「今度はうまくいくと思ったんだけどな……」
 低い地響きとともに石でできた手のひらが地面に消えたときには、そのあいだに広がっていた血溜まりは地面に吸い込まれるようにしてすっかり消えていた。あとに残ったのは、ひとり立ち尽くす祟り神だけ。
 なにかを思い出すように。諏訪子は夕闇の迫る空を仰いだ。懐を探り、小さなカードのようなものを取り出す。学生証だった。「東風谷早苗」と書いてあるその学生証は、ところどころに汚れがこびりついている。血痕だった。
「早苗、あんたの代わりはなかなか見つからないよ。これも、あのときあんたを助けてあげられなかった罰なのかねえ」
 祟り神は、けろけろけろ、とカエルのような小さな声で力なく笑った。その脳裏には、学生証の血痕と同じようにこびりついている。あのときの記憶。
 爽やかな朝の空気。甲高いブレーキ音。衝突音。アスファルトに広がる血溜まり。血溜まりの中に倒れて動かないセーラー服の少女。
 神でありながら、なにもできなかった。神だからこそ、神に助けを求められなかった。
 そして神だからこそ、神らしい狂い方を諏訪子はした。あるいは、祟り神らしい行動を。
「早苗……」
 血で汚れた学生証に頬を擦り寄せながら、祟り神は囁く。
「今度は、うまくやるからね……」
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紅楼夢表紙お礼SSを終わらせる。
初公開日: 2024年11月04日
最終更新日: 2024年11月04日
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紅楼夢表紙お礼SSを終わらせます。