なんでもない口調でそう答える隠岐奈に、あとから追いついてきた魔理沙は油断なく問いかけます。
「知ってるなら話が早いぜ。お前、なんかやったんじゃないのか?」
「おいおい、いきなり人を疑うとは失礼なやつだな」
「一回とっちめられたんだから、もう何もしてないって。でしょ? お師匠さま」
舞と里乃が口々に答えます。そして、隠岐奈自身も笑って返事を返しました。
「誓って言おう。私は今回の一件には無関係だよ」
「どうだかな……」
魔理沙がそっと懐の八卦炉に手を伸ばしているのを知ってか知らずか、隠岐奈は続けます。
「私は妖怪の賢者として、今も『扉』幻想郷の各所を監視している。変わったことや異常が見受けられれば、すぐに対処できるようにな」
「……」
隠岐奈のその言葉に、魔理沙はなにか引っかかりを感じました。
隠岐奈の言う通り、幻想郷を作り出した賢者の一人である彼女は『扉』で幻想郷の各所を監視しています。そしてなんらかの異常や変わったことがあれば、彼女の手足となって働く二童子がそれに対処するのです。……ということは、今こうして隠岐奈自身が彼女の領域である後戸の国から直接出てくる理由はないはず。
その疑問が顔に出ていたのか、はたまた人ならぬ身の観察眼なのか、隠岐奈はわずかに笑みを深くして答えます。
「なぜ私が直接出てきているのか、という顔だな。答えは簡単さ。直接見てみたくなったからだよ」
「あー……?」
怪訝な顔をする魔理沙。対して隠岐奈は視線を遠くにやります。その視線の先にあるのは魔法の森のその先。秘神のその視線にはなにが見えているのか、魔理沙にはまだわかりません。
「先だっての異変……いや、事件だったかな。あの事件で、勝手に後戸の国から出ていったうちの二童子たちを帰って越させるために私がそこのルーミアをはじめ妖精たちの中でも特に強い力を持っていそうな者に力を与えたのはお前も知っているとおりだ。」
「……」
「けれど、さっきも言った通り今回の騒ぎ……氷精の子がそこらで暴れている騒ぎには、私はいっさい関与していないよ」
「お前が関係ないってんなら、いったいだれがこの騒ぎを起こしているってんだ?」
あくまで軽い口調の問いかけでしたが、魔理沙のその視線は鋭いまま。その視線を余裕たっぷりに受け止めて、隠岐奈は答えました。
「決まっているだろう。本人たちさ(傍点)」
「……!?」
今度こそ、魔理沙は隠岐奈の言葉を図りかねました。この騒ぎを起こしているのは、本人たち? そばで話を聞いていたルーミアもきょとんとした顔をしています。
「この騒ぎは、踊りながら弾幕ごっこをする『弾幕ダンスバトル』とやらに夢中になった妖精たちが起こしたものだ。もちろん普通の妖精たちが多少騒いだところで騒ぎになるはずもなく、しばらくすれば飽きてしまうだろう。より正確に言うなら、この騒ぎを引き起こしさらにその状況を未だ継続させているのは、あの氷精のような力ある妖精たちなのだ。いわばこの騒ぎは、先だっての弾幕ダンスバトル事件の、再演(リバイバル)なのだよ」
(VS大妖精パート)
冷気が渦巻く中、チルノと大妖精の熱いダンスバトルは続いていました。あたりを凍りつかせて冬景色にしてしまうほどの冷気を発散しながら戦うチルノに、大妖精は一歩も引きません。もとから争いや勝負事は得意ではないおとなしい性格の大妖精ですが、今回ばかりはチルノの本気にしっかり答えてあげなくてはという想いで、必死に戦っています。
「そこだぁっ!」
凍らせた地面をスケートのように滑って勢いをつけたチルノは、そのスピードのまま大ジャンプ! 大妖精の撃ち出したクナイ弾を宙返りでかわし、真上から氷弾を浴びせます。死角を取られた大妖精は、攻撃をかわせずに被弾――と思いきや、その場からふっと姿を消してしまいました。
妖精の中でも持っているものはごく限られる、大妖精のテレポート能力です。
「こっちだよ、チルノちゃん!」
だれもいなくなった空間を氷弾が過ぎるのと、チルノの背後から声がかかるのがほぼ同時。チルノがあわてて振り向いたときには、すでにクナイ弾の切っ先が目の前に迫っていました。
「んがーーーっ!」
ピチューン!
被弾音とともにチルノはクナイ弾の直撃を受け、目を回して地面に倒れます。大妖精は思わず駆け寄ろうとしますが、その前にチルノは跳ね起きて、ふたたび戦闘態勢。