こちらを照準した砲口に充填されていくエネルギーが放つ光に、ネグザルツの竜骨(スパイン)が泡立つ。懐かしい、郷愁さえ覚える殺気。当然だ。
 今、目の前に立ちはだかっているのは、自身に剣を教えた師のひとりであり、自身の母たるレーヴァテインの眷属のひとりなのだから。
 ネグザルツの機動(マニューバ)が、半秒という致命的な長時間にわたって停滞した。ファフニールにとっては必中の、ネグザルツにとっては必滅の瞬間。――にも関わらず、ネグザルツの回避行動の方が早かった。翼端を灼く光撃をかろうじて躱したネグザルツは、随伴機から放たれる弾幕を防護フィールドで強引に突っ切りつつファフニールの死角である真横に回り込む。突きの型で一直線上に放たれた太陽剣が、残ったニ機の随伴機を一気に爆散させた。
 しかし、随伴機を失ってなおファフニールからは戦意の減衰は感じられない。幾度となくファフニールと斬り結んできたネグザルツにはわかっている。先ほどの光撃は挑発行為だ。あのタイミングなら確実に直撃を狙えたにも関わらず、ファフニールは撃っては来なかった。
 試しているのだ。ネグザルツがこの先に進む資格があるか否か。それを証明する術はひとつしかない。ネグザルツはそれを実行する。
 粒子弾のみではパープリティアス属の装甲を削り切るのは不可能だ。ネグザルツはファフニールの周囲を旋回しつつ、装甲強度の低い部分を狙って絞った太陽剣を突き込む。属性を闇に擬態しているためネグザルツの装甲と機体構造には太陽剣を使うたびに徐々にダメージが蓄積されているが、同時にネグザルツには強力な自己修復機能が備わっている。太陽剣の出力とタイミングを限定することで、ネグザルツは消耗と回復のサイクルを繰り返しつつ徐々にファフニールの装甲を削っていく。
 対するファフニールは、高速弾と遅延弾を巧みに使い分けて空間を制圧しつつネグザルツの行動範囲を狭めてくる戦法をとってきた。遅延弾を放置すれば機動可能範囲が限定され、読まれやすくなった機動(マニューバ)を刺すように高速弾が飛んでくる。そもそも、太陽剣を除いた純粋な火力と耐久力ではネグザルツがはるかに劣る。さらには、この先戦わねばならないのはファフニールだけではない。
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