力いっぱいの演技に吠えるような歓声が沸き起こる。やがて、最後の礼の時には拍手喝采の音で劇場が包まれた。
「見事、大成功だ!!みんなお疲れ様!!」
「やったああああ!」
俺たちは気付くと、体を抱き寄せあいながら大粒の涙を流していた。拭っても拭っても止まらない涙が俺たちのみなぎる達成感を露わにした。
「よし!今はもっと泣くぞ!」
俺たちの作った輪の中心、そこにいるのはルイ・ウィートン監督だ。片付けをしていたスタッフ、マネージャーなども駆け寄り人数が増えるほど輪もどんどん大きくなっていった。
「ジュール!くん。」
「いいよ!呼び捨てで!」
「ほんと!ジュール、楽しかったな。俺会えてよかったよ、ここにいるみんなに!まだまだガキなのに俺ってばすぐに調子乗るからやっぱいけないね。」
「調子に乗らない方がおかしいよむしろ。こんなにでかいステージ、さらには主人公役で初の劇場デビューなんてとんでもないんだから!!生きてる間は自慢話には絶対に困らないね、羨ましい。」
「そうかなあ??」
「いい加減自分の凄さに気付いてね!」
「ま、まあ、分かった。とりあえず一緒にステージに立てたことをずっと誇りに思うよ。お疲れ様。」
「アントワーヌのこと絶対に忘れないよ、忘れる方が難しいから。またどっかで、お疲れ様!!」
「ディホールさん、いつまで泣いてるんすか。」
「いやだって、こんなにすごいステージだとおもっでなかっだんだよ。年をとると怖いくらい涙もろくなるもんさ。だから許してくれ若人。」
「どういうことですか・・・・・・。」
「ジョンケ!お父さんは年だ!許せ!」
「いやわかるけど、」
二階席の手すりに前のめりをして、ステージの裏側、暗い中をずうっと眺めてこう言った。
「ああ、、でも、確かに涙が出てくるのはわかります。本当にすごいステージでした。アントワーヌだけじゃなく、全員がしっかりと顔を出してくる。なんていうか脇役まで脇役じゃないみたいな感じでした。やはりこれもウィートン監督のお力のおかげでしょうか。」
「いやいや認めない認めない、あいつは何にもしてないからな!絶対だ!アントワーヌ君に注意されるくらいなんだから、無駄な世間話をしたせいで遅刻とか笑えるわ。」
「父さん、なんだかんだ仲いいね。ずっとこんなのを繰り返してたよね。俺が赤ん坊の時から。ウィートンさんのステージに毎回連れてってくれて嬉しかったな。」
「あんまり息子が言うもんじゃないぞそんなことは。目が腫れてしまうだろう。」
「がんばる。俺、何回でも工夫して頑張ってみる。お父さんが俺にあのステージを見せてくれたから俺は音楽という夢を見つけられたんだ。だから、恩返しが出来るくらい売れてみせる。」
「生きるとは同じ事象ではないこと。それが毎日だ。もっともっと知識を身に着けて、この体みたいに心までしっかり大人になって、パリのスターになる。」
「だからさ・・・・・・!!」
「お前が売れるまで生きてやる。死ぬまでとか言うな、俺の息子なんだから。父さんにそんなこと言わせねえぞ。精一杯、頑張りなさい。」
「で!結局、こういうことになったわけ!!」
「そうなのね。大変。でもよかったわ、今日が大成功に終わって。お母さん、最後の方感動しちゃった。」
「でしょ!あそこ難しかったんだー。」
「ねえね。アントワーヌ君!」
「うわっ!マリン、ちゃん!」
急に横からでてきたああああ!こいこい、って思ってたよ恋だけに。だって好きなんだもん!!やばいやばい。心拍数が上がりすぎて、息が詰まりそうだ。ほっぺも暑い。
「お母さんごめん、先行ってて。」
「で。どうかしたかなああ、なんてね。うふ、あはは・・・・・・。なんて。」
「本当につまんないことなんだけど、いいかな・・・・・・。」
「うん!うん!つまらないことウェルカム!」
つまらないこと、、つまらないことってつまるところ、そういうことだよね!やばい、心臓が出そう。なんかやばい。胸がジンジンってして痛い。ただ、集中がそがれないように俺は耳だけに全意識をフルベットした。
「今度!私と一緒に帰ってほしいなあって、、ダメだよね?」
「あ、いやいいよ!もちろん!全然、嬉しい!ありがとう!」
いやそっちのパターンかよ!!ジンジンと響くような胸の痛みは去り、結局今度は耳がチクチク痛くなるだけのあっけない始末に終わった。
「やった。じゃあそのときによろしくね。またね!」
「うん!また!」
「はあ。いや嬉しいんだけど・・・・・・。」
「恋は成功した?アントワーヌ。」
「いやあ、それがねえ。」
「ダメだったんだ。君らしい。」
「フリアンさん!!」
耳なじみのある声に、後ろを振り返るとやっぱり立っていたのはフリアンさんだった。黒い服にサングラスって完全にそういう人、、、
「たぶん。またすぐ会うことになるだろう。アントワーヌとは不思議だけど、特別な縁があるような気がするんだ。だから困ったときはいくらでも相談に乗るよ。こんなおじさんだけど、俺はまだ小さい赤ん坊みたいな心してるから、うまくいくかは分かんないけど。」
「大人じゃないですか、フリアンさんは。だって、こんな僕に夢をくれた人ですよ。大人です。僕の尊敬する大切な人です。」
「じゃあバカげた夢を聞いてくれ。こんなおっさんのバカげた夢をさ。」
「なんですか?」
サングラスを外して、僕の目の奥の方まで目線をやって、フリアンさんがこう言った。
「大人になってパリのスターになる。スターダムだ。」
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