スモロ 失くした勲章とコイン
海軍本部から連絡船で5時間、程よい距離にあるこの島は治安も良く希少な書籍や骨董品が集まる事でも有名だ。ひとり立ち寄ったローは昼間から香ばしい香りを漂わす屋台を冷かしながら大通りから一本、観光名所ともなっている一角へ向かう。観光客目当ての露天商は大太刀を携えたローにも怯むことなく、石畳に広げた装飾品の逸話を慣れたように披露した。何処かの国の王妃が愛しただのなんだのの、石の嵌まった指輪を力説する露天商は、ローのタトゥーで全て埋まった指を見て顧客にはならないと悟ったのだろう、口を噤んで他の客を呼び込みを始めた。
ローが目指すのはこの先の骨董屋街だ。古今東西無秩序な取り扱いが有名だと雑誌で紹介されおり、一度は見て回りたいと思っていた。立地の関係から海賊の身では難しかったが七武海の地位があれば追われる心配もなく悠々と見物ができる。思わぬ副産物にほくほくとしながら足を進める。
骨董街には独特の雰囲気があると思う。売る気の感じられない店主がまるで商品の値踏みのように此方を見定めたり、そも誰も店の番をしていなかったり。売られている商品さながらの自由奔放な店々に端から端まで見ている時間はないのだとわかっていながらもついつい足を止めてしまう。ようやくたどり着いたお目当てのコインが並ぶ店は如何にも貴金属専門と言った店構えで、馴染みのベリー硬貨からローの収集品に既にあるもの、見た事のないコインまでが並び、金銀の装飾品やどこかの勲章までもが混じって店内はキラキラと輝いている。
「これをくれ」
沢山並ぶ硬貨の中から、一枚の鈍色を選び取る。かつて北の海にあった小国のそれは独自の加工技術があって偽造はされなかったが、それが返ってコレクターの目に留まり国外へと持ち出され続け国益を失ってしまった儚い歴史を持つ。にこやかに手を伸ばした店主へコインを手渡そうと腕を伸ばしたとき、前触れもなく白い煙がふわりと靡いて手の中から一枚のコインを掻っ攫っていく。
突然の登場に二人の視線を集めたのはいつになく鋭い視線の白猟のスモーカーだ。休暇なのか軍服は着ておらず、どこか埃っぽいシャツに落ちた前髪。スモーカーはローへ視線をやることもなく手の中のコインを転がした。
「これはイミテーションだな。いったいいくらで売るつもりだった」
掲げられたコインは素人目には本物でしかないが、スモーカーは確信をもって店主へ問いかける。
「このコインは純金のはずだ。まず、重さが足りていない。そして掘られた年号、贋作が混じらないようにだろうが、この年にはもう発行されてなかったはずだ」
整然と並べられる根拠に、店主はローへ向けていた笑みを捨て去り舌を打つ。ようやく呑み込めたが、なるほどこの俺をカモにしたかったらしい。
「将校様がしがない骨董屋に何の用だ。うちはちゃんと営業許可もある」
「ああ、そうだな。別に誰をカモろうが商売にとやかく言うつもりはねえよ」
睨みを利かせる店主にあっさりと肩を竦めたスモーカーはコインをカウンターに戻すとぐっと身を乗り出して声を潜めた。大柄の海兵に詰め寄られ怯んだ店主が途端呆れ顔になって深い溜息が吐かれる。
「なあ、どうやったら国王直々に授与する勲章がこんな店に流れてくると思うんだ、あるわけないだろう」
「イミテーションでもいい、ぱっと見騙せれば構わねえんだ。最悪略章でもいい」
スモーカーは七武海とは言え海賊であるローへ構う暇もないと言ったように店主を口説くが、そもそもないものは売れないのだとしかめっ面で返され低く唸って黙り込む。勲章、もしくはその模造品を欲しがる将校が珍しいのか、店主が好奇心に駆られるままに訊ねれば、スモーカーは紫煙をたっぷりと吐き出し、失くしたと端的に答えた。
スモ、-と―― 変換 確認
❤>ω<*)
7.1グラム 7.0グラム 500円玉って新500円玉のほうが0.1グラム重いんだって へぇ~