きみの魔法にかけられて
ランダルは大急ぎで本の頁をめくっていた。彼の読んでいる本は人心掌握の黒魔術の本で、掛けられた本人も知らないうちに言うことを聞かせたり、短い時間であれば完全に隷属させることさえできるという危険な代物だった。
ランダルはこれまでこれを誰かにかけようと思ったことは……ほんの少しはあったけれど、でも実際に行ったことはなかった。せっかくなら言うことを聞かせるよりも聞いてあげるって言って欲しかったので。
そんな彼がどうしてこんなに必死なのか。それは最近アイボリー邸にやってきた女の子が、自分に魔法をかけているかもしれないからだった。
黒魔術をかけるためではなく、解呪する方法を探すためにランダルは躍起になっていたのだった。
「まずい、まずいよ」
知らず知らずに言葉が出てくる。焦りとは裏腹に、脳裏に浮かぶのはその女の子。昨日、明日一緒に外へ遊びに行こうと誘われていた。
昨日の明日、つまり今日。ランダルはこのあと、女の子と遊びに出かけるのだ。
「ねえ、ランダル?今暇?」
そうこうしているうちに彼女がやってきた。ランダルは別に悪い事なんてしていないのに、びくっと体を震わせて本を閉じた。
「暇でしょ?昨日の話、覚えてる?」
「え?あ、ああ。遊びに行くって話でしょう?」
「そうそう!買い物に付き合ってほしいの。ダメかな?」
買い物。なにを買うつもりなのかは知らないが、ランダルには拒否する選択肢なんて何一つなかった。
なかったので、とりあえずうんと頷いて、彼女の言葉の続きを待つ。
まるで判決を下されている罪人のようだった。
「な、何を買うつもり?」
「おやつ。このおうちではあんまり甘い物出ないから食べに行きたいの」
甘い物が出ないのはランダルがあまりそれを好まないからなのだが……無邪気な彼女は一緒に食べよう!はんぶんこか一口交換すれば二種類食べられるもんね、とニコニコ笑った。
私は甘い物食べないから、と言おうとしていたランダルもその笑顔を見てしまえばなにも言えなくなってしまう。
……これだ。最近ランダルが警戒している理由はたった一つ。彼女が来てからなんだかおかしいからだ。
彼女のお願いならなんでも聞いてあげたくなってしまうのだ。
ランダルだってお小遣いをきちんと貯めたりするタイプではないが、それでも彼女にあれ買って♡なんて腕を組まれたらメロメロになって二つ返事で了承してしまいそうだった。実際、彼女はそんなことはしないのだが。
少女はじゃあ今から行こう!とランダルの手を引いた。彼女の手が触れた部分だけカッと熱くなったような感覚があって、ランダルはこれが彼女の魔法をかける方法なのかもしれないと考えた。
接触することをトリガーに魔法をかけるというのがあるのをランダルは知っているから。
ああでも、今手を離すのは嫌だなあ。本来ならここで手を離さないといけないのに、危ないかもしれないのに、それでも振りほどくことなんてできなかった。
二人は結局手を繋いだままビーバーテイルを売っているお店にやってきた。
ランダルは甘いものが苦手なので、チーズとポテトがのっかっているのにしようとして……少女が困っているのに気づいた。
「ど、どうしたの?何が食べたいの」
「あのね、クッキークリームにするかアップルシナモンにするか迷ってるの」
両方食べたいなあ、と彼女は迷っていた。
少女が迷っているなら、ランダルに残された選択肢は一つしかない。
「そしたら、片っぽ私が頼むから。もう一個の方をきみが頼みなよ」
「本当?いいの?」
少女はぱっと顔を輝かせて、店員さんに先ほどの二つを頼んだ。
ランダルはその表情から目が離せなくて、ぼうっとしたまま店のカウンター前に突っ立っていた。
やがて少女は店員さんに呼ばれて、二種類のおやつがのっかった紙のトレイを抱えてよたよた歩いてきた。この店のビーバーテイルはかなり大きいので、二つも持つと足元が見えにくくなってしまう。
ランダルはスマートにそれを受け取ろうとして、思いがけず彼女の手に触れてしまって取り落としそうになった。
「うわ危ない!ちょっとぉ、気をつけてよ」
「ご、ごめんね」
クッキークリームにはプレッツェルがいくつかのっかっている。大きめに砕かれたオレオがたくさんちりばめられていて、歯触りが良いと人気らしい。
アップルシナモンの方はひんやりしたアイスクリームが載っていて、熱々の生地に触れたところだけ溶けてつやつや光っていた。
「ランダルはどっちにするの」
「…………クッキークリームかな」
ランダルはだいぶん迷ってからクッキークリームを選んで、包装紙ごとかぶりついた。
「あ゛っっっ、まい、ね……」
「でしょ?おいしいよねえ」
少女は久々に甘いものを食べられるのがよほど嬉しいのか、手を溶けたアイスクリームでベタベタにしながらハムスターみたいに食べていた。
「ああ、半分こって話してたよね。ちょっと待ってて」
ランダルは食べるのを止めて、手を念入りにナプキンで拭いてから自分のをちぎった。どのくらいの量を自分が食べてしまったのかわからなくてだいぶん適当になったが、ランダルは明らかに半分以上の方を彼女に渡した。
「あれ?半分じゃなくない?それでいいの?」
「い、いいよ。きみ甘いの好きなんでしょう?いっぱい食べなよ」
ルーサーさまのご飯が食べきれなくなっちゃったらどうしよう!なんて彼女は言いながら本当に幸せそうにしている。
「じゃあ私も半分あげるね」
彼女はアイスクリームが載っている方から食べ始めていたから、必然的にランダルはアップルフィリングだけが載った部分を食べることになる。彼女はそれが不公平だと思ったらしく、ちょっと困った顔をしながらランダルを見上げた。
「あ、あのね。ランダルがアイスクリーム食べられないから。よかったら一口、ここから食べていいよ」
「えっ」
「や、口つけちゃったからやだったらいいんだけど」
「い、いいの」
ランダルはまるで教皇の靴にキスする神父みたいに恭しくアイスクリームを舐めて、でも冷たさのせいかなんなのか一切味を感じなかった。
「お、おいしかった。ありがとう」
ランダルは口の周りを長い舌でぺろりと舐めて、何の気なしに少女の口の周りを紙ナプキンで拭いてあげた。チョコクリームがずいぶんついていたから。
「え、え?なに、」
「あ!いや、なんでもない。ちょっと口ついてるなって、それで……ごめん、気持ち悪かった?」
「大丈夫、だよ」
ランダルは恥じらう彼女の顔を記憶に刻み付けながら、ぱっと手を挙げて無害さアピールをした。
二人分のビーバーテイルがすっかりなくなって、少女は包装紙一枚半(残りの半分はランダルのお腹の中だ)をちいさくまとめてゴミ箱に捨てた。
「あのさ」
「ん?どうしたの?」
「きみってさ」
魔法とか、使えたりする?
ランダルは周りに聞こえないように小さく囁いた。突拍子もない質問に彼女はビックリしたような顔をしてランダルの方を見つめる。
「正直に言って。……私に魔法、かけてるでしょう」
「なんでそんな、」
「だ、だって。最近きみのこと見ちゃうし、言うこと聞いちゃうし。私のこと操る魔法をかけてるんじゃないの」
少女はその、告白まがいのセリフを聞いて顔をさらに真っ赤にした。だってそんな、まるで自覚がないみたいな。言わせるために意地悪を言っているのかと思ったけれど、ランダルはどこまでも真剣だ。
「かけてるなら解いてよ、私最近変で……困ってるんだ」
「そんな魔法、使えればかけたいよ」
「じゃあやっぱり、」
「でも、多分だけどそれ、直し方……知ってるかも」
ランダルは早くなんとかして、と懇願した。これ以上自分の体が言うことを聞かなくなるのが本当に怖くて、どうにかしてほしかったから。
「じゃあ、ちょっとかがんで。目閉じててよ」
「これでいいの?」
「そうそう、そんな感じ。……じゃあ行くよ、」
ランダルはどうするんだろう、とドキドキしながら解呪を待って……
ほっぺに軽く、柔らかいものが触れた感覚がした。
「へ、ふえ」
「目開けないで」
ランダルはそんなことを言われても言うことを聞けるわけもなく、ばっと頬を抑えて少女の方を見た。彼女もビックリするくらい顔が赤くて、目を合わせようとしても逸らされるばかりだった。
「……治った?」
「な。治るわけないでしょ……」
むしろ前より、酷くなっちゃったかも。
ランダルは小さく呟いて、自分に恋の魔法をかけた確信犯の魔女を見つめた。
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ななし@eb3bdb
テスト
26:14
ななし@91dfde
聞こえてる〜
26:49
ななし@91dfde
良すぎ文章が錬成されるとこ見ちゃお〜
31:25
ななし@91dfde
爆速で話展開されて心の準備なしにユメショ読んでるみたいになってる
31:49
ななし@91dfde
可愛すぎるかも
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ななし@91dfde
ダルちょろいのかわい〜
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ななし@91dfde
このまま読んでたら可愛さで狂うかも
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ななし@91dfde
46:24
ななし@91dfde
ビーバーテイルズ初見だったけど甘そ〜
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ななし@91dfde
しぬ
48:49
ななし@91dfde
完全に忘れてたな〜
50:30
ななし@91dfde
柔らかくて良い
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ななし@91dfde
生きてー
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ななし@91dfde
可愛い女が目の前にいたら絶対にこれになるよ
62:58
ななし@91dfde
めちゃくちゃでおもろいけどぜんぜんいける
64:05
ななし@91dfde
口の中爆噛みしたら血液摂取判定出るし
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ななし@91dfde
死ぬよ〜
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ななし@91dfde
嫌な怒られだ
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飲んでもいいよ
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エ⁉️
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アツすぎる
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球場のヤジくらいデカい声出る
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ななし@91dfde
タジタジなのやばい
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ななし@91dfde
ダルマジで恋の魔法って言いそう
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ななし@91dfde
訂正してくれるセバ概念嬉しすぎる
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狂う
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夢じゃないダルすぎる
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天才すぎ
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しぬ
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お試しまめもやし
初公開日: 2024年07月23日
最終更新日: 2024年07月24日
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