深夜のESで仕事を続けていた茨は一息つこうと席を立つ。
相変わらずハードワークが続いていたが、充実した毎日に生きる糧を感じながら自由にできる夜の都合の良さに気合を入れる。あと少し……一週間後に迫った社外プレゼンの準備を進めておけば、未来の自分に土産ができると事務所に備え付けられた自動販売機のスイッチを押す。
気持ちだけミルクを入れたカフェインを流し込み、さぁ!とデスクに向き合ったところだった。
(ピピピ)
「……殿下?」
携帯端末が示した画面には、日和のフルネーム。今日はEdenとしての仕事も入っておらず、オフを過ごした貴族様の珍しい行動に疑いをかけながら茨はスピーカーボタンを押した。
「出るのが遅いね!」
「いいえ、こんな時間に3コール以内ですから十分でしょう」
「相手がぼくなのに……? まったく偉くなったものだね! 普段、きみの言うことを全てちゃあんと聞いているのだから、ぼくから連絡するときはもっと早くでるべきだね!」
この大嘘つきめ。そんな単語が思い浮かんだが、心に思いとどめてここでは正しい答えを返す。
「……これからは善処いたします。で、なんですか?」
「いい心がけだね! これからも続けるように。うんうん、どうせ茨のことだから、寝てないって思ったんだね! こんな暑い熱帯夜に1人で仕事するなんて悪い日和……それならぼくとお話した方が有意義だって思ったんだよ」
「話……ですか?」
またおかしなことを言い出した。確かにアイドルと並行しての事務作業をこんな深夜まで続けるなんて褒められた行動でないのはわかっていたが、それにしても