クルスナラハを発ったセオたちは、アステライゼに向かった。
陸路を取り、念のために別行動をとった。
本来ならセオとレイアをわけたいところだったが、セオは反対で、レイアは不安そうだったため、セオ、レイア、テイラーと、エディの二手に分かれた。
テイラーは二人の監視だ。
今回は二人の田舎娘を連れた人買いの男という設定だ。
アステライゼは、反カルシア軍が台頭しており、至るところで喧騒が絶えない。
したがってカルシア王国軍も不死身の兵士を投入し、街の雰囲気はかなり悪かった。
そんな場所に旅行に行くものなどいるはずもなく、この設定になった。
セオは女装は慣れており、抵抗もないのだが、レイアの前だと少し恥ずかしかった。
「可愛い」
けれどもレイアはセオのそんな心中お構いなく褒めたたえる。
鬘や衣装は、クルスナラハですでに入手しており、旅の途中で着替えた。
レイアはやはり城の地下でずっと暮らしていたため、徒歩の旅は堪えるため、エディが背負って移動する。
アステライゼの街に入るためには、カルシア王国軍の検問を抜ける必要がある。
二手に分かれ、テイラーがセオとレイアを連れて街の入り口に立った。
「何の用だ?身分証をだせ」
「そんなものはねぇ。いらねぇだろ。この娘たちを売る予定だ。今夜は楽しめるぞ」
テイラーの口からそんな言葉が出るとは思わず、レイアはかなり驚いていた。
けれども村の娘が怯えているだけだと取ることもでき、違和感はない。
セオはレイアの手を握り、安心させようとしていた。
兵士たちは嘗め回すように二人を眺め、下卑た笑い声をあげた。
「可愛いじゃねぇか。怯えているところも最高だ。俺たちの宿舎はアシュレ通りだ」
兵士はあっさり三人を通し、わざわざ宿舎の場所まで説明する。
テイラーは内心呆れながら、こちらも同等に下卑た笑いで返した。
「へへ。ありがとうよ」
アシュレ通りへの道を歩みながら、兵士たちの視線が届かいところまで来ると、方向を変える。
目指すところは貧困街だ。
混沌している場所は、潜むにはうってつけの場所だからだ。
貧困街でもないのに、街全体が暗く閉まっている。
テイラーはどんどん足を進め、時折人買いらしく、セオたちに早く歩くようにとか、指示を出す。
普段のテイラーからは考えられない態度なので、セオは少しテイラーを見直していた。
「くさっ」
セオは思わずそう言って鼻を押さえた。レイアも同様で、テイラーが面倒くさそうに布を二人に渡す。
「それで鼻を押さえろ。少しは匂いが押さえられる」
そう言った彼も匂いには参ったらしく、布を取り出し鼻を口を押えて進む。
やせ細った人が壁によりかかり、うつろな目をしていた。腐った食べ物や、糞尿が飛び散る道。三人は注意深く進む必要があった。
セオはレイアに寄り添う。
そうしてテイラーはある建物に入った。
「ご依頼ありがとうございます。なんでも屋のアリーナよ」
建物にいたのは、アリーナという体の大きな……男だった。
「……これが謝礼です。ありがとうございます」
「ありがとう~。一つ役に立つ情報をあげるわね。チャーリー王が恐らくこちらに来るわ。今はクルスナラハだけど、次の目的地はここみたいなの。クルスナラハで軍の保管庫を襲った賊を探しているみたいなのよね。しかもその中の一人が不死身の兵士を眠らせることができるとか」
「……ありがとうございます」
セオはぞっと心が沸き立ち、レイアに至っては蒼白な顔をしていた。
恐らくアリーナはテイラーたちの正体を知っていて、こんな情報を漏らしたのだろう。
「もし興味あれば、ここを尋ねて。反カルシア軍が集まってるから。お役に立つかもよ」
「どうして、私たちに?」
「うーん。役に立ちそうだから?お互いにね。それじゃあ」
アリーナは手を振ると玄関から普通に出て行った。
「テイラー。あの人は?」
「情報屋です。色々手配も頼める頼もしい人です」
「裏切らないの?」
「それは大丈夫です。あちらにも探られたくないことがあるはずなので、軍に近づいたりすることはないでしょう」
「だったらいいか。とりあえず、今は、女装をどうにかしたい。久々にスカートきたら足がすーすーして気持ち悪い」
セオの言葉に、レイアがうなずく。
「レイアもそうなの?でもずっとスカート着ていただろ?」
「そうだけど。ズボン?に慣れると歩きやすくていいなあって思ったの」
「そうか。じゃあ、これからもズボンを穿けばいいよ」
二人は笑いながらそんな会話をする。
微笑ましい二人からテイラーは目を逸らす。
レイアの願いは不死身の兵士を眠らせるだ。
今のところ、クリスナラハとここアステライゼ以外では不死身の兵士は活用されていない。なので、こちらで不死身の兵士と毒薬を制すれば、彼女の願いは叶う。
そうなると次は彼女を殺すことになる。
さすがにテイラーもこうして一緒に旅をすれば情は湧く。
彼女を殺すことを今は考えたくなかった。