気づけばもう10月も終わってしまうのでどんどん書いていきましょう紅楼夢戦利品レビュー。
・魂魄妖夢はカッコいい(北国もやし製造所)
厳密には秋季例大祭新刊ですが今回の紅楼夢で入手したのでここで紹介。
毎度おなじみのチルノ大好きなサークルさんによるフルカラー本。今回の主役はタイトル通り妖夢。
大切なご主人様である幽々子様を守れる強くてカッコいい剣豪を目指す妖夢。しかしその実態はGに涙目になってしまうへちょへちょっぷり。
しかし、そんな妖夢に転機が訪れます。チルノが持ってきた呪物図鑑に封じられていた魔剣、その名も「ドラゴンブラックファイアーソード」を手に入れた妖夢は、中二病フルアーマーモード妖夢と成り果てて狼藉の限りを尽くします。保護者である幽々子様はそんな妖夢に戸惑い気味。
さて妖夢の中二病はどうなってしまうのか!
東方二次創作において、妖夢は一時期なんかやたらと名探偵キャラにされがちな時期がありましたが、中二病キャラもやたら似合うんですよね。
今回も指ぬきグローブ、包帯、魔法陣、眼帯といった中二病フルセットが異常に似合っています。さらには「物語終盤で第2形態に変化する」も完備! そしてこの中二病スタイルがフルカラー漫画に実に映える。あと眼帯を装備してるのが半霊なのが好き。
そして終盤は、その中二病スタイルを十全に活かした本格バトル展開! これまでも何度か書いてきましたが、本サークルさんはいっけんほのぼのギャグ系と見せかけてバトルも非常にうまいんですよね。
本作はA4サイズで判型が大きく、さらに前述のとおりフルカラー。終盤のバトルはこれをフルに活かした大きく大胆なコマ割と原作再現のカラフルな弾幕表現で迫力のあるバトルを見せてくれます。
個人的にバトル系東方二次創作の力量が出るひとつのポイントとして、「原作の弾幕表現をそれぞれの媒体や作風でどのように再現するか」があると思ってるんですが、本作の終盤のスペカと弾幕の応酬はまさに「東方的バトル」と呼べるもので外連味全開でとてもよかった。そして「やったか!?からの決死結界」という原作ゲームシステム再現の決着がまたいい。東方に限らず、ゲーム原作の二次創作でこうしたゲームシステム再現のギミックがあるとオタクは大喜びなのでもっとやって。
かように本作は中二病真っ盛りの妖夢のドタバタ劇&バトルであるとともに、妖夢の成長物語でもある……と見せかけて、実は本当に成長を描かれているのは幽々子さまであると見た!
中二病はいわゆるはしか、通過儀礼であり、作中で紫さまが言ってるように「なりたい理想の自分と現実のギャップを形だけでも埋めようとした結果」であり、「妖夢が自分を認められるようになれば自然と治まるもの」なんですね。
……ということを、幽々子さまが理解する物語なんですよ本作は。ラストバトルのあと、霊夢が「あとはあんた『達』の問題」と言ってるのもそういうことだと解釈しました。
幽々子さまは言うまでもなく幻想郷屈指の実力者であり、守る守られるの話であれば別段守られなければならない弱い人物ではない。なので、自分を守れるくらい強い剣豪になろうとしている妖夢に対しても「ほほえましい」「かわいい」くらいの感情しかないんですよね。
しかしラストバトル後、ドラゴンブラックファイアーソードの語りと妖夢のこぼした言葉から、幽々子さまは妖夢が必死に強い自分になろうとしているその目的と意味を知るわけです。だからこそ、「カッコいいあなた」ではなく「精一杯カッコよくなろうとしてるあなた」が好き、という言葉が出てくる。「カッコよくなろうとしてる」つまりリザルトではなくプロセスの肯定! これこそ「道」よ!
そしてまた本作でも、「カッコよくなろうとしている」つまり「変化・成長しようとしている、そうすることで自分を肯定しようとしている子供」であるのに対し、相変わらずチルノは一貫して「永遠の子供」「そのままで自分を100%全肯定できている存在」として描かれていると感じました。本作は妖夢が主役ですが、同時に「あたいとげんそーきょー」シリーズのひとつとなっているのはそうした対比もあるんだろうなと感じました。
今日はここまで。