「はあぁぁあああ!?!?!?!?」
きんきんと辺りに響く声は案外大きい。ともすれば近所迷惑になりかねないのではないだろうか。いやまあ、こんなところに人が住んでいるのかという疑問はあるが。
……自分で言っておいてなんだが、おそらく誰も住んでいないだろう。あれだけ派手に動いたし、なんなら周囲の物もだいぶ壊してしまった。器物損壊罪というのは、ここでも適応されるんだろうか。
「いやオイ!?!? 何を考えてるんだい君は!?!?」
「……器物損壊罪についてだが。」
「どういう思考回路でそうなるんだよ!!!」
相変わらず手に握ったままの大鎌を指差し、白星によく似た少年……もうこの際白星オルタナティヴ……いや、この名称は何かがまずい気がする。はて、どうしたものか。まあいい、ひとまずは2Pカラーな訳だし、黒星と呼称しよう。とにかく、黒星は驚いたように目を見張っている。人を祠を壊した罰当たりのような扱いをしないでもらいたいものだ。
「はあ……もう良い、考えるだけ無駄か。で、正気?」
「俺は大体ずっとこんな調子だな。」
「ああそう。でさっきも聞いたけど、ドコの所属?」
「お前が言ってるのは、黑祓隊とやらの事か? なら、俺はどこの所属でもない。」
『お前によく似たヤツに連れて来てもらっただけの、正真正銘の一般人だ』と言ってみても、黒星の信じられないようなものを見る目は変わらずだ。それどころかむしろ、悪化したようにさえ思える。はて、何かそんなにおかしな事でも言っただろうか。
ああ、『訓練も受けずに怪異を倒した』だとか、そんな話なのか? だが境内で会ったのより弱そうだし、そもそもこれを握った途端動きがキレたわけで、おそらく俺の実力ではないんだが。
「……まァ、知ってるならソレに手なんて出さないだろうし。この僕が教えてやるから、有り難く思うんだな。」
曰く___これは、呪いの大鎌らしい。まあなんともはや、実にありきたりだ。何やら恐ろしげな単語がつらつらと並んでいるが、生憎俺にはその手の知識がない。必然、“なんかやばい何か”という程度にしか認識できない訳だ。俺の反応でも楽しみにしていたのか、高飛車な彼は業を煮やしたかのように付け加える。
「……要は握った者を死に導く、怪異のカケラで作られた悪趣味な武装さ。どうだい? 驚いただろう。」
「はあ……」
ここでの常識が分からない以上、怪異を使う、というのがどの程度まずい事なのか分からない。まあつまり、俺としては驚くも何もその前提がないのだからどうにもならない。
「なんだ、詰まらんな。もう少しさ、怖がるとか何とかないのかい?」
「わー、怖い。恐ろしい。なんて事だ、俺はとんでもない物を握っていたらしい。」
「一切表情も変わってない上に酷い棒読みだな! せめてもう少しなんとかしたまえよ。」
……条件が厳しいな。うーむ。次はもう少し身振り手振りでも加えてみるべきか?
「ああクソ、僕まで乗せられたじゃないかその可笑しなテンションに!」
「そうか、悪いな。」
頭を掻きむしりつつも、黒星はスタスタと歩き出す。何処へ行くのやら知らないが、ひとまず旅は道連れ世は情け。