これまでに感じたことのない高揚感に包まれながら、ラルバは夕陽に照らされたきりの湖の畔を進んでいきます。
「さて、サニーたちは犯人はあっちに行ったぞー! ……って行ってたけど、それっぽい雰囲気のやつはいないなぁ。探し方が違うのかな」
妖精や妖怪ウサギたちとの踊りながらの道中は楽しいものでついつい本来の目的を忘れてしまいそうになりますが、肝心のPアイテムを持ち去った犯人らしき姿はまだ見つかりません。
と、湖の対岸のあたりに妖精たちが群がっているのが見えました。これまでの道中でもたくさんの妖精や妖怪ウサギたちが群がっていましたが、その騒ぎはこれまでとはまた違う感じがしました。なんというか……そう、宴会で酔っ払って暴れまわって手が着けられなくなっている霊夢や魔理沙にそっくりなのです。
「あはははは!」
その騒ぎの中から、陽気な……というよりは、なんだかやけくそ気味な笑い声が聞こえてきました。
「目が回るぜー! たすけてー!」
酔っ払って倒れてしまったように目を回して積み重なっている妖精たちの中心。同じように目を回しながら松明を振りかざしているのは、妖精の中でも特に目立つ赤と青半々の特徴的な服の、地獄の妖精ことクラウンピースでした。
「ぴ、ピース!? 大丈夫……じゃなさそう!」
チルノ以上と言っても過言ではないいたずら好きなピースですが、今回は明らかに様子が変です。ピースが持っている松明には、その光を見せることで相手を惑わせる効果があるのですが、今のピースはまわりの妖精たちだけでなく自分自身もおかしくなってしまっているようす。ラルバが来たのにも気づかず、そこら中に星弾をばらまきながらでたらめにくるくる踊っています。
「なにがあったのー!?」
次から次に飛んでくる星弾を器用に避けながらラルバが大声で呼びかけると、ピースはようやくラルバの姿に気づきました。
「ら、ラルバか! よくわかんない! 体が勝手に動いてダンスが止まんないんだ! ラルバも危ないから! 離れてろー!」
ピースは完全に自分では踊るのを止められなくなっているようすで、ラルバに返事を返しながらも目を回してくるくる踊っています。
「ピースが暴れて妖精たちがみんなぐったりしてる……とにかく、大人しくさせなきゃ!」
呼びかけるだけではだめだとラルバは判断しました。ピースが自分で止まれないなら、止めてあげるしかありません。
「大丈夫だよ! わたしがなんとかする!」
「なんとかするって、なにするんだー!?」
「ダンスに付き合ってあげるよ!」
ラルバの体が、自然とジンガのステップを踏み始めました。噴水みたいにでたらめに星弾を撒き散らしているピースのリズムは、制御不能に陥っているだけあって読みにくく、テンポもやたらと早くなっています。さらにピースは、不規則に飛んでくる星弾に加えて、ラルバを挟み込むようにレーザーまで撃ってきました。地獄の妖精であるピースは、そこらの妖精とは比べ物にならないくらいの大きな妖力を持っています。その膨な妖力が今、なんらかの理由で暴走状態になっていることで、いわば壊れた蛇口のように加減なしで放たれているのです。
(やっばいなあ……チルノや三月精と戦ったときとは勝手が違う……!)
チルノや三月精を相手にしているときは、弾幕ダンスバトルで勝つための重要な要素である「リズムの奪い合い」はなんとかできました。相手の攻撃や回避のリズムを崩してこちらのリズムに引き込むのが弾幕ダンスバトルの勝敗を分ける大きなポイントなのですが、今の状態のピースは暴走状態でリズムもなにもあったものではありません。くわえて、ラルバやほかの妖精を大きく上回る妖力が制限無しで垂れ流されているようなもの。こちらがリズムを奪おうにも、単純な妖力の出力差で押しつぶされてしまいそうです。
「あはははー! なんだかもう楽しくなって来ちゃったぞー!」
相変わらず目を回しながらピースが松明を振りかざすと、木立をなぎ倒しながら左右から太いレーザーが迫ってきました。
「うわわわっ! ちょっとピース! すこしは加減してよ!」
言いつつ、ラルバは左右から逃げ場を奪うように迫ってくる二本のレーザーをリンボーダンスの要領で飛び跳ねながらかろうじてかわしますが、その間を狙って星弾が背後から迫ってきます。これでは自分のリズムを保つのがせいいっぱいで、相手のリズムを奪うどころではありません。まるで暴風のような激しい攻撃にさらされながら、ラルバはどんどん守勢に押し込められていきます。