チルノや三月精たちの熱い弾幕ダンスバトルがあんまり楽しかったのでついつい忘れかけていましたが、あくまでラルバの目的は自宅からお気に入りのPアイテムを持ち去った犯人を探すこと。
しかし、お昼ごろに出発してもう夕方になるのに未だに有力な手がかりは見つけられていません。
手がかりといえば、三月精の「犯人は霧の湖の方に行った」という言葉だけ。
「ほかに手がかりもないし……行ってみるしかないかな?」
ポジティブと言うか脳天気なラルバは、それでもあんまり深く考えずに、上空から湖のほうへと近づいていきました。
ふつう、この時間だと妖精たちもそれぞれのすみかに帰っていくので湖のあたりは静かなはずですが、今日に限っては違いました。たくさんの妖精や妖怪ウサギたちがそこらじゅうで飛び跳ねながら踊っているのです。
「へぇ、なんだか今日はずいぶんにぎやかだなあ。弾幕ダンスバトルが流行ってるせいで、みんなテンションあがってるのかな? なんだかわたしも楽しくなってきたぞーっ!」
またもやPアイテムのことを忘れてしまいそうなテンションで、ラルバは踊っている妖精たちの中に突っ込んでいきます。妖精たちもまたハイテンションのまま、隊列を整えてラルバを迎え撃ちました。
夕闇の迫る空の下で、リズムに乗って隊列を組んで弾幕を放ってくる妖精たちの姿は、まるできらびやかなパレードのよう。弾幕の光の中で軽快なステップを踏み、鱗粉を煌めかせながらアクロバティックに舞うラルバの姿には、一種の神々しさすらありました。
弾幕ダンスバトルの勝敗を分けるのがリズムの奪い合いなら、このときに場を支配しているのは完全にラルバでした。群れをなして攻撃を加えているはずの妖精や妖怪ウサギたちは、いつの間にかラルバを取り囲むバックダンサーのように並んで、ラルバの振りまく鱗粉の輝きを強調するかのよう。
その中でラルバは、周りから放たれる弾幕をかわすというより、まるで一緒に踊っているような気持ちになってきました。弾幕が弾ける音、木々のざわめき、そして妖精たちの歓声。それらがまるで音楽のようにラルバを包み込みます。
(すごい……弾幕ダンスバトルって、カポエイラって、こんな気持ちになれるんだ!)
ラルバの脳裏に、香霖堂から持ってきたカポエイラの教本に書いてあった言葉がよみがえります。ラルバはあまり文字を読むのが得意ではありませんが、その一節は妙に心に残っていたのです。
曰く「カポエイラで音楽を使う理由はいくつかあるが、もっとも大切なのは『アシェ』を作り出すことだろう」。「アシェ」とは、エネルギーのこと。ジョーゴを行うことでこのアシェが満ちていくと、風邪気味だった人がジョーゴのあとには病気が治ってたいり、怪我をしていてもそれを忘れたように動けたりと不思議なことが起こるそうです。
まさにこの場には、ラルバだけでなくそこに集まった妖精たちのたくさんのエネルギー、アシェが満ちていました。それに反応するように、ラルバの背中の羽根がぴりぴりとふるえます。