通知音がずっとバッグの中で鳴っている。チャックを開けてスマホの中を確認しなくても、あいつからのメッセージなのが一瞬でわかった。
帰りの電車は、行きと違って窓から見える景色がすごく綺麗に感じる。そもそも朝は外を見てる余裕もスペースもないんだけど、だとしてもやっぱり綺麗だ。夕日と影が交互に差し込んで、あっちの人には陽とあっちの人には影がかかる。
ぼーっとするといつもの景色も特別になる。でも今日はあんまり綺麗に見えなかった。膝元のバッグが10秒に1回くらいのスペースで振動して、音も聞こえる。何回かメッセージを見て返信したけど、それでも全然話が終わんない。
あああ、まじで僕なにしてんだよ、こんなことになるんだったら最初から交換しようなんて言わなかったのに。でも事実、僕から連絡先を聞いた。だから余計な言い訳はできなかった。
ピロン。ピロン。通知の次もまた通知。スタ連してんのかなひさき・・・・・・。
「こっちから交換しようって言ったけど、ブロックするわ。」
文字に打ってみたはいいものの、青い送信ボタンを押す事だけが出来ない。さっさと縁を切ればいいだけなのに、なんで僕はそれすら出来ないんだろう。まさかひさきにまで嫌われたくないとか思っちゃってんのかな。
いやいやありえない。嫌われて縁が切れるならさっさと切れてほしいくらいだ。だって僕があいつを嫌いなんだから、、、
踏み込めない分だけ通知も増える。電車から降りてもスマホを開かず悩んで悩んで、歩くことに疲れを感じない。そうやって選択をいつまでも渋った結果、何もしないまま家に着いてしまった。スマホを確認すれば通知は300件にまで増えていた。
「嘘だろ・・・・・・。」
しかもメッセージは全てしっかり文章だった。スタンプで通知を増やしてきてるだけなら、ただのいたずらで片づけられるけど、これじゃ、全部読まないと僕が悪いことになっちゃわない?
なんで罪悪感と義務感を背負ってメッセージ読んでんだっけ。なんで交換したんだっけ。
この際、縁切るとかブロックとかそういうことは一回考えるのやめよう。なんで交換しちゃったかの原因を探った方がいい気がしてきた。
今から2時間くらい前、僕はひさきに連絡先を交換しよって言った。天地がひっくり返ったとしても絶対に言いたくなかったことを僕は言ったんだ・・・・・。
いやでも、、ぶっちゃけ、ほんのちょっとだけ楽しかったような気もする。そんなわけないのに、絶対楽しんでたよな僕。
ひさきが何枚も写真を送ってきているのが目に入って、あの時の心の軽さを思い出した。
ひさきと居てあんなに心が軽くなったのは初めてだった。なにを言っても体全部で喜びを表現し続けて止まらない。告白に成功したわけじゃないのに、それ以上に喜んでた、確実に。
僕が、僕の決定こそが、ひさきの心の陽と影を作ってた。それを今までで一番深く感じたのかもしれない。考えたらそのせいだ。変に罪悪感を感じるのは、送信ボタンを押す手が止まっちゃうのは、きっとひさきの気持ちを自分に重ねているんだ。
昔消えたあの恋を、その時の気持ちを、僕に一生一途なひさきに重ねた。
ずっと一途な気持ちを、ずっと一途なまま伝えても相手の目には埃くらいにしか認識されていなかったんだ。大事に保っていた気持ちをあっさり切り捨てられたあの日。僕の言う事を全て否定されたあの日。
影だけ落とされて、ずっとその影で息をしてた。
ひさきは、どんだけ振られても陽の明るい中に生きてるみたいだった。
「関わらないで」とか、やっぱりそんなこと言えない。言っちゃいけないよな。僕はそれを言われてから何もわからなくなったし、自分を閉じ込めるようになったんだから。それほど、、傷ついたんだから。
だけどそれは、りの先輩を諦めないといけないってことになる・・・・・・・。
りの先輩を諦めるなんて、無理だ、、でもひさきと縁を切るのも、無理、、
どうしよう、