・vsチルノ追加分
無防備な背中側から攻撃されたチルノは、ラルバの必殺の一撃をまともに食らってピチューン! ……となるかと思いきや、ギリギリのタイミングでとっさに氷の盾を作り出し、ラルバの妖気弾を着弾寸前で受け止めています!
「あ、あっぶねー!」
さらにチルノは、ラルバの次の攻撃に備えて妖力を防御に回します。手のひらに冷気を集中させて、一枚、二枚、三枚の氷の盾を作り出しました。
「これでどうだっ!」
「うぬぬっ、チルノのくせに頭いいじゃん!」
「へへーっ! もっとほめてもいいんだぞ!」
一気に押し込もうと思っていたラルバは、ここに来て攻めあぐねていました。防御を固めたチルノの三重の氷の盾を破るのはかんたんなことではありません。生半可な攻撃では、二枚目までは割れたとしても三枚目の盾で攻撃を受け止められてしまい反撃を受けるでしょう。
しかし、ラルバにはここまで隠していたとっておきの秘策がありました。
「ふふーん、こんなこともあろうかと、わたしはいいものを用意してきたんだよ! じゃじゃーん!」
「な、なにぃっ!?」
ラルバが取り出したのは、一見なんの変哲もない白い花。五枚の花びらからは、柑橘系のさわやかな香りが漂ってきます。
「あっいい匂い……じゃなくて! なんだその花!」
「実はこの花、たちばなの花には戦ってたあいだずーっとわたしの妖力をためてたんだ! そしていまこそその力を開放するときーっ!」
ラルバがたちばなの花を頭上高く掲げます。すると、五枚の花びらから光があふれ、ラルバに降り注ぎました。その光を受けて、ラルバの羽の鱗粉がその輝きを増していきます。こころなしかその羽の大きさまで大きくなっているよう。
「よおーしっ! パワーチャージ完了! 行くぞチルノ、勝負だっ!」
「かかってこいっ!」
腰を深く落として氷の盾を構えるチルノ。対するラルバはジンガのステップから空中にジャンプ! 背中を向けるように体を一回転させ、次の攻撃に勢いを乗せます。
瞬間、蝶の羽が激しくふるえ、一気に妖力が高まりました。ラルバの利き足に妖力が集中し、まるで一瞬、太陽のような輝きを放ちます。
空中に躍り上がったラルバが放ったのは「アルマーダ・プラーダ」。空中からの背面回し蹴り「プラーダ」です。
勢いが十分に乗った蹴りから放たれた妖力弾が、長く尾を引いてチルノめがけて飛んでいきます。その姿はまるで、穂先の鋭い槍のようでした。
姿だけではありません。ラルバの必殺の一撃はまさに槍となってチルノが構えた三重の氷の盾に突き刺さりました。
「ふぐぐぐ……っ!」
これまでの攻撃をしっかり弾いていた氷の盾に、ラルバの放った妖力弾が深々と突き刺さります。その威力に押し切られそうになるのを、チルノは両足を踏ん張ってこらえます。しかし、ついに氷の盾の一枚目が甲高い音を立てて割れてしまいました。
慌ててチルノが残り少ない妖力をかき集めて氷の盾を再生しようとしたときにはすでに、ラルバは二撃目の構えに入っていました。
両手を地面について倒立に近い姿勢をとり、高い位置からの足の甲での蹴り「シャベウ・ジ・コウロ」からの二発目の妖力弾が、チルノが氷の盾を再生するよりも先にニ枚目の盾を砕きます。さらにそのまま三枚目の盾をも貫通して――
・vs三月精追加分
ラルバが勝利を確信した瞬間、さっきまで団子状態になっていた三月精の姿が掻き消えました。サニーの「光を屈折させる程度の能力」です!
「え……!?」
必中のはずのラルバの一撃がえぐったのは地面だけ。その土埃に紛れるように、うっすらと三月精たちの姿が見えます。
「へへーん! そう簡単にはやられないわ!」
そんなサニーの声とともに、三月精の気配が移動するのをラルバは感じました。どうやら、姿を消しながらラルバの周りをぐるぐる回って押し込んでくるつもりのようです。
「くっそー! ぜったい当たると思ったのに! なかなかやるじゃん!」
ラルバは悔しさよりもむしろ称賛を込めてそう言い、姿を消した三月精の攻撃の気配を探ります。頭の触覚をぴりぴりとふるわせ、ラルバは神経を集中させますが――。
「あ、あれ!? どうなって……あ、ルナのしわざだな!」
三月精と出くわしたときのように、木々のざわめきや湖面の水音、そして自分が地面を踏みしめる音がいつの間にか聞こえなくなっています。ルナの「周りの音を消す程度の能力」です。
突然周囲の音が聞こえなくなったことで、ラルバはそれまでジンガのリズムで行っていたステップを乱してしまいました。そこへ、三月精がタイミングを合わせて大玉弾とクサビ弾を撃ち込んできました。大玉弾で壁を作り動きを制限し、その隙間を縫うようにして放ったクサビ弾でラルバを仕留めようというフォーメーションです。
弾幕ダンスバトルの勝敗を分けるのはリズムの奪い合い。これまで順調にリズムを掴んでいた反面、いったんリズムが崩れてしまっては、再びリズムを立て直すのは簡単ではありません。しかし、このままでは再び数の差と火力の差で押し込まれ、すぐに押し切られてしまうでしょう。
「くっそー! このままじゃ……!」
守勢に回ってしまえば負けると判断したラルバは、リズムが不安定なまま、焦って攻撃を繰り出してしまいました。しかし、リズムを立て直せないまま放った攻撃は狙いを外れたばかりか、攻撃を繰り出そうとしたタイミングにしっかり合わせて飛んできた星弾の直撃を受けてしまいます。
「うわぁっ! こ、攻撃のタイミングが読まれてる!? そっか、スターの能力!」
そう、ラルバの思った通り、スターが「動く物の気配を探る程度の能力」で攻撃の予備動作を読み、そこを狙って攻撃してきているのです。
三月精の能力は、どれも直接的には攻撃に関係しないものばかり。しかも三人はその能力をいつもいたずらにばかり使っています。しかし、こうやって三人そろってその能力を使えば、数の有利を差し引いても妖精の中でも特に強い力を持っているラルバを追い詰めるほどの力を発揮できるのです。
(すごい……あの状況ならぜったい勝てると思ってたのに……! でも!)
姿が見えず、リズムを崩され、さらに自分の攻撃のタイミングすら読まれているという絶体絶命の状況。たとえリズムをなんとか立て直して三人のうち誰かひとりを倒しても、残り二人まで倒すのは無理でしょう。もうどうすることもできないのでしょうか。
そう思ったとき、ラルバはほとんど無意識に懐からタチバナの花を取り出していました。タチバナの花には、これまでの戦いで発生した妖力が十分に溜まっています。
「もうこれしかない! おねがいっ!」
周りを周回する三月精の攻撃をかろうじてかわしながら、ラルバはタチバナの花を頭上に掲げました。タチバナの花びらから貯められた妖力が開放され、ラルバの全身に降り注ぎます。
「ちょっとスター! あれなんかやばいんじゃないの?」
「わかってるわよルナ! みんなで一斉攻撃よ! ほらサニーも!」
「えっえっ? えーっと、なんだかわかんないけど、えーいっ!」
三月精は反射的にラルバの反撃の兆しを感じ取ったようです。なんだかわからないまでも、すぐさまラルバに集中攻撃をかけようとしました。
それが勝負の分かれ目となりました。集中攻撃……つまり、三月精たちの攻撃が一点に集中してしまったがために、ラルバをが弾幕の拘束から逃すことになってしまったのです。
ラルバはジンガから後ろ足を大きく引き、背後に体重をかけしゃがむ回避動作「ネガチーヴァ・ヘクアーダ」の体勢で攻撃を回避! ほんの一瞬前までラルバの体があった空間を、三月精の放った妖力弾がギリギリのタイミングで通過しました。
それを見届けることなく、ラルバはすでに次の、そして最後の動作に移っていました。後ろに体重をかけた反動で今度は前に跳ね上がり、一気に間合いを詰めます。