1.5メートルのカーボンナノチューブ製のロッドの先端から伸びたナノフィラメントのワイヤーは、昨日と同じように垂直に垂れたまま動かない。
 最初の頃はワイヤーに変化があればすぐに気付けるように全神経を尖らせていたが、今ではこうして地表に網の目のように刻まれたバレーネットワークの縁に腰を下ろしていると、精神状態がだんだんリラックスしてくるようになった。
 第一肢と第二肢でロッドを把持したまま、ぼんやりと視線を上げる。
 その視線のはるか先――3億キロほど離れたところに浮かぶ、青い星。
 「彼女」は、そこからの再訪を待っていた。
 平均温度約-70℃。
 約0.007気圧。
 火星は今日も、いつもどおり。
 「彼女」が初めて「それ」と出会ったのは、もうずいぶん昔のことだ。
 いつも通り地表に出て歩いていると、空の方からなにかが落ちてきた。
 この星で「空からなにかが落ちてくる」というのは大きな変化だ。「彼女」は興味を引かれ、赤い酸化鉄の砂が広がる大地をてくてく歩いていった。
 赤い大地の上に落ちてきたのは、「彼女」がこの火星で生まれてから一度も見たことがないものだったので、「彼女」はさらに強い興味を引かれた。
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後輩へのお誕生日SSを書いていきます。
初公開日: 2026年02月12日
最終更新日: 2026年02月12日
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