毎週木曜は滑り込みの日。というわけで今日も2本連続で見てきました。冬コミ原稿のことは聞かないであなたに慈悲の心があるのなら。
というわけで1本目はこれ!
間違いなく邦画のアクションレベルを数段階上昇させたど迫力のアクションとゆるーい日常描写が魅力の「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ記念すべき第1弾。現在塚口では本シリーズを第3弾である「ベイビーわるきゅーれナイスデイズ」及びメイキングである「ドキュメンタリー オブ ベイビーわるきゅーれ」が見られるベイビーわるきゅーれ祭りが開催されているのでみんな見るように。これを見ずに日本のアクション映画は語れませんよマジで。
第1弾である本作は入門編と言った感じでしょうか。ベイビーわるきゅーれの世界観、そしてちさととまひろのふたりのグダグダでゆるゆるな日常とそれとは正反対の激しいアクションを楽しめる作品です。
というか今まで「殺し屋もの」といえば血なまぐさい構想や復讐劇が定番というイメージでしたが、本作はそうした定型的イメージとはまったく異なる新機軸で、改めて見ても新鮮です。
いやPG-12だし冒頭のコンビニでの戦闘シーンは苛烈ですが、それでもやはり従来の殺し屋もののイメージを覆すゆるーい雰囲気は本作独特のものでしょう。
香港ノワールのような暗く陰鬱な空気は一切なく、殺し屋家業が普通に職業として成立しておりそこで働いているさまざまな人々がいて、主役であるちさととまひろはその中のいち殺し屋に過ぎないという。
というか本作における「殺し屋」という要素は、シリーズを通して「社会不適合者の居場所」なんですよね。
高校卒業後の進路をなにも考えておらず生活能力も十分とは言えないちさまひコンビですが、バイトは苦戦しながらもなんとか小器用にこなしているちさとに対し、まひろはバイト先というか社会に馴染めずにバイトの面接にも受かりません。特に中盤のメイド喫茶のシーンはそれが顕著で、人によってはどんな凄惨な戦闘シーンよりもここがいちばんキツかったという感想が出るんじゃないでしょうか。ここのまひろの孤独感が……。
対してちさともけっこう衝動的で向こう見ずなところがあって、せっかく仕事に馴染んできた喫茶店で客の頭をトレーでぶん殴ってクビになったりしてるんですよね。あのシーン、ぶん殴ったあとの「はースッキリした♡」みたいな顔何回見ても笑える。でもまあちさとの方は一見社会に適合できているようで、実のところはかなり無理してガマンして……というのが眼輪筋のピグピグ具合に見て取れるのでやはり社会に適合してるとは言えないでしょう。
本作はまずアクションが目立ちますし間違いなくそのアクション部分は超一級なんですが、わりとこういうちさととまひろの社会不適合者っぷりと、それでもなんとか「殺し屋家業」という居場所を見出してそこで文字通り戦っている姿こそが本作の核の部分にあるような気がします。
肉体的な戦いがアクション部分なら、メンタル的な戦いがそうした社会との折り合いを着けようとする部分なのかな。特に終盤、最終決戦に向かう直前にまひろがちさとに必死に言葉を尽くして謝罪するあのシーン、あれってメンタル面のラストバトルだよなあ。
思うにこの作品、最小の集団単位である「ふたり」というのが効いてる気がします。対立構図も「ヤクザの家族」vs「社会に出たての女の子ふたり」だしな。
本作の感想を書くにあたってアクションに言及しないわけにはいきますまい。映画の中でのアクションといえばワイヤーアクションやCG、もしくは爆発と銃撃の嵐といったものを想像しますが、本作のアクションはなんというか地に足がついたアクションといった風情。
本作のアクションを見て思うのが、「人間を殺し切るのってそう簡単じゃないよなあ」ということ。フィクションの世界では人間は銃弾一発受けただけで死ぬことが珍しくありませんが、本作ではしつこいくらいにダメージを与えないと死ななないし戦闘不能になりません。これは「ジョン・ウィック」でも思ったことですね。冒頭のコンビニでの戦闘シーンでは急所をナイフでザクザクやってるのが「ここまでしないと人間は戦闘不能にならないんだ」という驚きがありました。
そして1対1の対決ではダメージの蓄積がわかる。フィクションでこの「ダメージの蓄積」って意外に表現されてないと思うんですよね。特にラストバトルでまひろが頭に強烈な一撃を食らってふらつくところとか。なので本シリーズのバトルには独特の緊張感と生々しさが感じられます。
そして続けてこの作品!
ちさととまひろが帰ってきた! というわけで「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ第2弾。
「1」が入門編なら本作は応用編と言ったところ。本作ではちさまひコンビと同じく二人組の神村兄弟が敵として立ちはだかります。そして殺し屋協会の面々にもスポットが当たり、世界観がより深まっている感じ。
突然ですがわたくし人形使いが「ベイビーわるきゅーれ」シリーズでいちばん好きなキャラは掃除屋の田坂さんです。田坂さんを演じる水石亜飛夢氏は「魔進戦隊キラメイジャー」で知ったんですがまあ実にいいキャラしてます。「1」では出番はそれほど多くはないものの、メジャーをシャキシャキやりながら長ったらしい説教をするシーンがやたら印象的なんですが、本作では出番も増えてて相変わらず説教が長ったらしい。そして陰口叩かれてるのが笑えます。あと全体的に言動が女々しいのも笑えます。
中盤でいったんは捕らえた神村兄弟を取り逃がしてしまったシーンなんかは「こんなに『頭を抱える』って表現に忠実なアクションって初めて見た……」と感動しました。そしてそこからの致命傷を負ったと思いきやちゃっかり生きてるって流れからの後輩から発破かけられてからの怒りの依頼のシーン実に好き。過去に殺し屋だったことも匂わせてるし、次は田坂さんのスピンオフとか見てみたい。
そして本作の敵である神村兄弟もいいキャラしてます。特段強い殺し屋というわけでもなく、それどころか正規の殺し屋ですらなくアルバイトで殺し屋をやってるふたりなんですが、やはりこのふたりもちさととまひろとは違った形での社会不適合者だということが伺えます。
このふたりは全体的に言動が幼く、そこから来る上昇志向を持て余してる感じ。仲介役である赤木ともどもなんとかして殺し屋業界でのし上がろうとしてあがいている姿が泣かせます。
そしてこのふたりは前述の通り兄弟であって非常に強い絆で結ばれているというのもちさまひコンビと同様。失策がバレて中盤で殺されてしまった赤木ともなんだかんだで絆があったでしょう。「1」の感想で「家族という大きな集団vsふたりという最小の集団の対決」と書きましたが、本作はこれに対して「ふたりvsふたり」という同様のポジション同士の戦いとなっています。
だからこそラストバトルでちさまひコンビと神村兄弟は「同じ仲間」としてどこかしら通じ合ったわけですよ。壮絶なバトルであり、最終的にはちさととまひろは神村兄弟を射殺するにもかかわらず、スポーツのような健康的な爽やかさがありました。
これまでこのシリーズの感想でしばしば書いていたことですが、社会に適合できない彼女ら彼らにとって、同じ殺し屋との殺し合いは彼女ら彼らしか持たない共通言語による一種のコミュニケーションなんですよね。だからこそ彼女ら彼らは壮絶なバトルの中で、それぞれのパートナーにしか見せない種類の笑みを見せるわけです。そしてこうした殺し合いの中で唯一彼女ら彼らは「社会」という枠組みの煩雑さと懊悩からほんのひとときだけ解き放たれる。「1」の感想で「本シリーズの核となるのは『社会不適合者の居場所』」と書きましたが、この「社会不適合者の居場所」こそがこの戦いの場と言えるでしょう。そしてその居場所は永久のものではなく、必ずどちらかの死をもって終わりが来てしまう――というところを考えると、次の3作目「ナイスデイズ」のラストも色々見えてくる気がします。
次の週は「ナイスデイズ」と「ドキュメンタリー」の2連続で見るぞ!