「――った、た……」
 小さく呻く声。自分を強く抱き締めていた腕が緩み、(仮)は泣きそうな顔でその持ち主――彗吾から離れた。二人で転がり落ちてどれくらいだろうか、獣道すら見当たらないそこは木々が鬱蒼と茂っていて、自分たちが落ちてきた跡さえ見受けられない。そして、そんな山の中で、(仮)と彗吾はボロボロになった状態で、どうしようもなく座り込んでいた。
「ごめんなさい、彗吾さん、僕が調子に乗ったから……」
 そう震える声でこぼす(仮)に、彗吾が「気にしないでください」と眉尻を下げて笑う。
「(仮)さんに少しでも怪我がなかったのなら良かった。貴方になにかあったら、きっと神代君がこれ以上ないほどにへこみますからね」
 ああ、僕に対してはへこむどころかこれでもかと怒るでしょうが。
 冗談めかして言う彗吾の姿は、(仮)に比べて少しばかり傷や土が多くまとわりついている。
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詞雨堂営業中@20240506
初公開日: 2024年05月06日
最終更新日: 2024年05月06日
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