・箱の者パート
娘はいる。この箱のなかでよみがえるときを待っているのだ。
ああ、なんとかわいそうな娘。あんなこと(傍点)になってしまうなんて。娘は、私の宝だったのだ。それなのに……。
私の愛しい娘。娘は……死んでしまった。
しかし、私はかろうじて娘を失わずに済んだ。完全に失われる前に、この箱の中に閉じ込めることができた。
この箱は、私にとって自分の命よりも大切なものだ。この異形どもがひしめく神経塔の中で絶対に壊されないように守り抜いてきた。箱を異形から守って隠れて逃げて、いつの間にかずいぶん深いところに来てしまったようだ。もうここがどのくらい深い階層なのかも、ここから出られるのかもわからない。
でもいいんだ。ここには娘がいるから。
こうやって抱きかかえていると、箱の中にいる娘のぬくもりと息遣いがはっきりわかる。娘は間違いなくここにいるのだ。
一度は失った娘を、もう一度失うわけにはいかない。私はこの箱を、守り抜かなくてはならないのだ。
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あの青年がまた来た。見覚えがあるような気がする。歪みのせいか記憶が曖昧だが、上級天使の部下だっただろうか。
偽翼を背負っているところを見ると偽装天使だろう。
世界がこうなる前、上級天使は配下の偽装天使を率いてなにか恐ろしいことをしていた記憶がある。それがなにかは思い出せないが、なにか大きな力を探し出そうとしていたような気がする。
近づいてきた青年に声をかける。
「知っていたら教えてくれ。偽装天使が見つけた力は、どこにあるんだ?必要なんだよ。箱の中身と再会するために」
青年はなにも言わない。困惑の混じった悲しそうな視線を返すだけだ。彼の声を聞いた覚えはない。歪みのせいで声を失ったのだろうか。
なんとか彼に協力してほしい。上級天使たちが探していた力があれば、きっと箱の中の娘をよみがえらせることができるはずなんだ……。
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またあの偽装天使の青年がやってきた。