ほんの数秒の逡巡の間に、敵艦隊はさらに増援をワープアウトさせてきた。全ての感覚機(センサー)が脅威度の急激な上昇を告げ、ネグザルツの思考に警告が刺さる。
前方に重力震! ネグザルツの進路を塞ぐかのように空間の裂け目から艦首がのぞく。艦体が完全に姿を現すのを待たず、艦首主砲がエネルギーを充填し始めた。同時に艦体各所のハッチが展開し、黒い帯となったおびただしい数の小型機(ドローン)の編隊がネグザルツを物量で押しつぶそうと迫ってくる。
圧倒的火力と物量で押しつぶされる前に、ネグザルツは決断した。
吸入口から大量の星間物質(エーテル)を吸収し、機肺(ラング)を満たす。竜骨(スパイン)に流入した大量のエネルギーが横溢し、生体装甲の表面が軋む。制御できなければそのまま機体を内側から爆散させかねないそのエネルギーを、ネグザルツは体内で一定方向に絞る。
――爆発的なエネルギーの奔流が「絞り」と「重ね」によって超指向性を与えられ、細く鋭い光の刃となって、暗黒の宇宙空間を斬る。
今まさに主砲を発射しようとしていた敵艦の艦首から艦尾までが、正中線(クリティカルライン)に沿って割られた。ネグザルツは急加速、左右に截断された艦体の隙間を高速で走り抜ける。背後で敵艦が巨大な火球を化すと同時に、小型機(ドローン)の編隊がネグザルツを左右から挟み込むように追撃してきた。