──こんな話を知ってるかい?
ここに二つの箱がある。
ひとつは開けた人は願いを叶えて幸せになれる。ただし、周囲の人達は不幸になる。
もうひとつは周囲の人達が願いを叶えて幸せになれる。ただし、開けた人は不幸になる。
さて──君は、どちらの箱を開ける?
そう問いかけられたある者は自らが幸せになる箱を開けた。願いを叶えて順風満帆、何もかもが上手くいった。……だが、不幸になった周りの人間達に妬まれ、利用され、搾取されたまま死んでいった。
それでもそいつは幸せだった。何故なら、そいつは人に頼られるのが何よりも好きだったからだ。傍から見れば搾取された人生でも、当人からは満足した人生だった訳だね。
また別の者は周囲の人間を幸せにする箱を開けた。
そいつは何もやっても上手くいかない失敗ばかりの人生を送った。
しかし、幸せになった周りをみて満足した一生を過ごした。こっちは自分の幸せより周りが幸せに過ごすのを良しとした人間だった。
そう考えると幸せってよく判らないよね。
人によって様々、それこそ考え方でいくらでも幸せになるしいくらでも不幸にもなる。結局は当人のさじ加減。
周りがどう言おうが、どう思おうが、それは当人にしか判らない。
人間ってホント、どこまでも愚かで、愛おしくて、理解の出来ない生き物だよね。
……あぁ、何でもないよ。ひとりごと、こっちの話さ。
そういう昔話があったっていうだけさ。
君と出会った一期一会のこの場所で交わす、単なる雑談だよ。気にしないで。
おっと、カップが空になっているね。おかわりの酒をプレゼントするよ。
遠慮は要らない。今の僕はとても良い気分なんだ。いくらでも、欲しいだけ酒をあげよう。
……おや、こんなところに箱がある。しかも二つ。
さっきの昔話じゃあないが……この箱を開けると周りは不幸になるが君は願いを叶え幸せに過ごせる。こっちを開けると君は不幸になるが周りは幸せになる。
さて──君はどちらの箱を開ける?