう行く」
「は?」
 式は胡乱げに聞き返してから盛大なため息を吐いた。
「代われ。……あんたが東西の概念も希薄だってのを忘れてたよ」
「方角ぐらいは理解している」
「知ってらァ」
 式は威勢よく舵を左へきった。
「そも、運転はお前のはずだ」
「はいはい。悪うございました」
 対照的な二人の応酬が続き、一同の乗る舟は、町境ごとに置かれた関所へ辿り着いた。
 この国においてそれぞれの町への行き来は厳しく、特に下層の者が上流層である町へ用もなく出入りすることは原則として禁じられている。
 関所番に通行証を手渡した景國がふと上を向いた。
 そこには巨大な木の根が蛇のようにうねっていた。地に横たわる根は大人が十人縦に並んでやっとと言うほどの高さがあり、焦げ茶色の樹皮はゴツゴツと硬く生命力に満ち溢れていた。
 その木の根の、大きく波打ったせいでできた地面との隙間に各関所は作られている。
 通行証を確認した番は素っ気なく一同に道を開けた。
 長い隧道《ずいどう》をゆっくりと進む。暗く湿ったそこは、しかし先へ行くごとにかすかな大勢の気配を感じさせた。ここを抜ければ三十町である。辺鄙な場所ではあるが、ひとつ町を越えるだけでまるで空気が変わるのだ。犯罪の蔓延る三十一町と違い、平和に守られた長閑な村だ。
 キイキイと回る車輪ははじめより動きが鈍くなっており、夜明の光も少しずつ弱まっている。それを確認した式は、振り向かぬまま後ろに確認を投げる。
「車屋から飛び車でいいか」
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05:30
こんにちは、甲池幸です
06:07
深由
こんにちは!
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樹の王
初公開日: 2019年06月22日
最終更新日: 2019年06月22日
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眠たい