誰もいない駅舎で
導入メモ
雄大な景色を見に来た帰り、最寄りの駅で一時間待ちぼうけをくらう。
一つくしゃみをする。マフラーに、貼るカイロ、全身を隠すロングコートを纏っても、冷たい風が通り抜けると無意味に思える。
「大丈夫?」
彼は立ち上がり、自身のアウターに手をかけた。私に着させるつもりだろうか。
「入る?」
そのままガバっと広げ、変質者のごとく立ち尽くす。返答せずにいると、彼はヘラヘラと笑った。
「じょーだん、冗談。これも羽織っときな」
立ち上がり、彼に引っ付いた。
「めずらしー……」
そっちから言っておいて、ちょっと引いた反応はやめてほしい。
「寒いから。嫌なら離れるけど」
「いやいやいや! 嬉しい嬉しい!!」