さて、夏コミ原稿最終締め切りまで2週間となりました。外気温の暑さに対して体内温度が常に冷えています。たすけて。
さておき、上巻はすでに読み終わったペンギンSFアンソロジー感想を進めていきます。
・イワシが落ちる(八月休希氏)
本アンソロジーでは、ペンギンを擬人化あるいは知性化した作品はたくさんありましたが、本作はその中でも直球の青春を感じました。あまりにも眩しすぎる。
本作から感じるペンギンイメージは「飛ぶことへの渇望」。
ペンギンは飛べない鳥です。なので当然、できないことに対する渇望があるわけですね。
というわけで本作では、飛べない鳥であるペンギンの少年が鳥人間コンテストならぬ鳥ペンギンコンテスト的なイベントに参加するべく奮闘するお話です。鳥ペンギンってなんだよ。
自作飛行機「ジェット・イワシ号」の制作と完成、そしてイベントへの挑戦が生き生きと描かれています。飛行機の製作までの試行錯誤、完成の喜び、そしてイベント本番のハラハラが楽しめました。そして鷹のフランクがまた実にいいキャラをしている。
また本作はみんな大好き「タイトル回収」と「タイトルのダブルミーニング」も盛り込んでいるので芸術点が高い。
・大気圏流氷に暮らすナギサペンギンたちがかわいい理由(久乙矢氏)
小説というか文章には味と食感があるわけですが、本作はむかーしむかしに夏祭りで食べたブルーハワイのかき氷の味がしました。
本作から感じるペンギンイメージは「旅する者たち」。
本作についてまず言いたいのはキャラでもストーリーでもなくその語彙ですよ。
小説における地の文の魅力というのはおそらくキャラやストーリーに比してはあまり注目されない、ともすればそもそも認知されないことすらあるものだと個人的には感じます。
しかるに本作の地の文は素晴らしい。もう冒頭の宇宙から見た地球の大陸の様子を「剥がし忘れたゆで卵の殻」と表現するこのセンスよ。最初に読んだときにはため息が出ましたよ。
また本作の語彙のチョイスや全体の雰囲気からは、明白に宮沢賢治のイーハトーヴォのかほりを感じます。
壮大かつどこか牧歌的な作品世界もあいまって、ペンギンでSFという本作のコンセプトに実に馴染む一編でした。
今日はここまで。