「今日はどの試合観よっか?」
 ぼすんっ、と音を立てながら空気を含んだベッドの上にアオイは腰掛けながらスマホロトムを操作した。
 トランポリンのように小さく数度跳ね、段々と小さくなっていく。スグリは黄色い髪留めを解き髪をガシガシと掻きながら手土産に持ってきたサイコソーダを片手に二本持って彼女の元へ歩み寄る。
「この前のワールドチャンピオンシップス見たい」
「わかった〜」
 飲みやすいようにとアオイに手渡す前にソーダのビー玉を落として開けてからアオイに手渡す。「はい」と声を掛けるとアオイは動画を探している最中だったが顔を画面から離して「ありがと!」とスグリに向かって破顔しながらお礼を口にした。
 WCSは文字通り様々な地方のチャンピオンクラスのトレーナーが集まり世界一を決めるトーナメント制の大会である。毎年開催されているが今年の開催地はカロス地方ということでパルデアから近いがイッシュ地方にいる二人には遠く、直接の観戦は叶わなかった。もちろんリアルタイムので観戦も行ったが、良い試合というのは何度見ても良いものであるし、いずれ本選に参加したいと思っている二人にとって試合を見るということは勉強の一つでもある。
「誰の試合観ようか」
「悩むべ……昨日はダイマックスさ観たし…」
「やっぱり直接見たいよねえ」
 アオイは検索ヒットした動画たちを適当にスワイプしてサムネイルを流して行く。
「ダンデさんの試合もう一回観たい。リザードンのキョダイマックスやっぱりわやかっこいい…!」
「うん! そのあとはカルネさんの試合ね!」
 お互いの自室でスマホを使っての動画鑑賞はもはや日課となっていた。夕飯を終え、各自入浴を済ませてからお菓子などを持参して試合動画を観たり、一緒に課題をする。夕飯以前でもバトルをしたり図書室で一緒に勉強したりするので二人はお互いに被りの授業以外では殆ど一緒にいる。二人にとってはそれが当たり前で今更可笑しいとも思わない。
「スグリくんだったらダイマックスをどうやって耐える?」
「え、……うーん」
 座っているのも疲れてきたのかアオイは早々に飲み干したソーダの瓶をベッド傍のカウンターに置いて寝転がった。それに釣られスグリもアオイの側に横たわる。
 ベッドに並んで仰向けに寝転がる二人に合わせてスマホロトムは自動で浮き上がり動画を映し続けている。
「俺たちはダイマックスしてダイウォールを打てるわけじゃねから、特性で技を無効化したり、テラスタルで相性受けとか…?」
「シングルだと難しそう……決勝戦だったら六匹同士のフルバトルだけど、それ以外だと手持ち見せ合いからの三体選出だから」
「確かになあ…やりたいこととかすぐバレそう」
 ああでもない、こうでもないと一人で考察をするよりも二人でした方が楽しいと、交際を始めてから二人は気がついた。それまでは同じような熱量で四六時中話せる相手はスグリの場合ほぼ居らず、アオイはネモともポケモンバトルの深い話はするが彼女とは考察を深めるというよりかはすぐ行動、すぐ実践というタイプだったので、実践の前にこれでもかと理的に詰めるスグリとは話が弾む。
「あ、今日ヒウンアイスも持ってきたんだけど食べる?」
「やった!食べる!!」
 一戦目を終え、スグリはベッドから起き上がって冷凍庫に入れていたカップ入りのヒウンアイスを持ってきた。
 先日の休日に外出届を出してアオイと一緒にイッシュ地方にデートに向かった際にお土産用に買ってきていたのだ。イッシュ地方に生息しているバニプッチの形を模したヒウン名物のアイス。冬は販売しておらず、普段も行列に並んでやっと買える代物でこれを買うために二人で早起きしてスグリのカイリューに乗ってマッハで購入したのだ。
「シンプルなバニラアイスなのに美味しいよね〜」
「んだな。甘くておいしい…!」
 次の動画を探しながらステンレスのアイススプーンで掬って一口ずつ口にする。
 甘いものが好物なスグリはもちろん、アオイも満面の笑みを浮かべて食べ進めていく。カップに重なったコーン部分も完食する頃には試合観戦は三戦目に突入している。メガ進化を使うトレーナー同士の激闘は二人のボルテージを更にあげていく。
 気がつけば時間は消灯時間である22時をとっくに超えて日付が変わりそうになっていた。ジュース、アイスと飲み食いしてチョコ菓子なども摘んでいたが流石に0時を超えると食指は止まっていたが、観戦意欲だけは収まらない。むしろ観戦と考察に熱中してバトルがしたくなってきているのを観戦で抑えている状態だ。
「アオイ、もう日付変わるけど」
「え〜もうちょっと観ようよ」
 スグリも体裁として口にするが内心としてはアオイに賛成しているので帰ろうとはしない。でもいつ二人で寝落ちしてもいいように動画に目線を向けたまま布団の中に入っていく。アオイが壁側でスグリが外側のいつもの位置に収まる。
 今日はスグリの部屋ではなくアオイの部屋なので彼女の布団や枕についた彼女の匂いにスグリは心臓の鼓動を早くさせた。何度こうして同じ布団に入ってもなかなか慣れないものだ。
「ここさ…何度見てもすごいよな」
「だよね、トレーナーは指示出してないのにちゃんとポケモンが汲み取って動いてる。そのあとはトレーナーがちゃんと指示を出して最適解を出してるし、信頼関係があるよね」
 阿吽の呼吸というものは存在している。基本的にはトレーナーが指示をしてポケモンはそれに従うのがポケモンバトルだが、時にポケモン側がトレーナーの意図を汲み、意思を持って行動することがある。それが試合結果を大きく変化させることだってある。
 …もう何戦観たか分からなくなってきた頃、試合が終わっておすすめが表示されたがアオイの指が画面に向かって伸びることはなかった。
「寝ちゃった…?」
 スグリが横にいるアオイに視線を向ける。スグリも試合に夢中になって気が付かなかったが、彼女は大きな瞳を閉じて小さな寝息を立てていた。スグリが画面に触れ時間を確認すると時刻は2時を裕に超えており、かなり夜更かしをしてしまったと息を吐いた。
「俺も寝ないと」
 アオイに肩までしっかりと掛け布団を掛け、スマホロトムと連動させて操作が出来るようになっている照明を落とす。スマホも枕元に置いてスグリも布団の中に肩まで潜り込む。
 焦っていた頃は毎日のように夜更かしをして、いつも寝不足だったが、アオイとする夜更かしでたまに寝不足になるぐらいだったらいいかもしれないとスグリは思う。
「おやすみアオイ」
 幸せそうに眠っているアオイの顔に掛かる髪を払い、少し開いた愛らしい唇にキスをしたあと、スグリも目を閉じて二人の体温で温まった布団の中で微睡み始めた。
  
カット
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カットモードOFF
39:34
海棠ひより
1時間無理そ…🥺
65:29
なつちよ
がんばってください~!
66:04
海棠ひより
ありがとうございます…え、2600字?💦
69:26
海棠ひより
軽く確認して投稿します! お付き合いありがとうございました!!
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ワンライ書きます
初公開日: 2024年03月23日
最終更新日: 2024年03月23日
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コメント
スグアオのワンライ書きます。同じく作業する方もどうぞ。