「本当に、来ちゃった……」
眼前に広がる見知らぬ風景に、呆然とした声が零れる。
スクランブル交差点の真ん中に立ち尽くして、陽鞠はただただ視界を占める街並みに圧倒されていた。周りを見渡す余裕もなく、何度目かの瞬きが落ちる。首を九十度傾けなければ屋上が見えないような、立派な高層ビルの群れ。スクリーンセーバーみたいな模様の明滅を繰り返す、大きな街頭モニター。どこか既視感があるのは、渋谷のセンター街によく似た作りになっているからだろうか。
事態を飲み込もうとようやく稼働し始めた頭で、ぐるりと周囲を見回してみる。所狭しと並んだ灰色のビル、見上げた先にいくつも連なる屋外ビジョン。社会の教科書に載るような、典型的な大都市の景色だ。
それにしても。頭を擡げた違和感が、時間差でじわりと膨らんでいく。これほどの都会だというのに、一切の音がしないのは、一体どういうわけなのか。辺りを満たしている、異様とさえ呼べるほどの静寂。
❌情報が整理されておらず、説明が散らかっている
❌キャラクターの感情の動きが見えない
❌光景がイメージしづらい(特に最初)
❌文体のキャラクターらしさが薄い
↓
顔を上げた先には、怪獣みたいなビルの群れが立ち並んでいた。
足を止めた陽鞠を取り囲む、摩天楼のような建物たち。はへ、と間抜けな声が零れて、思わず瞬きが落ちる。身体はその場に固まったまま、視線だけが忙しなく宙を泳いだ。状況が飲み込めない。
目の前に広がるのは、縦と斜めにまっすぐ伸びた横断歩道。その終点に所狭しと並ぶ、立派な高層ビルの数々。首を九十度傾けなければ、てっぺんが見えないほどの高さだ。ガラス製らしき外壁には、モニターのように映像が投影されていた。プロジェクションマッピングだろうか。
「これって……。まさか、本当に……?」
まだ夜の明けない自室の隅で、指輪のボタンらしき部分に触れた。そこまでは確かに覚えている。
だというのに——いったいどうして、昼間のスクランブル交差点なんかに放り出されているのだろう?
そんな至極当然の疑問に答えるように、先程まで目にしていた手紙の文字が脳裏を過る。仮想世界。インターネット上に構築された、三次元のデジタル空間。あの指輪が本当に仮想世界への接続機器になっていたのであれば、この不可解な現象にも説明がつく。つまり、陽鞠の立てた仮説は正解だったということだ。
それでも信じられない心地が勝って、夢だと言われる方が納得できる気がして。確かめるように、自分の頬を引っ張ってみる。指先を通じて伝わってくる圧力。うん、しっかり痛い。目が覚める気配もないし、この場所はどうやら現実——指輪を介して構築された、リアルな仮想現実らしい。
置かれた状況を確かめるように、改めて視界に映る光景を観察してみる。社会の教科書に載っているような、典型的な大都市の街並みだ。建物の形や配置が、どことなく渋谷のセンター街を思わせる。都会だなあ、と呑気な感嘆の声が漏れた。数えるほどしか東京に行ったことのない陽鞠は、群生する高層ビルというものにほとんど縁がない。囲まれているだけでなんだか圧倒されてしまうし、ずっと眺めていると首が痛くなりそうだ。
まだどこか夢を見ているような心地で、辺りの様子を観察して——壁面の大型ビジョンに、ふと目が留まった。上下左右にいくつも連なる街頭モニターは、スクリーンセーバーのような幾何学模様を繰り返し映している。
なんだか妙な感じがして、陽鞠は僅かに小首を傾げた。間違い探しを見ているみたいな、漠然とした違和感。数瞬だけ思案した後、すぐにその正体に思い至った。広告がないのだ。大都会には付きものの雑多な広告がすべて、意味をなさない記号に置き換えられている。この場所が仮想世界なのだとしたら、開発している企業があるはずで。開発している企業があるなら、スポンサーがいそうなものだけれど——目の前に広がる街並みからは、あらゆる広告が徹底的に排されていた。資本主義社会に対するアンチテーゼみたいな景色だ。
俄かには信じがたい気持ちで、ぐるりと周囲を見回してみる。実はどこかに、巧妙に隠されていたりして。そんなことを考え、探るように視線を巡らせて、はたと気付いた。
燦々と太陽が輝く真っ昼間、抜けるような青空の下。大都会の中心にいるというのに、まったく人の気配がしない。広告さえも置き換えられているせいで、人間の形をしたものが、陽鞠以外にどこにも存在しない。
そのことを悟った瞬間、自分の心音をやけにうるさく感じた。周囲を満たした異様な静寂を、初めて知覚する。先程までもそこにあったはずのものが、急激に恐ろしく思えてしまう。こんなにも精巧な近代都市なのに、どこからも呼吸の音がしない。陽鞠以外の何もかもが死に絶えている。人類が滅びた後の世界にたったひとりで取り残されたようで、訳もなく心細さに襲われる。聳え立つ巨大で無機質な建物が、不安を煽るように思えてしまう。
『捨てられた仮想世界で、僕は永遠を証明する』
死に絶えた都市
巨大で無機質な建物だけ
滅びた後の世界みたいでちょっと心細くなった
「捨てられた仮想世界」の文言を思い出す
招待されてきたわけだけど、陽鞠以外本当に誰もいないのか?
人を探してみよう
キャラクターの感情と情報を分けて整理します
◎情報
・スクランブル交差点の真ん中に立っている
・周囲にビルが並んでいる、街頭モニターがある
・渋谷のセンター街に似た風景
・異様に静まり返っている
(・広告がない)←気付かないのは不自然な気がする
◎キャラクターの感情
・ビルだ!?
・本当に仮想世界に来たの?
・どうやら本当っぽいな……
・高層ビルと街頭モニタ 渋谷っぽい街並み 改めて状況の把握
・東京のビルって感じ 実際に見るとすごいな
・それにしても、何か違和感がある気がする
→広告がない 意味のない模様が埋めている(スクリーンセーバー)
なんで?本当にどこにもないのかな、と見回す
→そもそも人がいないことに気付く
考えてみれば、これほどの大都市が静寂に満ちているなんてありえない
「捨てられた仮想世界」の文言を思い出す
巨大で無機質な建物に囲まれて、ちょっと心細くなる
人を探してみよう、と足を踏み出しかけて
→場面転換