激しく打ち込まれる太刀の向こうに見えるのは、その機体に倍する殺気、そして憎しみ。どれほど膨大な情報量を流し込まれた星間通信よりも濃密な衝動が、その向こうに知覚される。
 前方からは決死の太刀、後方からは動力コアの強大な熱量が迫る中――ネグザルツの思考域の中に、わずかな違和感が生まれた。
 この激しい戦い、思考リソースをすべて相手の攻撃の先読みとそれに合わせた最適な業の選択に費やしている中では、決して発生しないはずの感覚。
 「懐かしい」という感情だった。
 その感情が引き金になったかのように、戦闘思考以外の一切を行う余裕のないはずのネグザルツの思考域に、過去のデータが少しずつ、滲み出るように構築されてきた。
 暗黒の宇宙空間に交錯する二筋の光。一方は逃げ、一方は追っている。
 追う側が放った粒子弾の弾幕を、逃げる側は巧みな螺旋機動で回避。しかし、追う側はそれも計算に入れていた。避けられた粒子弾は逃げる側の前方に浮遊していた岩塊を破砕。弾幕となって逃げる側の進行方向を塞いだ。
 逃げる側は広範囲に撒き散らされた岩塊の破片を、逃げる側はとっさに避けることができない。全身を岩塊の破片に打たれ機体のバランスを崩す。
 なんとか体制を立て直し機首を向け直したときには、すでに至近距離に光刃があてがわれていた。反撃を試みる暇もなかった。
 撃墜判定と同時に双方は戦闘態勢を解く。
 逃げていた側――ネグザルツは訓練用宙域から離れながら、自身の思考域に生まれた今までにない感覚を反芻していた。
 レーヴァテインに救われその氏族(クラン)に組み込まれたネグザルツは、彼らの習いとして各種武装を用いた戦闘訓練を繰り返していた。
 
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初公開日: 2025年04月08日
最終更新日: 2025年04月08日
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